【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

終章 魔王と勇者

順調

順調にお腹は大きくなっている。


検診の結果も、問題ない。

大学は、必修講義を受けて、選択必修や選択科目は、集中講義メインに切り替えた。


なるべく休学したくない。

この学年で必修になっている科目を受けて、最低単位さえとれていれば、進級可能だ。

本当は、受けたい講義はたくさんあったけど、出産した後で取り返しはきく。


だって、アイスと一緒に大学に通いたい。

一緒に卒業したい。

…俺は研究室に入るから、大学院まで行っちゃうけど。



「剣ちゃん、産後は私もカバーするから安心してね。講義を受けている間、赤ちゃんを見てくれるベビーシッターにも心当たりがあるの。すごくいい人よ。」


そういって、真理恵専務が紹介してくれたのは、咲里さんと言って、落ち着いた感じの綺麗な人だった。

前世の記憶はないみたいだけど、キャサリンだと思った。



もしかしたら、この世界には、クリスだった頃、俺の周りにいた人たちが他にも生まれ変わっているのかもしれない。

記憶がある人もない人もいるけど、まるで俺を助けるために俺の近くにいてくれているように感じた。


今までの人生で、誰かを助けた分が返されている。そんな感覚。







そして、陣痛が始まった。








「…ううっ、あう～～～～～～～～っ。」



「剣！がんばれ、剣！」



前世では出産可能になったらすぐに帝王切開で出していたから、こんな痛みは初めてだ。

「はぁ、はあ…。こんな痛みが定期的にくるなんて。」


意外としんどい。



「だんだん、出産が近くなったら、陣痛が起こる感覚が短くなるわ。破水したらすぐだから、急いで病院に行きましょう。」


アイスに支えられて病院へ向かう。






「はい、吸って～～～～～～！吐いて～～～～～～！！　ひ、ひ、ふー。ひ、ひ、ふー。」

「ひ、ひ、ふーーーー！」



「おぎゃああああああああああああああ！」



「おめでとうございます！　男の子の赤ちゃんですよ！」

先生が、生まれたての赤ちゃんに産湯を浸からせて俺に見せてくれた。



「剣…。ありがとう、剣。」

前世では立ち会えなかったアイスは、傍でずっと俺の手を握ってくれていた。


「あいす。おとこのこ…。アリス…。」


「うん、アリスだ。また来てくれたね。」



前はお母さまが代理母だったけど、今度は自分で産んであげることができた。



「ふふ、小さい…。」






また、幸せな家族を作ろう。