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新章 溺愛編

内紛

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「これは…。」


ラメール王子は息を呑んだ。


誘われた商会の地下は、広い空間になっており、黒いローブを着た男たちが、何千人もびっしりと並んでいる。



「王家に力が必要だったのは、海の魔物から国を守るため。神の代行者だったからだ。だから、私も家族から別れ、排斥されても受け入れた。本意ではなかったがね。だが今は違う!神は死に、魔物の驚異もさほどではない!」


王家に必要なのは、力ではなく、民を束ねる力だと、そうは思われませんか?



商会の主は嗤う。


「どうか、あなたがこの国を変えてほしい。私たちはあなたについていきます。あなたこそ、王。」


主に差し出された手を、ラメールはとった。








「アリス!」「アリス様!」



「アリス、それじゃあ僕行くね。」


「ありがとう、ザオラル。お母様たちを頼んだよ。」

夜のうちにザオラルに乗って、秘密裏にアリスはサウス王国入りをした。



「まだなんか動きはない?」


「予兆はあるが、これからかもしれない。レッドキングダムから斥候が来て、情報は入れてもらってる。」


そちらの王太子は『残念』だが、陛下は素晴らしくできる方のようだ。



「ロメオ王子、お母さまから伝言と、渡されたものがある。」


アリスは箱を王子に渡し、耳打ちをした。

王子は、クスリと笑う。「さすがだな。お前のお母さまも予言ができるのかな。」


「予言というより、経験則じゃないかと思うな。」


「お前は公爵似だとばかり思っていたが、二人からそれぞれ似ていたんだな。」


さて、やることができた。








いいですか、王子。王家転覆にまず邪魔なのは、ロメオ王子です。
余計な未来を見る前に、ロメオ王子を攫って拘束しましょう。


主を連れて、久しぶりに城へ戻る。


「ラメール。カメオ!」

太陽のような、人好きのする笑顔。


「お兄様、話があるんだ。相談に乗ってくれないか?」


お兄様を庭園に連れ出す。

茂みから主の仲間が出て、お兄様の背後で静かに刃を向けた。

周りにも、仲間が潜んでいる。
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