【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

本編

父と子

「クリス様なら、すごい剣幕で剣持って飛び出して行かれました。」

よほど恥ずかしかったらしく、いつの間にか姿が見えなくなったので、家令に聞くと、そう言われた。

いじめ過ぎたかもしれない。

だが、今日は非番。
剣持ってどこへ行ったのやら。

「心配することはないですよ。」


振り返ると、クリスの父親がいた。

「きっと、騎士団にも行けないなら冒険者ギルドでしょう。」

「あの子はむしゃくしゃすると、剣で暴れたがるので。
適当にクエストで暴れたら、ギルドの酒場で酒とたばこでも煽ると思います。
それで一人で解消させて、帰ってきますから。」

タバコも吸うのか。
知らなかった。


クリスの母親はマシューと行ってしまったし、彼も暇だろう。

クリスの話を肴に父子の語らいをすることとしよう。




ああ、もう!
俺は久しぶりに冒険者ギルドの門を叩いた。

騎士団に入ったけど、資格は維持している。

「あら、久しぶり!　クリス。」

受付嬢兼酒場のウエイトレスのジェシーが人懐っこい笑顔で迎えてくれた。

「なんか、いいクエストない?　近所で、なんか強すぎて持て余してるやつ!」

「助かるわあ。それなら、西の森の村に真っ黒な魔獣が沸いて困ってるらしいから、倒してきてくれると助かるわ。」

冒険者が向かったけど、村人を逃がすので限界だったの。

話を全部聞かずに飛び出して、村へ行くと、ケルベロスが３０匹くらい群れていた。

「アイスのバカ!」
「アイスの変態!」

怒りをケルベロスにぶつける。

５分くらいで終わってしまった。


くそ!



「アイスのばかあ…。」

ギルドに戻ってクエスト完了させて、酒場で酒を飲む。

軽いタバコは一本だけ吸って、机に突っ伏してくだを巻いた。

スッと隣に誰か来た。
ローブで顔を隠したアイス。

「迎えに来たよ。」

優しくキスをされる。

「うん…。」


会計して、クリスと家に帰る。


手をつないで、夜道を歩く。


子どもが生まれたら、この間に子どもがいるのかな。

月明かりに照らされた影を見て、
ふんわりした気持ちになった。