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新章 溺愛編
閑話 改変前の未来
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ジュリエッタを産んで、彼女が1歳になったころ。
クリスはまた、子どもを宿した。
そして6か月後、おなかの子が男児と分かった時、公爵家に王太子夫妻が訪ねてきた。
「王太子…!アンジュ様。ご無沙汰しております。」
王太子の側近でもあるクリスは、礼儀正しく対応する。
王太子夫妻の指示で、アイスとアリスも同席した。
「実は、私たちには子どもができない。おなかの子が男児というのなら、アリスに私の後を継いでほしいと思っている。私たちの養子になる必要はない。そのまま、アリス=クレイソン=レッドキングダムとして。」
「アリス君が王様になっても、おなかの子がいるから、公爵家は困らないでしょう? お願いよ、私。無理をしたり、代理母をお願いしてまで子どもが欲しいわけではないの。だけど、このまま後継がいなかったら、私は、無理に子どもをもたなければならなくなるわ。母親になれる自信もないのよ。」
「僕は…気乗りしません。」
「ごめんなさい、この国には誰か王は必要なの。助けて頂戴。」
結局、アリスは折れて。アイスは父の目論見通りになってしまったと笑って。正式に王家から国民へ発表があった。
『…公爵夫人が男児を孕むから。今はいろんな技術があるのだから、子を持てないなんてことはないはずなのに。あの二人が子を持てないなんておかしい。かわいそうだ。 …そうだ、あっちを排除すればーーーー…。』
そう考えた誰かがいて。
クリスはお茶会の紅茶に毒を盛られて倒れた。
妊娠7か月。大きいお腹を抱えて、ベッドに横になったまま。
肌の色が白くなり、やつれたその姿は痛々しく。
それでも。
アリスによい国王になるよう、言い残して。
アイスに愛と感謝を告げて。
命の代わりに、公爵家の跡取りを産み落とした。
アリスは、母の遺言を守るために生き。
アイスは憔悴した。
「こんなことになるのなら、子どもを持ちたいと願うのではなかった。こういうことに巻き込まれないために、昔は一人でいることを選んでいたのに。欲張ってこうなった。クリスだけが…クリスさえいてくれたら。本当はそれだけでよかったのに…。」
君が、公爵家や王家の存続のために犠牲になることはなかったんだ…。
医師が沐浴させ、抱かせてくれた小さな赤ん坊は、色合いだけは自分に似ていたが、顔立ちはクリスによく似ていた。
アイスは、その子に『クリス』と名付けた。
母を知らない末っ子は、性格も一番母親にそっくりで、愛する妻によく似た娘と、末息子が父親の生きる希望になった。
何も知らないはずなのに、母の遺品を見つけて、剣を2本持ち始めたときは、心臓が止まりそうだった。
もしかしたら、この子は、クリスの生まれ変わりなんじゃないか。
もしかしたら、いつか、前世の記憶を思い出してくれるのではないか。
さすがに自分の息子に欲情するわけではなかったけれど、溺愛する父親は、息子に恋人や婚約者ができることを嫌った。
母親の称号を受け継ぎ、王になった兄を影ながら支えた。
国も領地もうまくまわったけど、みんながどこか、幸せにはなれなかった。
クリスはまた、子どもを宿した。
そして6か月後、おなかの子が男児と分かった時、公爵家に王太子夫妻が訪ねてきた。
「王太子…!アンジュ様。ご無沙汰しております。」
王太子の側近でもあるクリスは、礼儀正しく対応する。
王太子夫妻の指示で、アイスとアリスも同席した。
「実は、私たちには子どもができない。おなかの子が男児というのなら、アリスに私の後を継いでほしいと思っている。私たちの養子になる必要はない。そのまま、アリス=クレイソン=レッドキングダムとして。」
「アリス君が王様になっても、おなかの子がいるから、公爵家は困らないでしょう? お願いよ、私。無理をしたり、代理母をお願いしてまで子どもが欲しいわけではないの。だけど、このまま後継がいなかったら、私は、無理に子どもをもたなければならなくなるわ。母親になれる自信もないのよ。」
「僕は…気乗りしません。」
「ごめんなさい、この国には誰か王は必要なの。助けて頂戴。」
結局、アリスは折れて。アイスは父の目論見通りになってしまったと笑って。正式に王家から国民へ発表があった。
『…公爵夫人が男児を孕むから。今はいろんな技術があるのだから、子を持てないなんてことはないはずなのに。あの二人が子を持てないなんておかしい。かわいそうだ。 …そうだ、あっちを排除すればーーーー…。』
そう考えた誰かがいて。
クリスはお茶会の紅茶に毒を盛られて倒れた。
妊娠7か月。大きいお腹を抱えて、ベッドに横になったまま。
肌の色が白くなり、やつれたその姿は痛々しく。
それでも。
アリスによい国王になるよう、言い残して。
アイスに愛と感謝を告げて。
命の代わりに、公爵家の跡取りを産み落とした。
アリスは、母の遺言を守るために生き。
アイスは憔悴した。
「こんなことになるのなら、子どもを持ちたいと願うのではなかった。こういうことに巻き込まれないために、昔は一人でいることを選んでいたのに。欲張ってこうなった。クリスだけが…クリスさえいてくれたら。本当はそれだけでよかったのに…。」
君が、公爵家や王家の存続のために犠牲になることはなかったんだ…。
医師が沐浴させ、抱かせてくれた小さな赤ん坊は、色合いだけは自分に似ていたが、顔立ちはクリスによく似ていた。
アイスは、その子に『クリス』と名付けた。
母を知らない末っ子は、性格も一番母親にそっくりで、愛する妻によく似た娘と、末息子が父親の生きる希望になった。
何も知らないはずなのに、母の遺品を見つけて、剣を2本持ち始めたときは、心臓が止まりそうだった。
もしかしたら、この子は、クリスの生まれ変わりなんじゃないか。
もしかしたら、いつか、前世の記憶を思い出してくれるのではないか。
さすがに自分の息子に欲情するわけではなかったけれど、溺愛する父親は、息子に恋人や婚約者ができることを嫌った。
母親の称号を受け継ぎ、王になった兄を影ながら支えた。
国も領地もうまくまわったけど、みんながどこか、幸せにはなれなかった。
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