30 / 40
熟年編
隠された王弟
しおりを挟む
「オリエ、オリエぇ…。」
ヒューズは幼子のようにオリエに抱き着くと、オリエもぎゅっと抱きしめた。
「そなたは…?」
王妃が声をかけたとき、なかなか戻らないのを心配したシュヴァリエたちもやってきた。
「え?オリエ!?」
「シュヴァリエ様、お知合いですか?」
「ええ、幼馴染……なんですけれど。」
「……ここで話は少し。別室でお願いしたいのですが。」
オリエの提案で、一同はこっそりと別室へ移動した。
「彼は、ヒューズ。前陛下が退位したのち、お妃さまを失った後にもうけた御子です。」
「……なんと!父上め…。ケヴィンよりも年下ではないか…。」
別室へは陛下もいらしている。
「…とすると、彼は私たちにとっては年下の叔父にあたるわけですね。お父様の弟君なのですから。」
「でもなんで離宮で隠していたんだ?」
「……彼、幼すぎると思いませんか?年齢的には18歳なのに。まるで子ども…。」
なくなった前陛下は、妻を失った悲しみで侍女に手を出し、子を産ませた。
侍女がのち添えになることを望んでいたのだろうし、侍女が生きていれば、家族幸せだったかもしれない。
実際に、侍女を自分の妻のように着飾らせて、扱っていたようだ。
しかし、下級貴族の娘だった彼女は、前陛下を誘惑した女として後ろ指を刺され、重圧に耐えかねて、やがて気を病み、まだ1歳にも満たない我が子を残して彼女は死んだ。
前陛下は寂しさのあまり、狂った愛情を生まれた子に向けた。
表に出さず、人目に触れさせず、学校にも行かさず、社会から隔絶させて、いつまでも子どものように扱って溺愛した。
そうして、昨年、息を引き取った。
残されたのは、何もできない、子どものような、無垢なヒューズ。
「俺は、前陛下の専属の諜報兼護衛役でした。彼の存在は、王家にとって混乱の素になります。こんな状態では、もはや普通の生活もできません。なので、俺は、彼の保護者になったのです。」
みると、王妃様とリリーナ様は、だばぁあと涙を零していた。
「子どもに罪はないわ!知ったからには、離宮でふたりぼっちなんてよくないわよ!離宮で暮らしたいならそれで構わないけれど、このひげのおじさんは貴方のお兄様になの。だから、いつでも遊びに着て頂戴。」
「え!いいの~!うれしい!」
本当は引き取りたいけれど。今さらどうやって紹介すればいいのか…。
王妃は悩んでいた。
ヒューズは幼子のようにオリエに抱き着くと、オリエもぎゅっと抱きしめた。
「そなたは…?」
王妃が声をかけたとき、なかなか戻らないのを心配したシュヴァリエたちもやってきた。
「え?オリエ!?」
「シュヴァリエ様、お知合いですか?」
「ええ、幼馴染……なんですけれど。」
「……ここで話は少し。別室でお願いしたいのですが。」
オリエの提案で、一同はこっそりと別室へ移動した。
「彼は、ヒューズ。前陛下が退位したのち、お妃さまを失った後にもうけた御子です。」
「……なんと!父上め…。ケヴィンよりも年下ではないか…。」
別室へは陛下もいらしている。
「…とすると、彼は私たちにとっては年下の叔父にあたるわけですね。お父様の弟君なのですから。」
「でもなんで離宮で隠していたんだ?」
「……彼、幼すぎると思いませんか?年齢的には18歳なのに。まるで子ども…。」
なくなった前陛下は、妻を失った悲しみで侍女に手を出し、子を産ませた。
侍女がのち添えになることを望んでいたのだろうし、侍女が生きていれば、家族幸せだったかもしれない。
実際に、侍女を自分の妻のように着飾らせて、扱っていたようだ。
しかし、下級貴族の娘だった彼女は、前陛下を誘惑した女として後ろ指を刺され、重圧に耐えかねて、やがて気を病み、まだ1歳にも満たない我が子を残して彼女は死んだ。
前陛下は寂しさのあまり、狂った愛情を生まれた子に向けた。
表に出さず、人目に触れさせず、学校にも行かさず、社会から隔絶させて、いつまでも子どものように扱って溺愛した。
そうして、昨年、息を引き取った。
残されたのは、何もできない、子どものような、無垢なヒューズ。
「俺は、前陛下の専属の諜報兼護衛役でした。彼の存在は、王家にとって混乱の素になります。こんな状態では、もはや普通の生活もできません。なので、俺は、彼の保護者になったのです。」
みると、王妃様とリリーナ様は、だばぁあと涙を零していた。
「子どもに罪はないわ!知ったからには、離宮でふたりぼっちなんてよくないわよ!離宮で暮らしたいならそれで構わないけれど、このひげのおじさんは貴方のお兄様になの。だから、いつでも遊びに着て頂戴。」
「え!いいの~!うれしい!」
本当は引き取りたいけれど。今さらどうやって紹介すればいいのか…。
王妃は悩んでいた。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
珈琲のお代わりはいかがですか?
古紫汐桜
BL
身長183cm 体重73kg
マッチョで顔立ちが野性的だと、女子からもてはやされる熊谷一(はじめ)。
実は男性しか興味が無く、しかも抱かれたい側。そんな一には、密かに思う相手が居る。
毎週土曜日の15時~16時。
窓際の1番奥の席に座る高杉に、1年越しの片想いをしている。
自分より細身で華奢な高杉が、振り向いてくれる筈も無く……。
ただ、拗れた感情を募らせるだけだった。
そんなある日、高杉に近付けるチャンスがあり……。

笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる