【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

アヴニール編【学園編】

ウォークラリー大会

「今日は、この山を使ってウォークラリーを行う。ああ、会長副会長以外の３年生３人とアダム先生は急な頭痛腹痛下痢嘔吐で下山しました。そのまま学校をやめて休養するらしいので、気にしないように。」


クライス先生が不穏なことの混じった説明をする。


キャット先生の肌艶が妙に良くなっていて、会長はいつも通りぼけーっと平和そうな顔でアヴニールだけ見つめている。


クライス先生は説明が終わると、俺の方を見た。




俺は、アヴニールと同じ班の一人だが、正直、居心地が悪い。
アヴニールだってそうだろう？



先に行ってポイントを探してくる、と言い張って、常に距離を取って先へ行った。

アヴニールが何か言いたそうな顔はしているけど。


今、お前と話す資格なんて、俺にはないよ。







「あれ…。キリア、どこいったんだ、あいつ。」

グループのメンバーが慌て始める。

先を見に行くと言って、先行していた彼はそれほど先に行かないはずだったのに、いつのまにか見えなくなってしまった。


「先に行き過ぎて、コースアウトしたんじゃないか。」


不安になる。


あんなことがあったから、キリアの様子がおかしかった。


「ちょっと上から見てくる！」


するすると木を登って、高いところから眺めてみると、キリアらしき影が森の中で見えた。



「方向感覚が分からなくなってるのかもしれない。ちょっと、みんなは先に戻って、先生を呼んできて。」

「アヴは？」


「あのままにしておくと、ますます迷ってドツボにはまっちゃうよ。俺はちょっと追いかけるから。発煙筒、あったよね？」


「ああ、ここに。」


荷物係をしていた彼から、発煙筒とライターを受け取る。




「キリアと合流したら、発煙筒を焚くから。今、キリアはここ。」


持ってる地図に赤で×を書く。


「俺が追いかけるまで、少し動いてるかも。すぐ先は崖になってるし。夕べの嵐でこのへんの土砂も弱くなってるから一人にはできないよ。だから、急いで先生たちを連れてきてくれる？」



俺は、森の中に飛び込んだ。