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新章 溺愛編
東の国の大狒々退治
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狒々は、あの山をねぐらにしてるらしい。
ジャホンの中央にそびえ立つ紅葉山に入ると、大きな獣が食事をした後や、足跡などが見えた。
本当は、餌でおびき寄せた方がいいのは分かるけれど、住民への被害リスクが高すぎて、寝静まっているこの時間に自分から来たのだ。
痕跡を探っていくと、
「…いた。」
大きな狒々が2体。
あれはもはやモンスターなのではないだろうか。
僕は、狒々の様子を木の上から見た。
一体ずつ、倒したい。
登っている木の枝についている実を少しもらい、するすると降りると、狒々に見えないように気を付けながら、位置を取る。
「わん、わんわん。」
犬の鳴きまねをして注意をひいて、1匹の狒々の見ている方向に木の実を転がした。
ーーーーーーーーータケルの憂いを晴らさせてもらおう。
僕は、誘い出した狒々が木の実に気を取られている一瞬をついて、背後から首を斬り落とした。
「ギイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!」
断末魔の叫びに、もう一匹が駆けつける。
「来い!」
剣を構え、狒々を待つ。
僕は、『神速』の息子。
お母さまがいなくても、このくらい、倒せる!
「グエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
怒りに我を忘れ、涎を垂らしながら向かってくる自分の10倍はある大きさの狒々。
牙を立てるように突進してくるのを躱し、振りぬいて、斬り捨てた。
あたりには、もう脅威はなくなったのかもしれない。
小さな動物たちが、どこからともなく、出てきた。
普通のサイズの、狒々たちも。
あたりは、狒々たちの血でたまりができ、僕はすっかり血濡れになった。
「アリス様!」
麓へ帰ると、僕の格好を見てタケルが青い顔をしているので、『返り血だよ。僕は一撃も食らっていない。』と言った。
「よかったです。さすがですね。」
うっとりと僕を見つめるタケルの、美しい髪の毛に触れる。
思わず、頬にキスをすると、タケルは真っ赤になった。
結婚前に共寝することは、たとえ何もしなくても、この国の文化ではありえないらしい。
子どもなのに、一人前の男として扱われているのが、なんだかおかしかった。
夜は、寝る時間まで二人で月を見上げ、
お互いの国の話をし、
昼は、手を繋いであちらこちらへ行った。
帰る日が近づいて、タケルが2本の刀を持ってきた。
剣のようなものだけど、ジャホンの剣は形も違うし、刀という。
でもとても美しくて、切れ味が優れている。
細身の刀身と持ち手が、お母さまに向いてそうだなと思って見ていたから。
「こちらは、国一番の刀鍛冶に打ってもらった日本刀です。お母さまにぜひ。」
「ありがとう。」
「迎えに来たよ、アリス。」
帰る日。
白い神獣のオーロラを連れて、ザオラルが降りたつ。
天使のように翼を広げて人の姿になって降り立つザオラルを見て、タケルは『天女のようだ。』と称した。
妻同士も将来、仲良くなってほしい。
僕がそう願うから、ザオラルはルージュともそうだったし、彼ともよい関係を築こうとしてくれているようだ。
「それじゃあ、また、会える時まで。」
頬にキスをして、ジャホンを去る。
ちょっと、ザオラルがやきもちを焼いているから、帰ったらたくさん一緒にいよう。
ジャホンの中央にそびえ立つ紅葉山に入ると、大きな獣が食事をした後や、足跡などが見えた。
本当は、餌でおびき寄せた方がいいのは分かるけれど、住民への被害リスクが高すぎて、寝静まっているこの時間に自分から来たのだ。
痕跡を探っていくと、
「…いた。」
大きな狒々が2体。
あれはもはやモンスターなのではないだろうか。
僕は、狒々の様子を木の上から見た。
一体ずつ、倒したい。
登っている木の枝についている実を少しもらい、するすると降りると、狒々に見えないように気を付けながら、位置を取る。
「わん、わんわん。」
犬の鳴きまねをして注意をひいて、1匹の狒々の見ている方向に木の実を転がした。
ーーーーーーーーータケルの憂いを晴らさせてもらおう。
僕は、誘い出した狒々が木の実に気を取られている一瞬をついて、背後から首を斬り落とした。
「ギイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!」
断末魔の叫びに、もう一匹が駆けつける。
「来い!」
剣を構え、狒々を待つ。
僕は、『神速』の息子。
お母さまがいなくても、このくらい、倒せる!
「グエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
怒りに我を忘れ、涎を垂らしながら向かってくる自分の10倍はある大きさの狒々。
牙を立てるように突進してくるのを躱し、振りぬいて、斬り捨てた。
あたりには、もう脅威はなくなったのかもしれない。
小さな動物たちが、どこからともなく、出てきた。
普通のサイズの、狒々たちも。
あたりは、狒々たちの血でたまりができ、僕はすっかり血濡れになった。
「アリス様!」
麓へ帰ると、僕の格好を見てタケルが青い顔をしているので、『返り血だよ。僕は一撃も食らっていない。』と言った。
「よかったです。さすがですね。」
うっとりと僕を見つめるタケルの、美しい髪の毛に触れる。
思わず、頬にキスをすると、タケルは真っ赤になった。
結婚前に共寝することは、たとえ何もしなくても、この国の文化ではありえないらしい。
子どもなのに、一人前の男として扱われているのが、なんだかおかしかった。
夜は、寝る時間まで二人で月を見上げ、
お互いの国の話をし、
昼は、手を繋いであちらこちらへ行った。
帰る日が近づいて、タケルが2本の刀を持ってきた。
剣のようなものだけど、ジャホンの剣は形も違うし、刀という。
でもとても美しくて、切れ味が優れている。
細身の刀身と持ち手が、お母さまに向いてそうだなと思って見ていたから。
「こちらは、国一番の刀鍛冶に打ってもらった日本刀です。お母さまにぜひ。」
「ありがとう。」
「迎えに来たよ、アリス。」
帰る日。
白い神獣のオーロラを連れて、ザオラルが降りたつ。
天使のように翼を広げて人の姿になって降り立つザオラルを見て、タケルは『天女のようだ。』と称した。
妻同士も将来、仲良くなってほしい。
僕がそう願うから、ザオラルはルージュともそうだったし、彼ともよい関係を築こうとしてくれているようだ。
「それじゃあ、また、会える時まで。」
頬にキスをして、ジャホンを去る。
ちょっと、ザオラルがやきもちを焼いているから、帰ったらたくさん一緒にいよう。
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