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本日はお日柄もよく?
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晴れた午後。
バスティン王国の城の庭では、お見合いが始まっていた。
日の光を浴びて、サンベリルはますます美しい。
光が清らかさを強調する。
シックな黒の正装は、彼を大人びてみせた。
(ああ…。僕も王族だもん。貴族はみんながみんな、好きな人と結婚できるわけじゃないんだもんね…。)
自分だけが、わがままを言ってはいけない。
グラス王国の第三王子は、まだ14歳で僕より4歳も年下で。
あと4年経たないと結婚できないけれど、自分が気持を整理するためにはそのくらいはあった方がいいのかもしれない。
15歳の春にはこちらの貴族が通う学園に進学し、風習や地理歴史を学ぶ予定だという。
今日は父君からの封書を携えて、侍従のみでいらっしゃっているというし、14歳にして陛下の信頼厚く、しっかりした若者なのだろう。
将来は騎士として兄君たちに仕える予定で、向こうの騎士団長の指導を受けていたそうで、年齢にしてはスラリと高身長の、将来が期待できそうな体躯の方とか。
きっと、彼は僕を大事にしてくれるだろうし、僕を守ってくれるんだろう。
父や母や兄のお眼鏡にかなっているんだから、そういうことだ。
なのに。
こんな気持ちじゃ、失礼だ。僕。
「サンベリルお兄様!」
会場へ着くと、ミルクティー色の上着を着たネニュファールが駆け寄って来た。
今日のネニュファールは可愛いな。
フリフリのついたドレスシャツなんて着ちゃって、どうしたのかしら。
「ねえ、お兄様。婚約したら、こうしてお兄様と手を繋いで歩くってできないんでしょうし、手を繋いでいきましょうよ。」
「……うん?いいよ。今日は甘えん坊だね。めずらしい。」
「おお、やっときたか。」
お父様とお母様がこちらを見て、ほほ笑んだ。
「そちらが、グラス王国の第三王子、ハーバード様だよ。ハーバード様、家族を紹介しますね。」
長いテーブルに向かい合って、ガーデンパーティみたい。
お母様が立ち上がって、家族を紹介し始めた。
お父様、お母様、お兄様、僕、ネニュファールの順に紹介するみたい。
ハーバード様は、本当に14歳かな?ってくらい落ち着いて見える方だった。
目鼻立ちは整っていて、きっと将来はかっこよくなるんだろう。
「……では、申し訳ありません。第二王子のサンベリルの前に、第一王子のプリンシパルを紹介したいところなのですが、所用がありまして、少し遅れているみたいで…。」
「構いません。公務もお忙しいでしょうから。」
「遅れてしまって申し訳ない!」
その時、僕は夢じゃないかしら。と思った。
だって、プリンシパルお兄様の後ろには、リロンデルがいたんだもの。
「リロンデル……様…!どうして…。」
「サンベリル。俺は……。君を愛してる!!!!!」
バスティン王国の城の庭では、お見合いが始まっていた。
日の光を浴びて、サンベリルはますます美しい。
光が清らかさを強調する。
シックな黒の正装は、彼を大人びてみせた。
(ああ…。僕も王族だもん。貴族はみんながみんな、好きな人と結婚できるわけじゃないんだもんね…。)
自分だけが、わがままを言ってはいけない。
グラス王国の第三王子は、まだ14歳で僕より4歳も年下で。
あと4年経たないと結婚できないけれど、自分が気持を整理するためにはそのくらいはあった方がいいのかもしれない。
15歳の春にはこちらの貴族が通う学園に進学し、風習や地理歴史を学ぶ予定だという。
今日は父君からの封書を携えて、侍従のみでいらっしゃっているというし、14歳にして陛下の信頼厚く、しっかりした若者なのだろう。
将来は騎士として兄君たちに仕える予定で、向こうの騎士団長の指導を受けていたそうで、年齢にしてはスラリと高身長の、将来が期待できそうな体躯の方とか。
きっと、彼は僕を大事にしてくれるだろうし、僕を守ってくれるんだろう。
父や母や兄のお眼鏡にかなっているんだから、そういうことだ。
なのに。
こんな気持ちじゃ、失礼だ。僕。
「サンベリルお兄様!」
会場へ着くと、ミルクティー色の上着を着たネニュファールが駆け寄って来た。
今日のネニュファールは可愛いな。
フリフリのついたドレスシャツなんて着ちゃって、どうしたのかしら。
「ねえ、お兄様。婚約したら、こうしてお兄様と手を繋いで歩くってできないんでしょうし、手を繋いでいきましょうよ。」
「……うん?いいよ。今日は甘えん坊だね。めずらしい。」
「おお、やっときたか。」
お父様とお母様がこちらを見て、ほほ笑んだ。
「そちらが、グラス王国の第三王子、ハーバード様だよ。ハーバード様、家族を紹介しますね。」
長いテーブルに向かい合って、ガーデンパーティみたい。
お母様が立ち上がって、家族を紹介し始めた。
お父様、お母様、お兄様、僕、ネニュファールの順に紹介するみたい。
ハーバード様は、本当に14歳かな?ってくらい落ち着いて見える方だった。
目鼻立ちは整っていて、きっと将来はかっこよくなるんだろう。
「……では、申し訳ありません。第二王子のサンベリルの前に、第一王子のプリンシパルを紹介したいところなのですが、所用がありまして、少し遅れているみたいで…。」
「構いません。公務もお忙しいでしょうから。」
「遅れてしまって申し訳ない!」
その時、僕は夢じゃないかしら。と思った。
だって、プリンシパルお兄様の後ろには、リロンデルがいたんだもの。
「リロンデル……様…!どうして…。」
「サンベリル。俺は……。君を愛してる!!!!!」
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