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セクハラ教師と天然わんこと魔王様
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「あれ…っ?」
「シュヴァリエ、どうした?」
水泳の授業が終わり、シャワーを浴びて更衣室でさあ着替えをしようとなって。(もちろんシャワー時は俺がガードだ!)バスタオルもこもこになったシュヴァリエがロッカーを漁って困っている。
「私のパンツがなくなってて…。おかしいなぁ。どこかへ飛んで行っちゃったのかな。」
じろりと級友を見れば、俺が怖かったのかみんな目線を合わさない。
というか正直みんな怪しい。
「仕方ない。そのままズボン履くよ。」
「は?」
「大丈夫だよ!スカートじゃないんだし、分からないって!」
大丈夫じゃねえんだよ、みんなが妄想するんだろうがよおおおお!
…とはいえ、今だけは。そう今だけはそうするしかないのも事実、か。
「仕方ねえ。購買部でパンツくらい売ってるだろ。さっさと出て新しいの買いに行くぞ!」
ところが。
「キャンベル先生?」
剣術指南役のキャンベル先生が廊下でシュヴァリエを待っていた。
「すまない。忙しいと思うのだが、どうしてもシュヴァリエ君に話があって。大事な話なんだ。」
「ああ、もう。休み時間終わっちまうから、俺が買いに行くから!お前は一人で人気のないところを歩くんじゃないぞ!分かったな!!!」
「ごめん、お願い!」
兄弟みたいに育った幼馴染だから、パンツのサイズもよく知っている。オリエが買いに行ってくれたことに安心して、キャンベル先生を見る。
何か思い詰めていらっしゃるのだろうか?
それほど重要な話って何だろう。
「…あの。それで、大事な話とはなんでしょう。」
剣術指南役を務めるほどのキャンベル先生は、こうしてみると自分より全体的にガッシリして大きい。
でも、私が今15歳だと考えると、卒業するころには背丈は越してるかもしれない。
なんせ自分の背丈は178cmくらいだった気がする。
もうすぐ成長期は終わると思うけれど、あともう少しくらいは伸びると思う。
「実は、先生。騎士じゃなくて冒険者あがりなんだ。安定した収入が欲しくなって、指南役のバイトに応募したら愛かったんだけど我流だからさ。だから、シュヴァリエ君には何も教えられることがなくって…。それで、提案なんだけど、俺のアシスタントをしてくれないだろうかと思って。」
「アシスタント、ですか。いいですよ!私でお役に立てるなら。」
自分のために自分が勉強する時間を削って教えてくれるゼロ先輩を見習いたい。
私ができることなら、いくらでもみんなに返したい。
にっこり微笑むと、先生が頬を紅潮させて私の手を握りしめてきた。
「ありがとう!それでは雇用契約書を結びたいから、ちょっと俺の詰所に来てくれないか!管理を兼ねて武具置き場の一角を間借りしているんだ!」
「……あ。でも、次の授業が…。」
「実は、これから用事があって、今しかないんだ!すぐすむし、ほら、武具室は近くだから!」
なら、仕方ないかあ。
「遅れたくないので、少しの時間でお願いしますね。」
ぴしゃっ。
先生に先にと言われて部屋に入った。
―――――武具室の鍵がかけられる。
「先生?」
「ほら、生徒。1年生の君をアシスタントに、って誰かが知ったら嫌な気持ちになる人もいるかもしれないからね。」
……そういうものなのかなぁ。
「そういえば…、今日。ズボンのラインがいつもと少し違う気がするね。」
先生の指が、ズボンのお尻のところに触れた。
「はずかしい!分かりますか!?プールの後、パンツが行方不明になってて…。」
「じゃあ、君は今、はいてないんだ。」
「…だって仕方ないじゃないですか。」
「シュヴァリエ君…。俺は君のこ―――――」
ガチャっ。ガチャ!バッ!ガラッ!
「キャンベル先生????バイトのあなたが生徒と雇用契約なんて結んだら、再委託になりますよ?
再委託は禁止されているはずですが!」
なんでここにゼロ先輩がいるんだろう。
「ゼロ先輩!」
見ると、オリエが真っ青な顔で端っこにいる。
あまり話したことのない同級生も一緒だ。
ちっさくて小動物みたいな男の子。名前はガナッシュだったっけ。
「ど、どうしてここの鍵が…。」
「ガナッシュ君はこの学園の学園長の令息なので。マスターキーを借りてきました。」
「えっ、そうなの!!?」
「色眼鏡で見られたくなくて黙ってたけどそうです。会長には何でもお見通しでした。」
「とにかく、先生は教師の仕事を続けるつもりがないらしい。これは、先々のことを含めて先生は学園長とお話が必要のようだ。シュヴァリエ、オリエ君たちと教室へ帰りなさい。ここは私に任せて。」
ゼロ先輩はオーラが違う。
やっぱりかっこいいなあ。
はーい。分かりました!
先生と先輩に会釈して、その場を離れた。
お昼休みに先輩に、先生が一身上の都合で退職したので、剣術指南役を私がやるようにと伝えられた。
そして先輩から行方不明になってたパンツを渡された。
見つかってよかった!
あのくそ教師!セクハラ親父がッ!
あいつがパンツを持っていたッ!
何かに使われる前に取り返してよかった…!
購買部に筆記用具を買いに行って本当に良かったと神に感謝した。
あそこで不審に大きなパンツを探すオリエ君に会わなければ…。
小腹がすいて菓子を買いに来たガナッシュ君に会わなければ…。
この奇跡に柄もなく魔王様は神に感謝するのだった。
「シュヴァリエ、どうした?」
水泳の授業が終わり、シャワーを浴びて更衣室でさあ着替えをしようとなって。(もちろんシャワー時は俺がガードだ!)バスタオルもこもこになったシュヴァリエがロッカーを漁って困っている。
「私のパンツがなくなってて…。おかしいなぁ。どこかへ飛んで行っちゃったのかな。」
じろりと級友を見れば、俺が怖かったのかみんな目線を合わさない。
というか正直みんな怪しい。
「仕方ない。そのままズボン履くよ。」
「は?」
「大丈夫だよ!スカートじゃないんだし、分からないって!」
大丈夫じゃねえんだよ、みんなが妄想するんだろうがよおおおお!
…とはいえ、今だけは。そう今だけはそうするしかないのも事実、か。
「仕方ねえ。購買部でパンツくらい売ってるだろ。さっさと出て新しいの買いに行くぞ!」
ところが。
「キャンベル先生?」
剣術指南役のキャンベル先生が廊下でシュヴァリエを待っていた。
「すまない。忙しいと思うのだが、どうしてもシュヴァリエ君に話があって。大事な話なんだ。」
「ああ、もう。休み時間終わっちまうから、俺が買いに行くから!お前は一人で人気のないところを歩くんじゃないぞ!分かったな!!!」
「ごめん、お願い!」
兄弟みたいに育った幼馴染だから、パンツのサイズもよく知っている。オリエが買いに行ってくれたことに安心して、キャンベル先生を見る。
何か思い詰めていらっしゃるのだろうか?
それほど重要な話って何だろう。
「…あの。それで、大事な話とはなんでしょう。」
剣術指南役を務めるほどのキャンベル先生は、こうしてみると自分より全体的にガッシリして大きい。
でも、私が今15歳だと考えると、卒業するころには背丈は越してるかもしれない。
なんせ自分の背丈は178cmくらいだった気がする。
もうすぐ成長期は終わると思うけれど、あともう少しくらいは伸びると思う。
「実は、先生。騎士じゃなくて冒険者あがりなんだ。安定した収入が欲しくなって、指南役のバイトに応募したら愛かったんだけど我流だからさ。だから、シュヴァリエ君には何も教えられることがなくって…。それで、提案なんだけど、俺のアシスタントをしてくれないだろうかと思って。」
「アシスタント、ですか。いいですよ!私でお役に立てるなら。」
自分のために自分が勉強する時間を削って教えてくれるゼロ先輩を見習いたい。
私ができることなら、いくらでもみんなに返したい。
にっこり微笑むと、先生が頬を紅潮させて私の手を握りしめてきた。
「ありがとう!それでは雇用契約書を結びたいから、ちょっと俺の詰所に来てくれないか!管理を兼ねて武具置き場の一角を間借りしているんだ!」
「……あ。でも、次の授業が…。」
「実は、これから用事があって、今しかないんだ!すぐすむし、ほら、武具室は近くだから!」
なら、仕方ないかあ。
「遅れたくないので、少しの時間でお願いしますね。」
ぴしゃっ。
先生に先にと言われて部屋に入った。
―――――武具室の鍵がかけられる。
「先生?」
「ほら、生徒。1年生の君をアシスタントに、って誰かが知ったら嫌な気持ちになる人もいるかもしれないからね。」
……そういうものなのかなぁ。
「そういえば…、今日。ズボンのラインがいつもと少し違う気がするね。」
先生の指が、ズボンのお尻のところに触れた。
「はずかしい!分かりますか!?プールの後、パンツが行方不明になってて…。」
「じゃあ、君は今、はいてないんだ。」
「…だって仕方ないじゃないですか。」
「シュヴァリエ君…。俺は君のこ―――――」
ガチャっ。ガチャ!バッ!ガラッ!
「キャンベル先生????バイトのあなたが生徒と雇用契約なんて結んだら、再委託になりますよ?
再委託は禁止されているはずですが!」
なんでここにゼロ先輩がいるんだろう。
「ゼロ先輩!」
見ると、オリエが真っ青な顔で端っこにいる。
あまり話したことのない同級生も一緒だ。
ちっさくて小動物みたいな男の子。名前はガナッシュだったっけ。
「ど、どうしてここの鍵が…。」
「ガナッシュ君はこの学園の学園長の令息なので。マスターキーを借りてきました。」
「えっ、そうなの!!?」
「色眼鏡で見られたくなくて黙ってたけどそうです。会長には何でもお見通しでした。」
「とにかく、先生は教師の仕事を続けるつもりがないらしい。これは、先々のことを含めて先生は学園長とお話が必要のようだ。シュヴァリエ、オリエ君たちと教室へ帰りなさい。ここは私に任せて。」
ゼロ先輩はオーラが違う。
やっぱりかっこいいなあ。
はーい。分かりました!
先生と先輩に会釈して、その場を離れた。
お昼休みに先輩に、先生が一身上の都合で退職したので、剣術指南役を私がやるようにと伝えられた。
そして先輩から行方不明になってたパンツを渡された。
見つかってよかった!
あのくそ教師!セクハラ親父がッ!
あいつがパンツを持っていたッ!
何かに使われる前に取り返してよかった…!
購買部に筆記用具を買いに行って本当に良かったと神に感謝した。
あそこで不審に大きなパンツを探すオリエ君に会わなければ…。
小腹がすいて菓子を買いに来たガナッシュ君に会わなければ…。
この奇跡に柄もなく魔王様は神に感謝するのだった。
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