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熟年編
王太子の誕生パーティ
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その日、王太子の誕生パーティが華やかに行われていた。
「王太子殿下、おめでとうございます。」
「ありがとう。」
招待客に礼をするデュランの隣でほほ笑み、ともに礼をするのは、妃のリリーナ。
その様子を遠巻きに見ながら、デュランの弟であるケヴィン=ノースとその妻のサン=ノース公爵夫人は、友人であるボヌールとトロワの父親であるゼロ=サンダルフォン様とシュヴァリエ様とともにワインを嗜んでいた。
友人の父親同士だが、二人は夫夫である。
ゼロに嫁ぐまでは、男側で出席していたシュヴァリエは、いつもピシッとしたスーツを着ていたが、今回は、ゼロの妻として、スーツの下はドレスシャツを着ていた。
「シュヴァリエ様、今日の装い素敵ですね。いつもの服も騎士様と言った感じでとてもカッコいいですけど、今日は麗しいです。」
黒髪黒目で、黒猫のような美しい青年が、目をキラキラ輝かせる。
「サン様、ありがとうございます。今日は私の『妻』としての社交界デビューのようなものですからね。ゼロ様におねだりしていいものを買っていただきました。」
「隠居の身とはいえ、そのぐらいの余裕はある。たとえ妻に資産があったとしても、社交界で身に着けるものを贈るのは、夫の義務であり、楽しみというものだよ。」
「うわぁ、ごちそうさまです。」
腕を絡める二人をみて、サンも同じようにケヴィンに腕を絡めた。
――――と、そこで。庭の方から何かが会場に入ってくるのが見えた。
「ちょっと…。今、庭から何かがサッと中に入ってくるのが見えた。人か獣か分からないけど…。」
「わかった。私が見てこよう。シュヴァリエ様、サンをよろしくお願いします。」
ケヴィンがその場を離れた。
「勘違いだったらいいんだけどね。」
ところが、それが。王家の陛下夫婦、王太子夫婦を巻き込んだ大騒動になるとは。
庭の方から周囲を窺ったケヴィンは、妖しい影を探した。
そして、上等の服を着てはいるが、正装ではない、そんな男がもぐもぐと飯を食べている姿を見て、目を見開いた。
都合が悪いことに、その場へ兄である王太子夫婦が休憩に現れる。
「あら、ケヴィン様。あなたも休憩?―――――え。えっ?何、その子。」
リリーナが笑顔から怪訝な表情になり、目の前の男と隣の夫の顔を見比べる。
「………ごめんなさい。お隣さんが楽しそうだったから、つい。ご飯もおいしそうで…。ちょっとくらいならいっぱいあるからいいかな、って思ったの。」
デュランと同じ顔をした少年がそこにいた。
「王太子殿下、おめでとうございます。」
「ありがとう。」
招待客に礼をするデュランの隣でほほ笑み、ともに礼をするのは、妃のリリーナ。
その様子を遠巻きに見ながら、デュランの弟であるケヴィン=ノースとその妻のサン=ノース公爵夫人は、友人であるボヌールとトロワの父親であるゼロ=サンダルフォン様とシュヴァリエ様とともにワインを嗜んでいた。
友人の父親同士だが、二人は夫夫である。
ゼロに嫁ぐまでは、男側で出席していたシュヴァリエは、いつもピシッとしたスーツを着ていたが、今回は、ゼロの妻として、スーツの下はドレスシャツを着ていた。
「シュヴァリエ様、今日の装い素敵ですね。いつもの服も騎士様と言った感じでとてもカッコいいですけど、今日は麗しいです。」
黒髪黒目で、黒猫のような美しい青年が、目をキラキラ輝かせる。
「サン様、ありがとうございます。今日は私の『妻』としての社交界デビューのようなものですからね。ゼロ様におねだりしていいものを買っていただきました。」
「隠居の身とはいえ、そのぐらいの余裕はある。たとえ妻に資産があったとしても、社交界で身に着けるものを贈るのは、夫の義務であり、楽しみというものだよ。」
「うわぁ、ごちそうさまです。」
腕を絡める二人をみて、サンも同じようにケヴィンに腕を絡めた。
――――と、そこで。庭の方から何かが会場に入ってくるのが見えた。
「ちょっと…。今、庭から何かがサッと中に入ってくるのが見えた。人か獣か分からないけど…。」
「わかった。私が見てこよう。シュヴァリエ様、サンをよろしくお願いします。」
ケヴィンがその場を離れた。
「勘違いだったらいいんだけどね。」
ところが、それが。王家の陛下夫婦、王太子夫婦を巻き込んだ大騒動になるとは。
庭の方から周囲を窺ったケヴィンは、妖しい影を探した。
そして、上等の服を着てはいるが、正装ではない、そんな男がもぐもぐと飯を食べている姿を見て、目を見開いた。
都合が悪いことに、その場へ兄である王太子夫婦が休憩に現れる。
「あら、ケヴィン様。あなたも休憩?―――――え。えっ?何、その子。」
リリーナが笑顔から怪訝な表情になり、目の前の男と隣の夫の顔を見比べる。
「………ごめんなさい。お隣さんが楽しそうだったから、つい。ご飯もおいしそうで…。ちょっとくらいならいっぱいあるからいいかな、って思ったの。」
デュランと同じ顔をした少年がそこにいた。
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