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本編
おじいさま 後編
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大好きだったお父様は、お母様が亡くなって変わってしまった。
みんなを守ることだけを考えて、カッコいいお父様がいなくなって、人付き合いを盛んにするようになり、
あまり好きではない人も交流したり、駆け引き?みたいなことをするようになって。
本音で話せない、貴族のそういうやり方が。どうも私には好きになれなくて。
どんなにいい家柄の人だろうが、そういう窮屈なところへお嫁に行くのは嫌だなと思いながら、学園へ入学する年齢になった。
このまま、好きでもない人と結婚して、窮屈に思いながら一生を終えるのかしら。
そう思ってた時、カリスに会った。
カリスは、あまり周りを気にしない人だった。
カリスのお家は領地に鉱山があり、資源狙いでいろんな人たちに騙されて、借金を負わされ、資産を奪われるところだったそうだが、ご両親が死に物狂いで完済して、事なきを得たのだそう。
でも、その無理がたたって、ご両親は亡くなって。
その経験から、「欲は出さない。」「生きていくのに支障がなければそれでいい。」「とにかく甘い話なんかどうでもいい。冒険しない。」と思うようになったとのことだった。
カリスと一緒にいるときは、無理のない私でいることができた。
だから、私からそそのかして、駆け落ちしてもらった。
お父様に別れも告げずそれっきり。勘当されて、それっきり。
「聞いてどうするのですか?お父様。 もう、私とお父様は赤の他人のはずですが。」
お母さまの目つきは、いつになく厳しい。つんつん、そっぽを向いている。
「コルネット。それに公爵様。社交界で噂になっているのですよ。王位継承権を持つ、公爵の息子の母親は何者か?
容貌がアッシュフォード男爵夫人にそっくりだ、身内かもしれない。誰だ?とね。」
アリスが1歳のお披露目までは、黙っているつもりだったのに。
もしかしたら、その前にバレるかもしれないってこと?
「大体、赤の他人というが、それほどカリス君がいいのなら、駆け落ちなどせず私に相談してくれれば、認めたんだ! 私の爵位を譲ってもよかったんだし。それをお前が突っ走るから、勘当なんて体をとらなければならなくなったのではないか!」
「えっ。」お母さまが目を丸くする。お父様もびっくりだ。俺たち家族は置いてけぼりだ。
「私は、母親の分までお前を幸せにしようと、良い結婚をさせるために頑張ってただけで。お前がその男といるのが幸せだというのなら、全力で応援したとも! 社交も駆け引きもお前の結婚のためだったから、お前が駆け落ちしたときに、全部付き合いは切ったしな! お前はそれが嫌だったんだろう!?」
「あっ…え… うーん。」お母さまはものすごく、居たたまれないらしい。
「おかげで私は、かわいい孫にも会えなかったんだぞ!」
「えっと…。お義父さん。 すみません。」
シュッツ。
おじいさまが剣をお父様に向ける。お父様がシュッとかわす。
「カリス君もカリス君だ!一発殴らせろ!」
「イヤです!」
おお、達人ぽいおじいさまの攻撃を全部よけきるとは。わが父もやるようだ。
俺って、もしかして二人に似て、目が良くて剣が得意なのだろうか。
「まあまあ。これで長い誤解も解けたようですし、これからは仲良くいきませんか。」
アイスがにこやかにおさめてくれて、ほっとした。
腕の中で、アリスは寝ちゃった。
ハロウィンのごはんを食べながら、みんなでお話。
俺は、アリスを膝に抱いて、離乳食のカボチャをもぐもぐさせながら、話を聞いている。
おじいさまは、アリスの出生を聞いて、驚いていたけど、頭を抱えていた。
「なるほど…。そういうことなら、実子であることをみなに理解してもらうために、確かに公表時期は注意した方がよいですな。両派閥の長が味方なのは大きい。」
まずは、マシューさんに同性でも子どもを持てる技術の公表をしてもらって、
それから発表がよいということになった。
きちんとみんなが理解していないままだと、アリスはお母さまとアイスの子なのではないかとか、アイスの子じゃないのではないかとか、そういう疑念を持たれてしまうんだって。
確かにそうかもなあ。
「もし、王位継承権のある子の母親が男爵家の人間だったということで、問題が起きるなら、我が家を利用するといい。クリスを私の養子にしてもいいし。丁度、辺境伯の爵位の方が、陛下預かりのまま引き取り手がなくて保留になっているから、そっちをやってもいい。私が言えば、すぐクリスに爵位が行くはずだ。腕前も問題ないし、だれからも文句は出んだろう。」
力になるから、と言ってくれて。
これからは、遊びに来てくれるらしくて。
そうして、おじいさまは帰っていった。
「ふーーーーー。なんか、疲れたね。」
パーティが終わって、俺たちは夫婦の寝室で寛ぐ。
離乳食を食べるようになったアリスは、夜中に授乳の必要がなくなったので、俺たちの寝室にベッドを移した。
アリスの寝顔を見ていると、なんだか幸せな気持ちになれる。
「でもなんか、クリスのおじい様らしい方だったな。あの方、昔は『閃光のタクト』と呼ばれた猛将だったそうだよ。」
「へえ…。」
俺のことならなんでも知っているクリスのことだから、きっと、俺と結婚したときから、おじいさまのことも知ってたんだろうな。
「ところで、可愛い子猫ちゃん? えっちをさせてくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!」
忘れてた! 俺、猫耳メイドの格好のままだ!
ていうか、それってどっちにしたって、エッチなことをするんじゃないか!
みんなを守ることだけを考えて、カッコいいお父様がいなくなって、人付き合いを盛んにするようになり、
あまり好きではない人も交流したり、駆け引き?みたいなことをするようになって。
本音で話せない、貴族のそういうやり方が。どうも私には好きになれなくて。
どんなにいい家柄の人だろうが、そういう窮屈なところへお嫁に行くのは嫌だなと思いながら、学園へ入学する年齢になった。
このまま、好きでもない人と結婚して、窮屈に思いながら一生を終えるのかしら。
そう思ってた時、カリスに会った。
カリスは、あまり周りを気にしない人だった。
カリスのお家は領地に鉱山があり、資源狙いでいろんな人たちに騙されて、借金を負わされ、資産を奪われるところだったそうだが、ご両親が死に物狂いで完済して、事なきを得たのだそう。
でも、その無理がたたって、ご両親は亡くなって。
その経験から、「欲は出さない。」「生きていくのに支障がなければそれでいい。」「とにかく甘い話なんかどうでもいい。冒険しない。」と思うようになったとのことだった。
カリスと一緒にいるときは、無理のない私でいることができた。
だから、私からそそのかして、駆け落ちしてもらった。
お父様に別れも告げずそれっきり。勘当されて、それっきり。
「聞いてどうするのですか?お父様。 もう、私とお父様は赤の他人のはずですが。」
お母さまの目つきは、いつになく厳しい。つんつん、そっぽを向いている。
「コルネット。それに公爵様。社交界で噂になっているのですよ。王位継承権を持つ、公爵の息子の母親は何者か?
容貌がアッシュフォード男爵夫人にそっくりだ、身内かもしれない。誰だ?とね。」
アリスが1歳のお披露目までは、黙っているつもりだったのに。
もしかしたら、その前にバレるかもしれないってこと?
「大体、赤の他人というが、それほどカリス君がいいのなら、駆け落ちなどせず私に相談してくれれば、認めたんだ! 私の爵位を譲ってもよかったんだし。それをお前が突っ走るから、勘当なんて体をとらなければならなくなったのではないか!」
「えっ。」お母さまが目を丸くする。お父様もびっくりだ。俺たち家族は置いてけぼりだ。
「私は、母親の分までお前を幸せにしようと、良い結婚をさせるために頑張ってただけで。お前がその男といるのが幸せだというのなら、全力で応援したとも! 社交も駆け引きもお前の結婚のためだったから、お前が駆け落ちしたときに、全部付き合いは切ったしな! お前はそれが嫌だったんだろう!?」
「あっ…え… うーん。」お母さまはものすごく、居たたまれないらしい。
「おかげで私は、かわいい孫にも会えなかったんだぞ!」
「えっと…。お義父さん。 すみません。」
シュッツ。
おじいさまが剣をお父様に向ける。お父様がシュッとかわす。
「カリス君もカリス君だ!一発殴らせろ!」
「イヤです!」
おお、達人ぽいおじいさまの攻撃を全部よけきるとは。わが父もやるようだ。
俺って、もしかして二人に似て、目が良くて剣が得意なのだろうか。
「まあまあ。これで長い誤解も解けたようですし、これからは仲良くいきませんか。」
アイスがにこやかにおさめてくれて、ほっとした。
腕の中で、アリスは寝ちゃった。
ハロウィンのごはんを食べながら、みんなでお話。
俺は、アリスを膝に抱いて、離乳食のカボチャをもぐもぐさせながら、話を聞いている。
おじいさまは、アリスの出生を聞いて、驚いていたけど、頭を抱えていた。
「なるほど…。そういうことなら、実子であることをみなに理解してもらうために、確かに公表時期は注意した方がよいですな。両派閥の長が味方なのは大きい。」
まずは、マシューさんに同性でも子どもを持てる技術の公表をしてもらって、
それから発表がよいということになった。
きちんとみんなが理解していないままだと、アリスはお母さまとアイスの子なのではないかとか、アイスの子じゃないのではないかとか、そういう疑念を持たれてしまうんだって。
確かにそうかもなあ。
「もし、王位継承権のある子の母親が男爵家の人間だったということで、問題が起きるなら、我が家を利用するといい。クリスを私の養子にしてもいいし。丁度、辺境伯の爵位の方が、陛下預かりのまま引き取り手がなくて保留になっているから、そっちをやってもいい。私が言えば、すぐクリスに爵位が行くはずだ。腕前も問題ないし、だれからも文句は出んだろう。」
力になるから、と言ってくれて。
これからは、遊びに来てくれるらしくて。
そうして、おじいさまは帰っていった。
「ふーーーーー。なんか、疲れたね。」
パーティが終わって、俺たちは夫婦の寝室で寛ぐ。
離乳食を食べるようになったアリスは、夜中に授乳の必要がなくなったので、俺たちの寝室にベッドを移した。
アリスの寝顔を見ていると、なんだか幸せな気持ちになれる。
「でもなんか、クリスのおじい様らしい方だったな。あの方、昔は『閃光のタクト』と呼ばれた猛将だったそうだよ。」
「へえ…。」
俺のことならなんでも知っているクリスのことだから、きっと、俺と結婚したときから、おじいさまのことも知ってたんだろうな。
「ところで、可愛い子猫ちゃん? えっちをさせてくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!」
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