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番外編3 アッシュフォード家
兄
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俺はキリス=アッシュフォード。
アッシュフォード男爵家の長男だ。
4つ下の弟は、本当に可愛くて。
幼い頃、何をするにも俺の真似をして、後からちょこちょこついてくる様子が、たまらなかった。
弟のすぐ下の妹の方は全く可愛く思えなかったのだが。
なんでそんなに、早くから勉強も剣も頑張ろうとするのか聞くと、
『ぼくはおとうとだから、しょうらいいえをでてもだいじょうぶにしたいの!
おにいさまのやくにたつりっぱなひとになりたいから。』
と言われて、健気さに愛おしく感じた。
だが、時が経つに連れ、弟の優秀さが目立ち始めると、親戚は影で弟を跡取りにすべきではないかと両親に進言するし、己の凡人さに俺は卑屈になり、弟と距離を置き始めた。
弟にきた高位貴族からの婿養子の話を両親が全部断っているのを知って、両親は本当にあいつに継がすつもりだと、嫉妬の塊のようになった。
全く醜い。
「手が止まっているよ、キリス君。」
義理の弟になったクレイソン公爵が俺をたしなめる。
俺は、クリスが騎士団にでかけている間に、公爵家で領地経営の手ほどきを受けていた。
「…出来が悪くてすみませんね。」
また、卑屈になってしまう。
付き合わされている公爵は、呆れているに違いない。
「悪くはないと思うが。平均的なだけだろう。」
弟が公爵の妻になってしまったのだから、俺が跡取りとして頑張らねば。
弟の方がよかったと言われたくない。
ーーー公爵の妻の実家として、恥ずかしくないようになりたい。
「人と比べるな。領主は自分自身が天才である必要はない。」
若くして家を継いだ公爵は、俺に言った。
当たり前のことができればそれでいいし、もっとよくまわしたいなら、自分でできなければ、人を使えばいいんだ。
大事なのは、人の気持ちを分かり、物事を見極め、選択できる力だよ。
じっと公爵を見る。
弟は、よい夫をもったらしい。
「大事な弟なので、あなたが夫でよかった。俺はろくでもない兄だったので、いっぱいあいつを傷つけたでしょう。
あまり、これまで幸せでなかったかもしれないので、今までの分もどうか幸せにしてやってください。」
お礼を言うと、目を丸くして。
大事な弟だというなら、もっとそのようにクリスに接してやればいいのに。
と困ったような顔をされた。
今更、そんなの、難しいじゃないか。
今日も数時間、滞在してクリスの兄は帰っていった。
兄弟仲はあまりよくないと聞いていたし、あまりよい評判を聞いていなかったが、クリスの実家のためと受け入れて、領地経営のノウハウを教えてやっていた。
まあこれは、クリスには内緒だ。
黒髪によくある青い目の彼は、わずかにクリスと似たところもあるが、男らしい顔立ちで、おそらく父親似なのだろう。
ごくごく、平凡な男だった。
でも、ほのかに見せる弟への想いを隠しきれず、つついてやると、ツンツンしているところが、そっくりだなぁ、やはり血がつながってるんだなぁと面白い。
元々、仲の良い兄弟だったらしいから、いつかわだかまりが解ければいいのに。
キリスを見送りながら、いつも、そう思う。
アッシュフォード男爵家の長男だ。
4つ下の弟は、本当に可愛くて。
幼い頃、何をするにも俺の真似をして、後からちょこちょこついてくる様子が、たまらなかった。
弟のすぐ下の妹の方は全く可愛く思えなかったのだが。
なんでそんなに、早くから勉強も剣も頑張ろうとするのか聞くと、
『ぼくはおとうとだから、しょうらいいえをでてもだいじょうぶにしたいの!
おにいさまのやくにたつりっぱなひとになりたいから。』
と言われて、健気さに愛おしく感じた。
だが、時が経つに連れ、弟の優秀さが目立ち始めると、親戚は影で弟を跡取りにすべきではないかと両親に進言するし、己の凡人さに俺は卑屈になり、弟と距離を置き始めた。
弟にきた高位貴族からの婿養子の話を両親が全部断っているのを知って、両親は本当にあいつに継がすつもりだと、嫉妬の塊のようになった。
全く醜い。
「手が止まっているよ、キリス君。」
義理の弟になったクレイソン公爵が俺をたしなめる。
俺は、クリスが騎士団にでかけている間に、公爵家で領地経営の手ほどきを受けていた。
「…出来が悪くてすみませんね。」
また、卑屈になってしまう。
付き合わされている公爵は、呆れているに違いない。
「悪くはないと思うが。平均的なだけだろう。」
弟が公爵の妻になってしまったのだから、俺が跡取りとして頑張らねば。
弟の方がよかったと言われたくない。
ーーー公爵の妻の実家として、恥ずかしくないようになりたい。
「人と比べるな。領主は自分自身が天才である必要はない。」
若くして家を継いだ公爵は、俺に言った。
当たり前のことができればそれでいいし、もっとよくまわしたいなら、自分でできなければ、人を使えばいいんだ。
大事なのは、人の気持ちを分かり、物事を見極め、選択できる力だよ。
じっと公爵を見る。
弟は、よい夫をもったらしい。
「大事な弟なので、あなたが夫でよかった。俺はろくでもない兄だったので、いっぱいあいつを傷つけたでしょう。
あまり、これまで幸せでなかったかもしれないので、今までの分もどうか幸せにしてやってください。」
お礼を言うと、目を丸くして。
大事な弟だというなら、もっとそのようにクリスに接してやればいいのに。
と困ったような顔をされた。
今更、そんなの、難しいじゃないか。
今日も数時間、滞在してクリスの兄は帰っていった。
兄弟仲はあまりよくないと聞いていたし、あまりよい評判を聞いていなかったが、クリスの実家のためと受け入れて、領地経営のノウハウを教えてやっていた。
まあこれは、クリスには内緒だ。
黒髪によくある青い目の彼は、わずかにクリスと似たところもあるが、男らしい顔立ちで、おそらく父親似なのだろう。
ごくごく、平凡な男だった。
でも、ほのかに見せる弟への想いを隠しきれず、つついてやると、ツンツンしているところが、そっくりだなぁ、やはり血がつながってるんだなぁと面白い。
元々、仲の良い兄弟だったらしいから、いつかわだかまりが解ければいいのに。
キリスを見送りながら、いつも、そう思う。
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