56 / 67
男同士の対話
しおりを挟む
「ポーネ先生!」
にこやかにほほ笑み、ネニュファールはポーネの腕をつかむと、城へ転移した。
バスティン王国の応接室である。
ぼさぼさの黒髪は顔が見えないが、視界も悪い。
顔をあげると、そこにはアムールと結婚したプリンシパルが座っていた。
「お座りください、先生。俺と男同士の話をしましょう。ヒストグラフ=マルコポーネ侯爵令息。」
「………知っていたのですね。いや、調べたのか。」
「ええ。優秀な弟が調べてくれました。言っておきますが、アムールに無理強いして結婚したわけではないですよ。」
「えっ。」
「俺がアムール先生の研究室に誤って入り込んでしまったのが、そもそもの始まりです。誓って、卒業までふしだらな関係になったことはありません。俺は、体が大きくて発育が良かったから、双子で生まれた小さな弟にかかりきりになりがちな両親に十分甘えられずに育ちました。アムール先生は、そんな俺を癒してくれたんです。王太子として、ゆくゆくは国を担う者として、緊張はつきもの。ですが、アムールの前では一人のプリンシパルになれる。いつしか、俺はアムールを愛するようになりました。一回り年上だろうが、関係なかった。」
「王家が………幼い王太子がアムールを見初めたからずっと縁談を邪魔して…。卒業を機に打診したのでは?」
「アムールの年齢もあるので、卒業後すぐに婚約し、短い婚約期間ですぐに結婚することが決まっていました。そういわなければ、俺たちの関係が卒業後から始まったのだということにしなければ、たとえ何も後ろめたいことはなかったとしても、勘ぐるやつがいるでしょう?一回りも年下の学生……しかも王太子を誑かした教師というレッテルを貼らせたくなかったんですよ。」
魔法で、ブリザード王国で笑って従妹たちと遊んでいるアムールの姿を映す。
なんだ…………。
ポーネの目からぽろぽろ涙がこぼれた。
「5歳の時…。父に連れられ、初めて行った神殿でアムールを見て。一目ぼれだった…。すぐに仲良くなって、いつも一緒に遊んでいたんだ。大きくなったら、僕のお嫁さんになって…って。だけど、11歳くらいの時かな。アムールが病気になって、帰ってきたら遊んでくれなくなって。壁を感じて…。人の顔を見るのが怖いって……。何があったのか分からないけど、それからアムールが教師になったから、私も追いかけて教師になったんだ。父には反対されたが…。領地の仕事もやるって…二重生活を受け入れて。」
「アムールさんが顔を怖がるから隠すために髪とひげを伸ばしたんですね。もっと何かやりようもあったでしょうに。」
ネニュファールは思っていたよりポーネ先生がまともだったので、ほっとしていた。
「愛してるって、結婚しようって何度も言ったけど、アムールはいつも断って来た。一生誰とも結婚する気はないんですって。でも、力なく笑うんだ。あんな笑顔じゃなかった。昔は。そう、さっき見せてもらった笑顔が、アムールの本当の…。私じゃ…なかったんだ…。」
「ポーネ先生。約束します。あなたの想いの分も、必ず俺がアムールを幸せにする。側妃は娶らない。子ができなくても、側妃は要らない。その時は弟たちに頑張ってもらって、1人養子にもらう。最悪、ブリザード王国からもらうでもいいと思ってる。」
「あぁ、あ…うっ。よろしくっ、おねがいしますっ…。」
男二人は硬い握手を交わした。
「さて、最後の仕事といきましょうかね。」
その様子を見て、ネニュファールは大人に変身する。
「なっ。おまえ、それ…。」
その姿は、プリンシパルに背丈も顔もよく似ている。
「研究成果だよ。すごいでしょ。心と体の年齢を18歳に引き上げました。ねえ、これで髪を染めたら。きっとお兄様だと間違っちゃうんじゃない?」
害虫の後始末をするから、お兄様がとどめを刺してね♡
にこやかにほほ笑み、ネニュファールはポーネの腕をつかむと、城へ転移した。
バスティン王国の応接室である。
ぼさぼさの黒髪は顔が見えないが、視界も悪い。
顔をあげると、そこにはアムールと結婚したプリンシパルが座っていた。
「お座りください、先生。俺と男同士の話をしましょう。ヒストグラフ=マルコポーネ侯爵令息。」
「………知っていたのですね。いや、調べたのか。」
「ええ。優秀な弟が調べてくれました。言っておきますが、アムールに無理強いして結婚したわけではないですよ。」
「えっ。」
「俺がアムール先生の研究室に誤って入り込んでしまったのが、そもそもの始まりです。誓って、卒業までふしだらな関係になったことはありません。俺は、体が大きくて発育が良かったから、双子で生まれた小さな弟にかかりきりになりがちな両親に十分甘えられずに育ちました。アムール先生は、そんな俺を癒してくれたんです。王太子として、ゆくゆくは国を担う者として、緊張はつきもの。ですが、アムールの前では一人のプリンシパルになれる。いつしか、俺はアムールを愛するようになりました。一回り年上だろうが、関係なかった。」
「王家が………幼い王太子がアムールを見初めたからずっと縁談を邪魔して…。卒業を機に打診したのでは?」
「アムールの年齢もあるので、卒業後すぐに婚約し、短い婚約期間ですぐに結婚することが決まっていました。そういわなければ、俺たちの関係が卒業後から始まったのだということにしなければ、たとえ何も後ろめたいことはなかったとしても、勘ぐるやつがいるでしょう?一回りも年下の学生……しかも王太子を誑かした教師というレッテルを貼らせたくなかったんですよ。」
魔法で、ブリザード王国で笑って従妹たちと遊んでいるアムールの姿を映す。
なんだ…………。
ポーネの目からぽろぽろ涙がこぼれた。
「5歳の時…。父に連れられ、初めて行った神殿でアムールを見て。一目ぼれだった…。すぐに仲良くなって、いつも一緒に遊んでいたんだ。大きくなったら、僕のお嫁さんになって…って。だけど、11歳くらいの時かな。アムールが病気になって、帰ってきたら遊んでくれなくなって。壁を感じて…。人の顔を見るのが怖いって……。何があったのか分からないけど、それからアムールが教師になったから、私も追いかけて教師になったんだ。父には反対されたが…。領地の仕事もやるって…二重生活を受け入れて。」
「アムールさんが顔を怖がるから隠すために髪とひげを伸ばしたんですね。もっと何かやりようもあったでしょうに。」
ネニュファールは思っていたよりポーネ先生がまともだったので、ほっとしていた。
「愛してるって、結婚しようって何度も言ったけど、アムールはいつも断って来た。一生誰とも結婚する気はないんですって。でも、力なく笑うんだ。あんな笑顔じゃなかった。昔は。そう、さっき見せてもらった笑顔が、アムールの本当の…。私じゃ…なかったんだ…。」
「ポーネ先生。約束します。あなたの想いの分も、必ず俺がアムールを幸せにする。側妃は娶らない。子ができなくても、側妃は要らない。その時は弟たちに頑張ってもらって、1人養子にもらう。最悪、ブリザード王国からもらうでもいいと思ってる。」
「あぁ、あ…うっ。よろしくっ、おねがいしますっ…。」
男二人は硬い握手を交わした。
「さて、最後の仕事といきましょうかね。」
その様子を見て、ネニュファールは大人に変身する。
「なっ。おまえ、それ…。」
その姿は、プリンシパルに背丈も顔もよく似ている。
「研究成果だよ。すごいでしょ。心と体の年齢を18歳に引き上げました。ねえ、これで髪を染めたら。きっとお兄様だと間違っちゃうんじゃない?」
害虫の後始末をするから、お兄様がとどめを刺してね♡
31
お気に入りに追加
616
あなたにおすすめの小説
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話
NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……?
「きみさえよければ、ここに住まない?」
トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが………
距離が近い!
甘やかしが過ぎる!
自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!
華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる