わんこな庶務は魔王な生徒会長に憧れる

竜鳴躍

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熟年編

それぞれの妻へ

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ゼロとシュヴァリエは、ともに暮らすサンダルフォン公爵家の離れの薔薇園で、薔薇を摘んでいた。


事件で殺されてしまったそれぞれの妻のために、年に一度は墓参りに行く。

特にゼロは、亡き妻を悼んで止まない。

それは、彼女たちが被害者となった事件は、赤子を出産したばかりの女性を狙って、性的暴行の上殺害し、子を攫うという悪質極まりないものだったからだ。


愛情というより友情で結ばれたレイナだったが、ゼロだけが彼女の性的嗜好を知っていた。


ゼロでさえ、子をもうけるための義務的な交わりとして、効率的な日を選んでそれほど多く交わってはいない。

しかも、彼女の嫌悪感を和らげるために、その時は女装して着衣で臨んだのだ。

そんな彼女がそんなふうに扱われて、どれだけの苦痛だっただろうかと思うと、悔しくてたまらない。


ルナの方は、当時幼児だった嫡男のニールが騒いで人を呼んだので、性的な暴行の方はされていないが、目の前で幼い息子を傷つけられ、二人致命傷を負って、どれだけ辛い最後だったのだろう。



過ぎてしまったことは取り返しがつかない。




「用意できました。行きましょう、ゼロ。」

40を過ぎてもあの頃のように美しいシュヴァリエ。


丁寧に棘を抜いた赤いバラと白いバラを持って、二人は馬車に乗った。





墓参りの帰り道、馬車からふと見えた人が知り合いに見えて、シュヴァリエは馬車を止めさせた。




「オリエ!!!!!!!!」



学園時代、急に姿を消した幼馴染のオリエ。

本当は3つも年上で、なにか秘密の所属にいる。それだけが分かっていて、彼の消息は親兄弟ですらわからなかった。

大人になり、それなりの要職についても、なお。





帽子を深く被った紳士は、ゆっくり振り返る。




「よお。」


それは、久しぶりに見るオリエだった。
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