暗殺者は王子に溺愛される

子どもたち

魔物の森

「今日は西の森か………。」

「人食い花が湧いてるらしいわね。蔦にきをつけましょう。」


「りょーかい！」


鬱蒼とした森の中で、三人は進む。


ニースが剣で切り裂き、その後ろでシャルが、最後方からホーリーが銃で支援した。

「ギシャアアアァ!!」


断末魔が響き、ズシィンと、地鳴りとともに、巨大な人食い花が倒れる。

「やったあ！」


ニースが花弁を切り取り、鞄にしまう。

その瞬間。


ニースはいやな気配を感じた。

それは、辺境伯になる男としての経験からくる勘。


「シャル、ホーリー！撤収するぞ！急げ!!」

「え、何でっ！まだ奥にいるはず………」

「シャル！」


シュルリと伸びた蔦が、シャルを拐う。

「うあああ!!」


辺りが、植物系モンスターで囲まれていた。

上空には、鳥のモンスター。


「スタンピード！」


「ニース！聖女の力を使え！」
ホーリーの声が男になり、彼の周りに兵士が囲む。


「聖なる力よ、モンスターを浄化！」

ニースの祈りで弱体化したモンスターをホーリーが兵士たちと捌く。

シャルは奥の方へ連れ込まれていて、ゾーン王国の鎧を着た兵士とともに現れたホーリーに目を見開いた。

「シャル！俺たちのシャルを離せえ！」


ああ。ホーリーはホーリーだったんだ。



ホーリーが追撃し、兵士たちが斬り裂き、シャルは無事、開放された。

しかし。


「シャル！ホーリー!!」


浄化をしながら遅れてきたニースが叫ぶ。

上空から来たワイバーンが、シャルを足でつかんだ。

「ああ！」

「シャル！」

思わずホーリーも、もう片方の足にしがみついた。

「殿下!!」

「狙い撃て！俺はシャルを抱いて下へ落ちる！お前たちの救出を待つ!!」


ホーリーの指示で一斉に翼を狙い撃ちし、シャルとホーリーは、即座に森の中へ飛び降りていった。


「シャル、ホーリー……。」

「ニース様、殿下がご一緒であれば大丈夫です。殿下には発信機がついております。すぐに探せますから。まずはここを一掃しましょう！」


「ああ！いくぞ！」


これを片付ければ、あの二人も安全なはずだ。

ニースは祈りをこめながら、剣を握った。