【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

ん？？どっちが僕の婚約者になる人なのかな？

国から連れてきた侍従と一緒に、バスティン王国の方々と向かい合って座る。


オレンジ色の髪のロイ陛下は、昔、グラス王国に留学していたことがあるらしい。

そして、ストロベリーブロンドのシン王妃は、グラス王国では伯爵だったとか。

２人とも才能ある方々で、素晴らしい方々だ。


父からよくよく寝物語に聞かされてきたものだ。



陛下と妃殿下はいらっしゃるのだが、肝心の僕のお相手が来ない。


妃殿下がおっしゃるには、家族を全員紹介したいから、僕の婚約者になる方だけでなく、他の二人の王子も同席するのだそうだ。


緊張した心待ちで待っていたら、向こうから仲睦まじく手を繋いで、二人の王子がいらっしゃった。


２人とも同じくらいの背丈で、オレンジ色の髪。

だけれど、ロイ陛下に似ている子の方が背がちょっぴり高い気がする。

菫色の瞳の可憐な子は、妃殿下にそっくりだけど、妃殿下のあの凛とした雰囲気は彼にはない。

どちらもとても美人だと思うけど、僕の婚約者はどっちなんだろう。



普通に考えたら、僕の色を着てくれている子が、僕の相手なんだろうと思うけど…。




２人を眺めていたら、ふいにこちらを見たロイ陛下に似た子が、ふふっとほほ笑んだ。


なんだろう、なんかぞくぞくするぞ。

妙に迫力があるというか、色気がある子だ。

気品のある色気？というのかな。



顔の造形や全体的にはあの子は陛下そっくりなんだけど、陛下より少し線が細くて中性的だ。
目線というか、立ち居振る舞いとか、雰囲気は妃殿下に似ている。



単純に顔を比べれば、黒い服の子の方がより美人だとは思うけど………



僕はこっちの子みたいなタイプがいいなぁ…。

踏まれたい………。




自己紹介が始まったけど、第一王子のプリンシパル様がまだいらっしゃらないみたい。

「構いません。公務もお忙しいでしょうから。」


どっちが僕の婚約者か分からなくて、ハラハラする。

早く答えを聞きたいような、聞きたくないような。

もう少し、何も考えないで、目の前の美人を見ていたい。




その時。

第一王子様が現れた。

後ろに、褐色の肌で黒髪の、すっごくカッコいい人を連れて。



「リロンデル…様！……どうして！！」

黒い服の王子……。第二王子のサンベリル様が立ち上がる。


「サンベリル……！俺は、君を愛してる！！」



あれ？今日は僕の見合いだよね？婚約のための手続き書類を取り交わす日ですよね？

どうして目の前で王子の一人が愛の告白を受けているんだろうか。


ぽかんとしていたら、第三王子のネニュファール様がほほ笑んで、人差し指を口元に立ててウインクをした。