何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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閑話 しつこい!

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結婚したのは学園を卒業した頃から3年後の21歳だった。

学園へ入学するまでに殿下の側に仕えるための勉強や訓練をして、入学時には近衛騎士団に所属していたが、いかんせん私は無骨な人間だ。
国中の貴族や他国の人間の名前をはじめとしたプロフィール、そして他国の言語は既に覚えていたが、『妃』としての駆け引きや『令嬢扱い』されること、その世界に身を投じる上で必要なマナーを習得するのにだいぶ時間がかかってしまった。

…………私はそれはもう、不器用で細かいことが苦手だったのだ。



結婚する頃には、カリブが宰相家の令息を落として、ほぼ同時期の結婚となったくらいだ。
宰相家の令息は、親から次代の宰相になることを強いられていたが、残念ながら凡庸な人間だった。
だが、穏やかで心根の良い爽やかな若者で、でもそれは貴族当主としての弱点でもある。
女ながらに宰相を目指すカリブと、宰相を目指すことを義務付けられた若者は、ライバルであり、初めはさほど仲もよくなかったと記憶しているが、何がどう転んだのか、彼の代わりに宰相になるというところに落ち着いたらしい。
苦手なことは得意な方がやればよい。適材適所助け合う素晴らしい夫婦となった。
実は、画家の才能があった彼は、今ではグリーンフィールド侯爵家の領地経営をしながら、宮廷画家として活躍し、芸術の天才と言われるクランベル=アイズ侯爵夫人の師でもある。


ああ、話がそれてしまった。



陛下にお預けをさせて3年。

いよいよ結婚式を挙げ、初夜を迎えた私は、陛下の意外な一面を思い知ることになる。

ちょっと気弱な弟分のような彼は、ものすごく………性豪だった。


『あ、ああ、あっ、もう無理!しつこい!離して!!』

『ああ、愛してる、愛してるオリーブ!!ずっと前からオリーブが好きだった!結婚できてうれしい!!!』

容赦なくがつんがつんと打ち付けられるし、何回中で果てられたかもう数えられない。

体力ある方なのに、辛い。

いや、体力があるからこそ耐えられるからこそこうなっている。

気が付けば、朝ちゅん……。



あれから年月が過ぎ、私たちには18歳の長男と12歳の長女と6歳の次男がいる。
私たちは、40歳になった。

なった、のに。



「あああ、もう、いい加減に、して……っ。」

「私は君だけだ、浮気はしない。愛してる。」

うう、確かに浮気は許さない。

頭の先からつま先まで、中を侵されている気がする。


……いつまで産めるんだっけ…。




先祖にどうやら淫魔がいたらしい、と知ったのはお妃教育の中でのことである。

淫魔といっても、無害な可愛らしいサキュバスだったようだ。
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