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本編
お前は違う
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アイスが遠馬をしたいというので、珍しいと思いながら手配をした。
ともに領地の端にある湖まである丘まで駆け、風に揺れて露わになった俺の傷痕を、痛ましげに撫でる。
「クリスには似合わない。私が治してやろうか? 薬はすぐ作れると思うが。」
嬉しい言葉かもしれないが、いいんだ。
「アイスとの思い出だから、消さなくていい。俺は気にしてないし。」
家に帰って、部屋で剣の手入れをする。
「熱心だな。」
「手入れしないと、切れ味が悪くなるんだ。」
二人で死ぬのに、切れ味が悪くて死ねなかったら困るだろ?
刃をアイスの首にあてる。
お前はアイスじゃない!
「なぜ、分かった…。」
「アイスは俺の傷痕を愛おしそうに撫でる。自分のせいでついた傷痕だから。」
涙がこぼれる。
アイスのうそつき!
「私ではだめか? 私の方が優しかっただろう? 床の相手も強いなかったし…。私の方がクリスを大切にできると思う。」
「アイスは変態だし、俺にたまにひどいこともするけど、俺は、アイスが良いんだ!」
そうか、と。
魔王のはずのそいつは、俺の前に立った。
「どうぞ。刺すといい。」
向かい合って、剣を持つ。
手が震えて、剣の落ちる金属音が響いた。
アイスじゃない、けど、アイスなんだ。
なんで、こんなに優しいんだ。
出来ると思ってたのに。
俺はアイスを殺せない。
「帰って来いよ! アイス!! 俺を大切にするんだろ?」
暗闇。
私は再び対峙する。
『ほう、私の中に完全に溶けたと思ったが。浮上したか。』
「かわいい奥さんをいつまでも泣かせているわけにはいかないさ。」
ともに領地の端にある湖まである丘まで駆け、風に揺れて露わになった俺の傷痕を、痛ましげに撫でる。
「クリスには似合わない。私が治してやろうか? 薬はすぐ作れると思うが。」
嬉しい言葉かもしれないが、いいんだ。
「アイスとの思い出だから、消さなくていい。俺は気にしてないし。」
家に帰って、部屋で剣の手入れをする。
「熱心だな。」
「手入れしないと、切れ味が悪くなるんだ。」
二人で死ぬのに、切れ味が悪くて死ねなかったら困るだろ?
刃をアイスの首にあてる。
お前はアイスじゃない!
「なぜ、分かった…。」
「アイスは俺の傷痕を愛おしそうに撫でる。自分のせいでついた傷痕だから。」
涙がこぼれる。
アイスのうそつき!
「私ではだめか? 私の方が優しかっただろう? 床の相手も強いなかったし…。私の方がクリスを大切にできると思う。」
「アイスは変態だし、俺にたまにひどいこともするけど、俺は、アイスが良いんだ!」
そうか、と。
魔王のはずのそいつは、俺の前に立った。
「どうぞ。刺すといい。」
向かい合って、剣を持つ。
手が震えて、剣の落ちる金属音が響いた。
アイスじゃない、けど、アイスなんだ。
なんで、こんなに優しいんだ。
出来ると思ってたのに。
俺はアイスを殺せない。
「帰って来いよ! アイス!! 俺を大切にするんだろ?」
暗闇。
私は再び対峙する。
『ほう、私の中に完全に溶けたと思ったが。浮上したか。』
「かわいい奥さんをいつまでも泣かせているわけにはいかないさ。」
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