最強で美人なお飾り嫁（♂）は無自覚に無双する

暗躍

この世界の植物は、解明されていない植物がたくさんある。

生態系は前世の世界に似ていて、前世では植物学を専攻し化粧品メーカーに勤めた僕にとっては、誰も知らない植物のどれが毒性があるかなんて、判別は簡単だった。


僕には、鑑定スキルもある。

前世の知識をもとに鑑定すれば、分析機を使ったように知ることが出来る。




前世では、僕は引きこもりで。

誰にも相手にされなくて。


………いや、一人だけいたな。

営業の陽キャのイケメン。

皆の人気者だった。

イケメンのくせにオタクで、僕たちは次に覇権をとるだろうアニメの話で盛り上がり、ともにオンラインゲームで楽しんだっけ。



大好きだったのに………。

ストーカー女に駅のホームから突き落とされて、千歳は死んでしまった。



千歳が死んで、僕は自暴自棄になったのかな？

寝食を忘れた結果、過労で死んだらしい。



気が付いたら、僕は生まれ変わっていたのだ。





「ルイーダ。おはよう。」


「グロス様。おはようございます。」

領地の教会の司教と僕は仲がいい。

僕たちは、ここにはないアニメやゲームの話で盛り上がる。

彼は千歳だ。


彼に会えて、本当にうれしかった。

グロス様は神職らしい銀色の髪に薄い青い眼をしている。
前世と同じように、彼は美しい。


ミリオンがあのストーカー女だと教えてくれたのも、僕の前世の記憶を解放してくれたのも、グロス様だ。

あの女が幸せになるなんて許さない。

それなのに……。王子の妃になるなんて、ありえない。

あの女は危険だ。

何が勇者だ。

みんな騙されているんだ！



僕は、ミリオンの破滅を狙った。









ふふふ。

馬鹿ね。馬鹿なところが可愛いけど。

あなたたちをずっと見ていたのだから、成り代わるなんて簡単だったわ。

あなたは勘違いしているようだけど、ミリオンが千歳くんなの。

私はユリ。

受付嬢のユリ。

私は千歳君が好きすぎて突き飛ばしたんじゃない。

あなたを独占する千歳君が許せなかったのよ？


だ～い好きな千歳君を自分の手で苛めたって知ったら。
あなたはどんな素敵な表情をするかしら！


薄い青い眼は、今日もルイーダを見つめる。