52 / 202
ゾーン王国へ
しおりを挟む
「陛下、妃殿下。ただいま戻りました。」
ゾーン王国へ戻り、両親の前へ来た。
出立するときは一人で出たが、バッキンガム王国からトロワと騎士を連れて。
「おかえりなさい、クリム。まさか貴方が婚約者を連れて帰るなんて。」
「その子がトロワ君かい。可愛い子じゃないか。」
おいおい、父子揃って目が腐ってるのかな。
そう思いつつも、トロワは紳士の礼で応えた。
「初めまして、バッキンガム王国宰相が三男、トロワ=サンダルフォンと申します。お目にかかれて光栄です。」
「おお!素直でいい子!年相応な明るさがいい!」
「ダメですよ、陛下!トロワは俺の婚約者です!」
見て!トロワが、思いっきり引いているから!
「そういえば、クロス宰相は?」
「それが、娘のことがあって私に愛層をつかしたのか、ショックが大きかったのか、あれからまだ出仕しないのだ。」
「……そうですか。」
おかしい。
そう思っていると、トロワが頷いた。
この子のことだから、一人で探りに行きそうだ。
それとなく止めないと。
つかつかつか。
宮殿の中で靴の音が遠くから寄ってくる。
「クリム様ぁ~~~~!」
鼻につくような声。
けばけばしい赤と黒のドレスを着たピンク頭の女が、胸をゆっさゆっさ揺らしながらやってきて、クリムの腕にしがみついた。
豊満な胸をぎゅっとあてている。
(うわぁ~~~~。わかりやすっ。)
「婚約の話がなくなって、わたくし、ショックですわ!ずっとずっと、クリム様だけをお慕い申し上げておりましたのに~~!」
(うわぁ~~~。なにこのおばさん。香水くさいし。クリムが嫌がってるの分からないのかな。)
「どちら様か存じ上げませんが、あなたは婚約者にはならなかったのですから、そのようなはしたないまねはなさらないほうがいいのではないですか?婚約者だとしても、陛下の前でそのようにくねくね胸を押し付けてくるような方、品位を疑いますけど!くねくねしていないと死んでしまう呪いにでもかかってるんですか?」
ぷんすか。
「なあに、こちらの坊やは。私はケリー=バスティン公爵令嬢!この国で王族の次に爵位が高い家の令嬢なのよ!」
「これは失礼いたしました。あまりにも作法がなっていないので、まさかそのような高位貴族のご令嬢とは思っていませんでした。俺はトロワ=サンダルフォン。この度、両国の王家の取り決めでクリム様へ嫁ぐことになりました。バッキンガム王国の宰相を務めているサンダルフォン公爵家の三男です。姉は、王太子のデューク様の妃になります。第二王子のケヴィン殿下とも懇意にさせていただいております。このような未熟な俺ですが、多少なりとも両国の懸け橋になればと考えております。」
にっこり微笑む。
ドヤア!!言ってやったぞ!
「……ぷっ。くっ。」
後で笑うのを我慢しているクリム。耐えろ。
「………なによ!この泥棒猫!」
「国と、国で決めたんです。それに泥棒も何も、まだあなたとの婚約は確定ではなかったのでしょう?あなたのものではないのに泥棒なんて、ああ怖い。この国のクロス公爵家の方は立派な方々なのに、バスティン公爵は娘をこのようにお育てに。勝手に人に言いがかりをつけるなんて。」
「きぃぃい!くやしいいいい!!! 見てらっしゃい!あんたなんて、さっさとごろつきにボロボロにされればいいのよ!」
すたこらさっさと逃げ出すケリーを笑顔で見送るトロワ。
「ははは。強いなあ、君は。やっぱりサンダルフォン公爵家の子だね。アンかと思ったよ。」
ぐっと親指を立てて見せた。
「陛下、お聞きになりましたか?もし俺がごろつきに襲われたら、あの家の仕業だと思ってくださいね。」
「……あれは綺麗な自白だったな。助かるよ。」
クリムの父親は苦笑していた。
「あと、それから、今日からこれをこっそり飲んでくださいね。水もいらないので。寝る前に。」
デューク兄さまが調達した解毒剤。
それをこっそり二人に手渡しする。
俺がご飯を作ってもいいんだけど、どうやっても何か紛れ込まされそうだし、水に入ってるかもしれないし。
こういう解毒剤で中和するのが一番いいはず。
「………ねえ、トロワ。あなたならたとえ……。いえ、クリムをよろしくお願いしますね。」
くやしい!くやしい!くやしい!!
本当にリリーナにそっくり!!
何なの、サンダルフォン!みんなして弁が立つ!
そのうえ、リリーナを可憐にしたようなあの容姿。
剣を持って鍛えているのが分かる、しなやかな立ち姿。
一見普通の男の子だけど、双子の兄弟よりは小柄だ。
確かに、あの子はノース侯爵家の血が強いのかもしれない。
少年から青年に向かう頃なのに、まだ少年のような顔をしている。
丸みがあって、あどけない。
自分にはない、可愛さ。
「見てらっしゃい……。」
ミリアにも以前けしかけたけど、女と思って一人しか見繕わなかったから、返り討ちにされた。
ミリアがどのくらいの腕だったのかは分からないけど、あいつは男なんだから、集団でないとだめね。
謁見が終わり、俺たちは部屋へ案内された。
「えっ……。同じ部屋、なの……。」
「ごめんね。この部屋なら護衛の騎士の方が寝泊まりする場所もあるし、安全だから。」
この国にいる間中、クリムと同じ部屋で同じベッドで寝泊まりするなんて、どきどきする!!
顔が真っ赤になる。
どうしよう、トロワとこんなにずっと一緒にいられるなんて、幸せだけど、我慢できるだろうか!
ポーカーフェイスの裏でクリムも内心パニックだった。
ゾーン王国へ戻り、両親の前へ来た。
出立するときは一人で出たが、バッキンガム王国からトロワと騎士を連れて。
「おかえりなさい、クリム。まさか貴方が婚約者を連れて帰るなんて。」
「その子がトロワ君かい。可愛い子じゃないか。」
おいおい、父子揃って目が腐ってるのかな。
そう思いつつも、トロワは紳士の礼で応えた。
「初めまして、バッキンガム王国宰相が三男、トロワ=サンダルフォンと申します。お目にかかれて光栄です。」
「おお!素直でいい子!年相応な明るさがいい!」
「ダメですよ、陛下!トロワは俺の婚約者です!」
見て!トロワが、思いっきり引いているから!
「そういえば、クロス宰相は?」
「それが、娘のことがあって私に愛層をつかしたのか、ショックが大きかったのか、あれからまだ出仕しないのだ。」
「……そうですか。」
おかしい。
そう思っていると、トロワが頷いた。
この子のことだから、一人で探りに行きそうだ。
それとなく止めないと。
つかつかつか。
宮殿の中で靴の音が遠くから寄ってくる。
「クリム様ぁ~~~~!」
鼻につくような声。
けばけばしい赤と黒のドレスを着たピンク頭の女が、胸をゆっさゆっさ揺らしながらやってきて、クリムの腕にしがみついた。
豊満な胸をぎゅっとあてている。
(うわぁ~~~~。わかりやすっ。)
「婚約の話がなくなって、わたくし、ショックですわ!ずっとずっと、クリム様だけをお慕い申し上げておりましたのに~~!」
(うわぁ~~~。なにこのおばさん。香水くさいし。クリムが嫌がってるの分からないのかな。)
「どちら様か存じ上げませんが、あなたは婚約者にはならなかったのですから、そのようなはしたないまねはなさらないほうがいいのではないですか?婚約者だとしても、陛下の前でそのようにくねくね胸を押し付けてくるような方、品位を疑いますけど!くねくねしていないと死んでしまう呪いにでもかかってるんですか?」
ぷんすか。
「なあに、こちらの坊やは。私はケリー=バスティン公爵令嬢!この国で王族の次に爵位が高い家の令嬢なのよ!」
「これは失礼いたしました。あまりにも作法がなっていないので、まさかそのような高位貴族のご令嬢とは思っていませんでした。俺はトロワ=サンダルフォン。この度、両国の王家の取り決めでクリム様へ嫁ぐことになりました。バッキンガム王国の宰相を務めているサンダルフォン公爵家の三男です。姉は、王太子のデューク様の妃になります。第二王子のケヴィン殿下とも懇意にさせていただいております。このような未熟な俺ですが、多少なりとも両国の懸け橋になればと考えております。」
にっこり微笑む。
ドヤア!!言ってやったぞ!
「……ぷっ。くっ。」
後で笑うのを我慢しているクリム。耐えろ。
「………なによ!この泥棒猫!」
「国と、国で決めたんです。それに泥棒も何も、まだあなたとの婚約は確定ではなかったのでしょう?あなたのものではないのに泥棒なんて、ああ怖い。この国のクロス公爵家の方は立派な方々なのに、バスティン公爵は娘をこのようにお育てに。勝手に人に言いがかりをつけるなんて。」
「きぃぃい!くやしいいいい!!! 見てらっしゃい!あんたなんて、さっさとごろつきにボロボロにされればいいのよ!」
すたこらさっさと逃げ出すケリーを笑顔で見送るトロワ。
「ははは。強いなあ、君は。やっぱりサンダルフォン公爵家の子だね。アンかと思ったよ。」
ぐっと親指を立てて見せた。
「陛下、お聞きになりましたか?もし俺がごろつきに襲われたら、あの家の仕業だと思ってくださいね。」
「……あれは綺麗な自白だったな。助かるよ。」
クリムの父親は苦笑していた。
「あと、それから、今日からこれをこっそり飲んでくださいね。水もいらないので。寝る前に。」
デューク兄さまが調達した解毒剤。
それをこっそり二人に手渡しする。
俺がご飯を作ってもいいんだけど、どうやっても何か紛れ込まされそうだし、水に入ってるかもしれないし。
こういう解毒剤で中和するのが一番いいはず。
「………ねえ、トロワ。あなたならたとえ……。いえ、クリムをよろしくお願いしますね。」
くやしい!くやしい!くやしい!!
本当にリリーナにそっくり!!
何なの、サンダルフォン!みんなして弁が立つ!
そのうえ、リリーナを可憐にしたようなあの容姿。
剣を持って鍛えているのが分かる、しなやかな立ち姿。
一見普通の男の子だけど、双子の兄弟よりは小柄だ。
確かに、あの子はノース侯爵家の血が強いのかもしれない。
少年から青年に向かう頃なのに、まだ少年のような顔をしている。
丸みがあって、あどけない。
自分にはない、可愛さ。
「見てらっしゃい……。」
ミリアにも以前けしかけたけど、女と思って一人しか見繕わなかったから、返り討ちにされた。
ミリアがどのくらいの腕だったのかは分からないけど、あいつは男なんだから、集団でないとだめね。
謁見が終わり、俺たちは部屋へ案内された。
「えっ……。同じ部屋、なの……。」
「ごめんね。この部屋なら護衛の騎士の方が寝泊まりする場所もあるし、安全だから。」
この国にいる間中、クリムと同じ部屋で同じベッドで寝泊まりするなんて、どきどきする!!
顔が真っ赤になる。
どうしよう、トロワとこんなにずっと一緒にいられるなんて、幸せだけど、我慢できるだろうか!
ポーカーフェイスの裏でクリムも内心パニックだった。
16
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞奨励賞、読んでくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる