【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

新章 溺愛編

閑話 改変前の未来２

雨が降っている。


やまない。



強くて美しかった母は、もういない。



お父様は、いつまでもいつまでも、お墓の前から動こうとしなかった。



生まれたばかりの弟は、母のことを知らない。

幼いジュリエッタだって、母の記憶など残らないだろう。







僕が、お前たちを守ってあげるからね。


お母さまの分まで、僕が愛情を注いであげる。







王太子夫妻も、お葬式で泣き崩れていた。


私たちが、わがままを言わなければ。
甘えなければ。







遅いんだよ。



どんなに後悔しても、泣いてもわめいても、お母さまは帰ってこない。




犯人は、見つからない。






お母さまのお墓に添える花を買いに行く。


お母さまは花が好きだったから、毎日花を交換しよう。


お墓の周りに、いい香りのする美しい花を植えてもいいかもしれない。




お城の侍女が川に飛び込んで死んだらしい。


お母さまが死んだことを知って、金切り声のような叫び声をあげていたそうだ。



その前から、だいぶ挙動がおかしかったらしいから、お母さまを後追いしたのかもしれないと言われていた。

学生時代、彼女はお母さまにラブレターを渡したこともあるらしかった。




どうでもいい。






お父様も壊れてしまった。




弟に母の名前をつけて、片時も離さず、ずっと話しかけている。


弟は、きっと父親に一生母の代わりのように扱われるのだ。

それで、父は生きていけるだろうけれど。


弟を不憫に思う。





僕はいい王になるよ。


それが、お母さまの願いだからね。


だけど、一生、僕らからお母さまを奪った人たちに、心を許すことはないだろう。