上 下
57 / 77

廃太子と王太子

しおりを挟む
「カナリア殿下、ミリオン妃殿下。アンドレ王子とその婚約者が非礼を働き、申し訳ございません。」

陛下と王妃、側妃がフロアに降りてくる。
貴族たちはさっと分かれて僕たちに向かう道を作り、彼らは僕たちの前で止まって頭を下げた。

「アンドレ。全く愚かなこと。王族こそ慎み深く、皆の手本でなければならないとこの母は言い続けてきましたが…………残念です。」

王妃様はまともらしいな。

「お母様!」

「帝国に配慮し、王族としては残すが、お前は廃太子とする。。」

「お父様!…………では、ではっ。あいつを王太子とするのですか!?」


「もちろんだ。」

陛下はスカイ王子を見る。

スカイ王子は陛下に礼をとった。

「あいつは腕が一本ないんですよ!あいつの母親だって、女官あがりの伯爵令嬢じゃないですか!」

「私の妃を侮辱するな。アリア妃の実家のオーケストラ伯爵家は、代々この国の裁判官を務め、王家を支える中立で清廉な古くからの由緒正しい貴族家だ!法を扱うことから、目立つような功績や富はないかもしれない。だが、この国の国民が幸せに暮らし、王家が続いた、それこそがオーケストラ伯爵家の功績である!」

「腕の一本くらいなんでしょう。だいたい、あの視察は本来お前の仕事だったではないですか。お前は自分の執務もスカイ王子に押しつけて。以前はオリーブ嬢にも押しつけていたでしょう!何も出来ない上に外交では問題行動を起こすような者より、スカイ王子を王太子にと考えるのは当然です!」

「そんな!お母様!側妃の子が王太子になってもいいのですか!」

「あなた方は私の実家である帝国に忖度しているけれど、私個人はアリア妃とも仲が良いし、スカイ王子も自分の子のようにかわいいわ。あなたがまともになるように苦言を言い続けて20年。貴方の最近ではお飾りの陛下になれば良いかと思っていましたが、限界よ。最初からスカイ王子がふさわしい。世界の最高戦力である勇者夫婦を怒らせたとあれば、帝国だって納得します。」


「そんな!」

アンドレは力なく、へたっと座り込む。



「アンドレ王子!嫌よ。陛下になれないの?!なら、スカイ王子!私と結婚しましょう!腕が片方しかなくても、ダンスでは私がフォローできますわ!そんな『出来損ない』は王妃には向きません!」

ネイルはあっさりアンドレ王子を捨て、スカイ王子にねっとりした笑顔を向けた。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました

水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。 そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。 最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。 そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。 上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。 貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。 実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、 上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。 そこで知ったルーカスの秘密。 彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。 元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。 戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。 シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。 所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。 そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。 心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。 けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。 シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか―― ※他サイトでも公開しています ※10万字程度で完結保証 ※1/30〜7:10,12:10,17:10の3回更新予定

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

ひとりのはつじょうき

綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。 学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。 2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

つまりそれは運命

える
BL
別サイトで公開した作品です。 以下登場人物 レオル 狼獣人 α 体長(獣型) 210cm 〃 (人型) 197cm 鼻の効く警察官。番は匿ってドロドロに溺愛するタイプ。めっちゃ酒豪 セラ 人間 Ω 身長176cm カフェ店員。気が強く喧嘩っ早い。番限定で鼻が良くなり、番の匂いが着いているものを身につけるのが趣味。(帽子やシャツ等)

世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

甘田
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。 ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。

処理中です...