58 / 67
娼婦のような女
しおりを挟む
「こんばんはっ。私、リンゼ=パープですっ。実は……折り入ってお話が……。少し人目のつかないところにいきたいんですけどぅ。」
目を潤ませながら、リンゼは目の前の麗しい王子を見つめた。
ああ。
やっぱりカッコイイ。
スラリとした体躯。
程よく着いた筋肉のラインは美しく、顔も凛々しくてかっこいい。
間近で見るとちょっと違うわぁ。
大人の色気を感じる。
セクシィー♡♡
「なんだい?完全に二人っきりはちょっと…。少しバルコニーに出るくらいなら…。」
2人でそっとバルコニーに出る。
月明り。
そして、夜の香りの中、薔薇のフレグランスが漂う。
「それで、話とは…。」
「これを…。」
リンゼはたわわに零れそうな胸を揺らし、すっと手紙を取り出した。
それは、ポーネ先生からアムールへのラブレター。
「お妃さまは浮気をしてらっしゃるのですわっ!昔の男が忘れられないのですっ!かわいそうな王太子殿下、私がお慰めいたしますわっ!!!」
あえて隙を見せると、この痴女は突進してきた。
本当はなんてことない重みだけど…。わざと押しつぶされ、彼女に押し倒された形に持ってきた。
「……なんてこと!」
サンベリル殿下の声。
倒れた瞬間に、弟殿下に見つかったらしい。
キャアアアア!と悲鳴も聞こえている。
ふふふ。そこまでのつもりはなかったんだけど、できちゃった?既成事実!?
リンゼの頭の中はバラ色だ。
「大丈夫?ネニュファール!」
「ネニュ!!」
………えっ?
サンベリル殿下が見守る中、殿下の婚約者とハーバード公爵夫人が倒れた彼を起こす。
うそ…。
さっき見たときは確かに王太子だったわ!
髪の色もストロベリーブロンドだったもの!
なんで!なんでぇ??
私が押し倒していたのは、オレリアン公爵である三男のネニュファール殿下だった。
「……あいたた。私の顔はお兄様にそっくりですからね。間違えたようですよ。」
「まあ、間違えたって言ってもねぇ…。側妃狙いだとしても品がないのではくて?」
「ああ、あの子はお姉さまと違って、出来が悪いのよ。」
クスクス言われて、両親も赤くなったり青くなったり顔色が忙しい。
「なっ、なによぉ!!!王太子妃にはねえ!思いあってる方がいたのよ!不貞よ!お妃には相応しくないわ!」
「何バカなことを言ってるんですか?この手紙のことです?ポーネ先生…。マルコポーネ侯爵令息は王太子妃の幼馴染で友人ですよ。男爵令嬢が王太子妃を嵌めようなどと…。」
「愛しい旦那様。大事がなくて何よりです。蛾の鱗粉がせっかくの衣装についてしまって…。王太子のレイプ未遂に王族への不敬に傷害。王太子妃への侮辱罪ですか。せっかくのお祝いの日に残念ですね。」
ハーバードとネニュファールは寄り添った。
「ポーネ???マルコポーネ侯爵令息ですって???何を言っているの…??」
「あなたから押し付けられたこの手紙ですよ。ちょっとした行き違いがあったようで、誤解を与える文面を書いてしまったからと直接お城に本人がいらっしゃいましたよ。幼馴染をよろしく頼むとのことでした。最近、お兄様の側妃にっていう圧力がかなりありましたからね。その噂を聞いて、大事な幼馴染が大事にされていないのでは…と、思い余ってしまっていたようで。誤解も解けましたし、これでこの手紙も不要ですね。」
ネニュファールは、手紙を破って火魔法を使い、目の前で燃やした。
「でっ、でも、確かにポーネ先生は王太子妃を…。」
汗を掻きながら狼狽えるリンゼに対し、サンベリルが指し示す。
「マルコポーネ侯爵令息ならあちらに。」
見れば、艶やかな黒髪を後ろに流し、端正な面持ちの美形の男性が灰色のスーツにスモーキーピンクのハンカチーフをあわせて、スモーキーピンクの髪の女性とダンスをしている。
ええええ!???うそ!あれがあああっ!?
どうせ平民だろうとバカにしていた野暮ったい男があんなに素敵なんて。
しかも侯爵だなんて。
一緒にダンスをしているのは誰なのかしら。あんなに綺麗な人、見たことがない。
みんな口々に素敵だ、美男美女だとほめたたえており、二人はまんざらでもなく見つめあっては頬を染めている。
「あの女性は貴方のお姉さんですよ。あなたとは月とすっぽん、なんとも素晴らしい女性だ。マックイーン伯爵家の養女になられて、エトワーゼ=マックイーン。あなたとはもはや他人ですね。マックイーン家の勤める神殿で聖女候補として勤めている心も体も美しく、賢い女性です。」
「あ~あ。それに比べてあなたはやらかしたものだ。男爵家も丸ごと破滅でしょうね。」
ハーバードがにっこりとほほ笑む。
「嘘よ、嘘!お姉さまはあんなに美しくなかったわ…!」
「お姉さまはあなたみたいに股が緩くなかったから、自分を飾るより勉学に力を入れていただけですよ。同じようにドレスアップすれば……その気になればいつでも綺麗になれたのです。本当は、あなたよりもうんと美しかったのですよ。」
くすくすと令嬢たちの笑い声が聞こえる。
なによ、あんたたちだって!あんたたちだって似たようなものじゃないのよ!
自分はもうおしまいだ。
股の緩い、下品でバカな女だと認定されてしまった。
本当は優良物件が目の前に転がっていたのに、気づくこともできなかった…。
唇をかみしめ、両親を見ると、目を背けられた。
そして、ファンファーレが鳴り、陛下妃殿下と、王太子と王太子妃がお目見えとなった。
目を潤ませながら、リンゼは目の前の麗しい王子を見つめた。
ああ。
やっぱりカッコイイ。
スラリとした体躯。
程よく着いた筋肉のラインは美しく、顔も凛々しくてかっこいい。
間近で見るとちょっと違うわぁ。
大人の色気を感じる。
セクシィー♡♡
「なんだい?完全に二人っきりはちょっと…。少しバルコニーに出るくらいなら…。」
2人でそっとバルコニーに出る。
月明り。
そして、夜の香りの中、薔薇のフレグランスが漂う。
「それで、話とは…。」
「これを…。」
リンゼはたわわに零れそうな胸を揺らし、すっと手紙を取り出した。
それは、ポーネ先生からアムールへのラブレター。
「お妃さまは浮気をしてらっしゃるのですわっ!昔の男が忘れられないのですっ!かわいそうな王太子殿下、私がお慰めいたしますわっ!!!」
あえて隙を見せると、この痴女は突進してきた。
本当はなんてことない重みだけど…。わざと押しつぶされ、彼女に押し倒された形に持ってきた。
「……なんてこと!」
サンベリル殿下の声。
倒れた瞬間に、弟殿下に見つかったらしい。
キャアアアア!と悲鳴も聞こえている。
ふふふ。そこまでのつもりはなかったんだけど、できちゃった?既成事実!?
リンゼの頭の中はバラ色だ。
「大丈夫?ネニュファール!」
「ネニュ!!」
………えっ?
サンベリル殿下が見守る中、殿下の婚約者とハーバード公爵夫人が倒れた彼を起こす。
うそ…。
さっき見たときは確かに王太子だったわ!
髪の色もストロベリーブロンドだったもの!
なんで!なんでぇ??
私が押し倒していたのは、オレリアン公爵である三男のネニュファール殿下だった。
「……あいたた。私の顔はお兄様にそっくりですからね。間違えたようですよ。」
「まあ、間違えたって言ってもねぇ…。側妃狙いだとしても品がないのではくて?」
「ああ、あの子はお姉さまと違って、出来が悪いのよ。」
クスクス言われて、両親も赤くなったり青くなったり顔色が忙しい。
「なっ、なによぉ!!!王太子妃にはねえ!思いあってる方がいたのよ!不貞よ!お妃には相応しくないわ!」
「何バカなことを言ってるんですか?この手紙のことです?ポーネ先生…。マルコポーネ侯爵令息は王太子妃の幼馴染で友人ですよ。男爵令嬢が王太子妃を嵌めようなどと…。」
「愛しい旦那様。大事がなくて何よりです。蛾の鱗粉がせっかくの衣装についてしまって…。王太子のレイプ未遂に王族への不敬に傷害。王太子妃への侮辱罪ですか。せっかくのお祝いの日に残念ですね。」
ハーバードとネニュファールは寄り添った。
「ポーネ???マルコポーネ侯爵令息ですって???何を言っているの…??」
「あなたから押し付けられたこの手紙ですよ。ちょっとした行き違いがあったようで、誤解を与える文面を書いてしまったからと直接お城に本人がいらっしゃいましたよ。幼馴染をよろしく頼むとのことでした。最近、お兄様の側妃にっていう圧力がかなりありましたからね。その噂を聞いて、大事な幼馴染が大事にされていないのでは…と、思い余ってしまっていたようで。誤解も解けましたし、これでこの手紙も不要ですね。」
ネニュファールは、手紙を破って火魔法を使い、目の前で燃やした。
「でっ、でも、確かにポーネ先生は王太子妃を…。」
汗を掻きながら狼狽えるリンゼに対し、サンベリルが指し示す。
「マルコポーネ侯爵令息ならあちらに。」
見れば、艶やかな黒髪を後ろに流し、端正な面持ちの美形の男性が灰色のスーツにスモーキーピンクのハンカチーフをあわせて、スモーキーピンクの髪の女性とダンスをしている。
ええええ!???うそ!あれがあああっ!?
どうせ平民だろうとバカにしていた野暮ったい男があんなに素敵なんて。
しかも侯爵だなんて。
一緒にダンスをしているのは誰なのかしら。あんなに綺麗な人、見たことがない。
みんな口々に素敵だ、美男美女だとほめたたえており、二人はまんざらでもなく見つめあっては頬を染めている。
「あの女性は貴方のお姉さんですよ。あなたとは月とすっぽん、なんとも素晴らしい女性だ。マックイーン伯爵家の養女になられて、エトワーゼ=マックイーン。あなたとはもはや他人ですね。マックイーン家の勤める神殿で聖女候補として勤めている心も体も美しく、賢い女性です。」
「あ~あ。それに比べてあなたはやらかしたものだ。男爵家も丸ごと破滅でしょうね。」
ハーバードがにっこりとほほ笑む。
「嘘よ、嘘!お姉さまはあんなに美しくなかったわ…!」
「お姉さまはあなたみたいに股が緩くなかったから、自分を飾るより勉学に力を入れていただけですよ。同じようにドレスアップすれば……その気になればいつでも綺麗になれたのです。本当は、あなたよりもうんと美しかったのですよ。」
くすくすと令嬢たちの笑い声が聞こえる。
なによ、あんたたちだって!あんたたちだって似たようなものじゃないのよ!
自分はもうおしまいだ。
股の緩い、下品でバカな女だと認定されてしまった。
本当は優良物件が目の前に転がっていたのに、気づくこともできなかった…。
唇をかみしめ、両親を見ると、目を背けられた。
そして、ファンファーレが鳴り、陛下妃殿下と、王太子と王太子妃がお目見えとなった。
31
お気に入りに追加
616
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜
百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。
最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。
死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。
※毎日18:30投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる