【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

竜鳴躍

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クラポー公爵への顛末

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はぁ……。気が重い………。


屋敷に戻ると、いつものように使用人たちは無言で私を出迎えた。

粛々とただ仕事をする使用人たち。


醜い私の面倒を見ることは、彼らには業務でしかないのだ。

顔の化粧を落とし、背筋を伸ばす。



手足が長く、ひょろりとしたアンバランスな体。

まるで棒っきれのようだ。



だが、腰の骨が治り、肌あれが改善した今は、異様とまではいかない。



もしかしたら、使用人は私のことを少しは褒めてくれやしないだろうか。

ウキウキしながら、部屋の外へ出てみたが、全くの無反応だった。




がっかりしたものの、地下牢へ閉じ込めた二人が気になるので、食べ物と飲み物を見繕って降りていく。


ああ。

いやだな。


『私のお嫁さんにしたい、この天使以外に私に笑ってくれる人なんていない、これは運命だ。』


あのときは、そう思いあまって連れてきてしまったが、よくよく考えれば、彼には私なんて勿体ない。

私が彼を唯一だと思ったとしても、あの親切は彼にとっては日常茶飯事で、私は治療をしてあげた山ほどの人間の一人なのだろうから。




檻の方へ行くと、彼は檻の近くでキョトンとしていた。


「えっと……クラポー公爵?ここはどこなのでしょうか。」


奥の方ではまだリロンデルが気絶しているのだろうか。彼はまだリロンデルに気づいていないように見える。



「………申し訳ございませんっ。ここはバスティン王国との境にあるフロース王国の我が領地、我が屋敷にございます…っ。誰からも優しくされたことがなく……、貴方の善意を勘違いして連れてきてしまいました…。さぁ、早く。お家に帰して差し上げましょう。夜のとばりに紛れて国境を出れば、すぐに向こうの国へ着きましょう。おそらく貴方のお父上が捜索をなさっているはず…。私は捕らえられて処分されても仕方ありません。必ず、お返しいたします。さあ!!!」


気づけば涙があふれ出る。震える手で、牢の鍵を開けた。




「ふむ。なるほど。君はまだ救いようのある人間のようだね。」

「?」

目の前の天使の姿が、別の姿に変わる。


オレンジ色の髪の少年。背格好も同じくらいだが、顔はロイ陛下に瓜二つだ。

彼の背後では、リロンデルだと思っていた塊が、うぞうぞと這い出してきた。

騎士の姿をした、傀儡。



「私はネニュファール=ヴェール=バスティン。サンベリル兄さまは、無事、こちらが保護をした。リロンデル様と一緒にね。ね、分かるよね?この意味。」

ズ、ズと何かが這い寄る音がして、上から使用人たちが虚ろな目で降りてくる。


「も、…もしかして………っ。」


「そう。彼らは全て私のゴーレム。よくできているでしょう?本物は拘束してバスティン王国の牢の中だよ~。さぁ、君とは取引ができそうだ。」




この王国をリロンデルに取り戻させてあげるために、君には踊ってもらおうかな?



悪魔のように、美しくネニュファールはほほ笑んだ。
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