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本編
聖なる夜
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外は雪。
屋敷には、大きなツリーと、ピカピカした鈴を飾って。
真っ赤なビロードのリボンであちこちを結んだ。
騎士団の仕事の合間に準備をして、今日は結婚して初めてのクリスマス。
騎士団の団長夫妻、騎士団の仲間、キャサリンとアレクサンドラ、国王一家に領地から教会と教会で保護している子ども達に来てもらった。
俺はクリスティーヌで参加するから実家は呼んでいない。
そのかわり、前もって挨拶に行って、プレゼントを置いてきた。
教会で育てている放し飼いの筋肉質な鶏を使ったメニューに、子ども達の賛美歌。
領地で採れた野菜と魚のテリーヌ。
デザートにはシャンパンの入ったゼリーを砕いたものに、食用花のシロップ漬けをの花びらを散らした。
「クリスティーヌ様、さすがですわ! この鶏のお肉、今まで食べたことがないですわ!
どうしてこんなにぷりぷりしてますの?」
キャサリンが、お肉に感動してくれてる。
よかったぁ。特別な育て方をしてるから、おいしいんだ。
教会産ブランドを広めてもらおう。
卵も濃厚だから、オムレツもおいしいよ!と売り込んでおく。
俺とアイスはホストだから、せわしい。
陛下が連れてきた王子は、騎士団長のお嬢さんにつきまとってて、危なっかしくて、すごいスピードで会場を行ったり来たりして、お嬢さんにごはんを取ってこようとするから、途中で止めて、危ないからやめなさいって言ったり。
お嬢さんとお話している教会の子どもに意地悪をしようとしたりするので、陛下と団長が王子を確保するまで、気が気でなかった。
あれは、将来側近とか世話係になるやつは苦労するな。
やっと一息ついた頃、窓際にいるアイスに呼び出された。
「きれいな雪だね。」
「うん。こんなにゆっくりした気持ちで雪見るの初めてかも。」
外を眺めていると、アイスの顔が急に近づいてきて、口づけされる。
「!!!」
みんな見てるのにっっ!と真っ赤になると、アイスが指を上に向けた。
やどりぎ・・・・
確かこれの下にいる人にはキスしていいんだったっけ。
いつのまにこんなの仕掛けたんだ…。もう。
俺は、そっと、アイスに包みを押し付けた。
「じゃ、アイス、俺、子どもたちにプレゼント配ってくるから!」
恥ずかしいから、さっと立ち去る。
うちの恥ずかしがりやの奥さんが、渡してくれたのは、真っ白な糸で刺繍された、白いハンカチだった。
クリスはなんでもこなすけど、刺繍をしているのは見たことがない。
見ると、離れたところでキャサリンとアレクサンドラに囲まれて、楽しそうにおしゃべりしていた。
私と目が合って、また、真っ赤になっているのが可愛い。
きっと、今日のために二人に習ったんだろう。
クリスは、たまに、普通に夫人らしいことをしようとしてくれる。
クリスはそのままでいいのに。
でも、その気持ちも、うれしい。
ゲストが帰ったら、夫婦の時間。
ベッドルームにワインを運ばせ、軽いつまみで飲み交わして、そのままベッドになだれ込んだ。
ーーーーーーーー夢、だろうか。
闇の中で、黒いものが私を覆いつくそうとしている。
なんだろう。
そういえば、昔から、定期的に見るような。
最初は小さな黒いしみだった。
年を数えるごとに、広く、深く、なっていく。
時々、アイスは夢にうなされている。
父親があんなんで、最初に会った時も殺されかけてたんだから、トラウマがあるのかも。
「大丈夫だよ、アイス。俺がそばにいるから。」
口づけをして、抱きしめると、呼吸が落ち着くので、安心した。
暗闇に、それはいる。
深層の中で、低く、鈍く呼ぶ声がする。
ーーーーーーーアイス、早く私と同化するのだ。
お前の父親と私は、お前が生まれたときに契約した。
魔王の顕現は近い…。
屋敷には、大きなツリーと、ピカピカした鈴を飾って。
真っ赤なビロードのリボンであちこちを結んだ。
騎士団の仕事の合間に準備をして、今日は結婚して初めてのクリスマス。
騎士団の団長夫妻、騎士団の仲間、キャサリンとアレクサンドラ、国王一家に領地から教会と教会で保護している子ども達に来てもらった。
俺はクリスティーヌで参加するから実家は呼んでいない。
そのかわり、前もって挨拶に行って、プレゼントを置いてきた。
教会で育てている放し飼いの筋肉質な鶏を使ったメニューに、子ども達の賛美歌。
領地で採れた野菜と魚のテリーヌ。
デザートにはシャンパンの入ったゼリーを砕いたものに、食用花のシロップ漬けをの花びらを散らした。
「クリスティーヌ様、さすがですわ! この鶏のお肉、今まで食べたことがないですわ!
どうしてこんなにぷりぷりしてますの?」
キャサリンが、お肉に感動してくれてる。
よかったぁ。特別な育て方をしてるから、おいしいんだ。
教会産ブランドを広めてもらおう。
卵も濃厚だから、オムレツもおいしいよ!と売り込んでおく。
俺とアイスはホストだから、せわしい。
陛下が連れてきた王子は、騎士団長のお嬢さんにつきまとってて、危なっかしくて、すごいスピードで会場を行ったり来たりして、お嬢さんにごはんを取ってこようとするから、途中で止めて、危ないからやめなさいって言ったり。
お嬢さんとお話している教会の子どもに意地悪をしようとしたりするので、陛下と団長が王子を確保するまで、気が気でなかった。
あれは、将来側近とか世話係になるやつは苦労するな。
やっと一息ついた頃、窓際にいるアイスに呼び出された。
「きれいな雪だね。」
「うん。こんなにゆっくりした気持ちで雪見るの初めてかも。」
外を眺めていると、アイスの顔が急に近づいてきて、口づけされる。
「!!!」
みんな見てるのにっっ!と真っ赤になると、アイスが指を上に向けた。
やどりぎ・・・・
確かこれの下にいる人にはキスしていいんだったっけ。
いつのまにこんなの仕掛けたんだ…。もう。
俺は、そっと、アイスに包みを押し付けた。
「じゃ、アイス、俺、子どもたちにプレゼント配ってくるから!」
恥ずかしいから、さっと立ち去る。
うちの恥ずかしがりやの奥さんが、渡してくれたのは、真っ白な糸で刺繍された、白いハンカチだった。
クリスはなんでもこなすけど、刺繍をしているのは見たことがない。
見ると、離れたところでキャサリンとアレクサンドラに囲まれて、楽しそうにおしゃべりしていた。
私と目が合って、また、真っ赤になっているのが可愛い。
きっと、今日のために二人に習ったんだろう。
クリスは、たまに、普通に夫人らしいことをしようとしてくれる。
クリスはそのままでいいのに。
でも、その気持ちも、うれしい。
ゲストが帰ったら、夫婦の時間。
ベッドルームにワインを運ばせ、軽いつまみで飲み交わして、そのままベッドになだれ込んだ。
ーーーーーーーー夢、だろうか。
闇の中で、黒いものが私を覆いつくそうとしている。
なんだろう。
そういえば、昔から、定期的に見るような。
最初は小さな黒いしみだった。
年を数えるごとに、広く、深く、なっていく。
時々、アイスは夢にうなされている。
父親があんなんで、最初に会った時も殺されかけてたんだから、トラウマがあるのかも。
「大丈夫だよ、アイス。俺がそばにいるから。」
口づけをして、抱きしめると、呼吸が落ち着くので、安心した。
暗闇に、それはいる。
深層の中で、低く、鈍く呼ぶ声がする。
ーーーーーーーアイス、早く私と同化するのだ。
お前の父親と私は、お前が生まれたときに契約した。
魔王の顕現は近い…。
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