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こんなはずじゃなかった
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「うぅ?どうして誰もいないんだ!朝食の用意をしろ!」
フィッシュ伯爵はボサボサ頭によれたシャツを着て、屋敷の中をさまよう。
「あ、おはようございます。フィッシュ伯爵。」
「セバスチャン!!貴様どこへ行っていた!早く飯の用意をさせろ!使用人はどこだ!」
「その前にこちらを。ミリオン様からの預かりものでございます。」
結婚指輪と―――――――――婚姻無効、の証明書の写し、だとぉ!?
「おめでとうございます。本日をもって白い結婚を理由とした婚姻無効が成立しました。既に陛下へ提出されておりますので、覆ることはございません。それからこれは、私からの退職届です。これまでお世話になりました。なお、私以外の者も全員退職希望で、既に屋敷を出ております。こちらにまとめてお渡しします。」
「何をばかな!紹介状も退職金も出さんぞ!連れ戻してこい!」
「退職金はミリオン様からいただきました。紹介状もです。」
「主に断りもなく出された金だと?泥棒だ!」
「お金の出処はミリオン様の個人資産ですので、伯爵の許可は不要です。」
「はぁあああああああああ!!?」
「ミリオン様は婚姻前から陛下の命を受け魔物を討伐するお役目を持っておりました。討伐報酬を得ておりましたので、その中から領地の初期投資費用や日々の生活費を出してくださっておりました。また、領民へ教育を施したり土壌改革をしたり土地改良をしたり……。おかげで安定して農作物を収穫できるようになりました。道を整備したことにより、行商が通りやすくなり、交易の拠点として我が領は――――――
「まて!!!!」
なんだ、それは。
とんでもなく優秀じゃないか!
「もしかしてこの数年……。伯爵家が上向いたのは………。」
「はい。全てミリオン様です。ミリオン様が領地経営も屋敷の管理も完璧にこなしてくださいました。貴方が阿婆擦れとちちくりあっている間に。」
「なんだよ……。討伐って……。」
「聞いたことはございませんか?『勇者ミリオン』を。同一人物ですよ?」
「……いや、でも、だって。勇者ミリオンといえばとんでもなく美人―――――――――
そこまで言って、伯爵は顔を青くした。
「まさ、まさか……っ。」
「だから顔を見に行くようにいいましたよね?………もう遅いです。私も屋敷を出ます。あの方がいなくなったこの家は、すぐにダメになるでしょうから。それに、伯爵には愛想がつきました。いくらお飾りでも、貴方からミリオン様へ贈ったものは、結婚指輪しかありませんでした。引っ越しも簡単だったようですよ。」
ギィイと扉が閉まる。
広い邸の中でたった一人、取り残された伯爵はその場で座り込むしかなかった。
「ドライドさまぁ~~~~~~!あら?どうしてお屋敷が暗いのかしら?」
次に扉が開いたとき、そこに現れたのはとんちんかんな礼儀も知らないピンク頭。
だが、使用人が全員退職したことを知ると、マチルダはぽいっとドライドを捨てた。
フィッシュ伯爵はボサボサ頭によれたシャツを着て、屋敷の中をさまよう。
「あ、おはようございます。フィッシュ伯爵。」
「セバスチャン!!貴様どこへ行っていた!早く飯の用意をさせろ!使用人はどこだ!」
「その前にこちらを。ミリオン様からの預かりものでございます。」
結婚指輪と―――――――――婚姻無効、の証明書の写し、だとぉ!?
「おめでとうございます。本日をもって白い結婚を理由とした婚姻無効が成立しました。既に陛下へ提出されておりますので、覆ることはございません。それからこれは、私からの退職届です。これまでお世話になりました。なお、私以外の者も全員退職希望で、既に屋敷を出ております。こちらにまとめてお渡しします。」
「何をばかな!紹介状も退職金も出さんぞ!連れ戻してこい!」
「退職金はミリオン様からいただきました。紹介状もです。」
「主に断りもなく出された金だと?泥棒だ!」
「お金の出処はミリオン様の個人資産ですので、伯爵の許可は不要です。」
「はぁあああああああああ!!?」
「ミリオン様は婚姻前から陛下の命を受け魔物を討伐するお役目を持っておりました。討伐報酬を得ておりましたので、その中から領地の初期投資費用や日々の生活費を出してくださっておりました。また、領民へ教育を施したり土壌改革をしたり土地改良をしたり……。おかげで安定して農作物を収穫できるようになりました。道を整備したことにより、行商が通りやすくなり、交易の拠点として我が領は――――――
「まて!!!!」
なんだ、それは。
とんでもなく優秀じゃないか!
「もしかしてこの数年……。伯爵家が上向いたのは………。」
「はい。全てミリオン様です。ミリオン様が領地経営も屋敷の管理も完璧にこなしてくださいました。貴方が阿婆擦れとちちくりあっている間に。」
「なんだよ……。討伐って……。」
「聞いたことはございませんか?『勇者ミリオン』を。同一人物ですよ?」
「……いや、でも、だって。勇者ミリオンといえばとんでもなく美人―――――――――
そこまで言って、伯爵は顔を青くした。
「まさ、まさか……っ。」
「だから顔を見に行くようにいいましたよね?………もう遅いです。私も屋敷を出ます。あの方がいなくなったこの家は、すぐにダメになるでしょうから。それに、伯爵には愛想がつきました。いくらお飾りでも、貴方からミリオン様へ贈ったものは、結婚指輪しかありませんでした。引っ越しも簡単だったようですよ。」
ギィイと扉が閉まる。
広い邸の中でたった一人、取り残された伯爵はその場で座り込むしかなかった。
「ドライドさまぁ~~~~~~!あら?どうしてお屋敷が暗いのかしら?」
次に扉が開いたとき、そこに現れたのはとんちんかんな礼儀も知らないピンク頭。
だが、使用人が全員退職したことを知ると、マチルダはぽいっとドライドを捨てた。
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