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新章(アリスの結婚編)

どんなに平和な世の中でも、どれだけ悪が滅びても

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なんでそんなものをわざわざ食べようとするのか。

わざとなのかと思ってしまう。

俺を試してる小悪魔ちゃんなのか?


「なんでこんなものが食べたいんだ。あっちのポップコーンとかはいいのか?」


「だって、うちでは、こういうの食べさせてもらえないの。お父様がダメだって。特にお母さまと俺に食べさせないの。ソフトクリームとかも食べたことないんだよ!ひどいよね。何がダメなのか全然わかんない。」


だから食べたいの、ねえ!お願い!


と言われれば、頷くしかなく。フランクフルトとポップコーン、コーラを買って中へ入った。







「クリス、フランクフルトを買ってやろう。」


「いらない。」


「……。」



「チッ…こんなに人が入りやがって…!」


「ん?」

「クリス、どうした?」


「…いや。なんか今…。」

クリスが仕事モードの厳しい顔になっている。


だが、手を繋ぐと、握り返してきた。


「とりあえず、中に入ろう、アイス。」








カカカ。キネマの舞台裏、屋根裏を走る黒い影。

「ティンカー、見つからないか。」


「見つからない。」


「よりによって、部隊長がデートをしているというのに、そのキネマに爆発物がしかけられるなんてな。」


できたばかりのキネマ。

連日にぎわう映画館のオーナーに予告状が届いたのは、つい先ほどの話。


『映画の放映を止めろ。映画館をやめろ。でなければ、観客ごと爆弾で吹き飛ばす。建物は木っ端みじんだ。』


「団長や、部隊長に連絡を入れないんですか?」


「あいにく通信がマナーモードだよ。つながらない。だが、アリス様に連絡はついた。ほかの方法で、団長や部隊長に連絡はつけてくれるそうだ。それから、アリス様の指示がある。支配人!」



「はい…!」



「この映画館の設計図、配線図の図面を見せろ。」

支配人から出された図面を広げ、懐からカメラを出す。


「どうだ、アリス。見えるか。」


『見える。そうか、そういう作りか。それなら、爆破の箇所をある程度僕が想定する。ここがやられたら危ないという箇所。ちょっと待ってて。連絡する。』




このままでは、多くの人が巻き込まれる。弟とお母さまのWデートもこのままでは台無しだ。

どれだけ、平和になろうとも。


どれだけ、悪を滅ぼしても。


人に感情がある限り、必ず光あるところには影ができるように。

悪意はなくならないのかもしれない。



アリスは、屋敷の中にいながらにして、計算する。

誰一人、犠牲を出さないために。
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