わんこな庶務は魔王な生徒会長に憧れる

竜鳴躍

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熟年編

ヒューズに友達を

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ヒューズ殿下の勉強はそれなりに進んでいるようだ。

精神的に幼く見えても、王子様育ちであることは間違いなく、前陛下から一通りのマナーは教えてもらってはいたらしい。

頭も悪いわけではない。



オリエは人々の好奇な視線にヒューズが晒されるのを危惧してはいたが、自分が心配性だっただけで、もしかしたら普通に暮らせるのかもしれない。

そう思うようになっていた。


「ヒューズ。学園に行ってみないか?少しだけでもいい。同じくらいの友人が出来る。」

「お友達いらない。オリエがいればいい。」


屈託のない笑顔で見つめられるけれど、どう考えてもそれはいいことではない。


「ヒューズ。オリエとの約束だよ。いろんな人と知り合って、関わって、それでも俺のことが好きなら考えるって。ヒューズが初めから他の人とかかわるのをやめるなら、俺はヒューズと結婚しないよ?」


「えぇ……。じゃ、学園、ちょっとだけいってみる…。」


「ありがとう。でもね、俺だってすぐにいきなり行けとは言わないから。」


オリエはサンダルフォン公爵家の離れの番号に電話をかけた。


ゼロのところの子はみな卒業して大人になったが、シュヴァリエの三男はまだ学園に通っているはずだ。

まずは、その子に会ってもらおう。


物静かで穏やかで、優しい性格と聞いている。







トゥルルルル。

「あっ。」

「シュヴァリエ、針を置け。」


ゼロとおそろいのシャツを仕立てようと、国の花の大柄プリントの生地で仮縫いをしていたときに、電話がかかって来た。

今度、南の方に二人っきりでしっぽりと旅行に行く予定なのだ。


「はい。どちらさま……ってオリエじゃない。うん、うん…。ああ、多分大丈夫だと思う。聞いてみるね。」


針が刺されてちょっと肩に血が出ているのをさり気なくふいて、ゼロはシュヴァリエに近づいた。


「なんだって?」

「ヒューズくんに、うちのケイを会わせたいんだって。ご学友にしたいみたい。将来的には、1年とか半年でもいいから、普通に学園生活を送らせるつもりらしい。」


「……まあ、ケイくんなら大丈夫だとは思うが。話が持つか?ケイくんは自分からおもんばかって話しかけるタイプじゃないだろう。グレイ君も呼んだらどうだ。」


シュヴァリエの三男は、シュヴァリエの嫁入りにあわせてサンダルフォン公爵家に来た。
絵をかくことが大好きで大人しい彼は、下手したらずっと絵を描いているばかりで、大人しいにもほどがある。

グレイ=アーティスはこの国の芸術産業を一手に担う伯爵家の次男で、ケイの婚約者だ。


確かに、この二人なら大丈夫。

でもまずは、アーティス家にも了解を得ていないと。



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