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宰相とベラ
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「どうして……。どうしてこうなった…!たかが伯爵家のくせに王座についた分不相応な奴らを追い落とそうとして何が悪い!」
宰相一族は同じ牢に入れられた。
入れられてなお、叫ぶ。
奥の方から、夜会の衣装のままで薄汚れた者たちが近寄ってくる。
「私たちは充分権力を持っていたじゃないか!それに飽き足らず、我々に話を持ち掛けて…!話など聞かなければよかった!」
「天使なんていない、伝承なんて嘘、だなんて、そっちの方が大ウソじゃないか!」
「どうしてくれるんだ!お前たちのせいで、私たちはおしまいだ!」
「大体、避妊薬!?毒殺!?王子のすり替えに印象操作だと!?やってることが犯罪じゃないか!いくらなんでもそんなことまでして…!信じられない!グレイシャス殿下が殴りたくなるのも分かる!」
「ああ、まさかそこまでとは思っていなかったのだろう。」
「いくらなんでもあんなに優秀な子の未来をつぶそうとしていただなんて…。本物には教師に扮した侍女が適当にけなして、無能だと思わせていたのよね!?人の親とは思えないわ!殴られて当然よ!」
「そうよ、今時平民でも学校に通わせるっていうのに。学校にも通わせないなんて!」
「うるさい、うるさい、煩い!」
騎士が牢に入ってきて、一人ひとり呼び出す。
宰相を罵る内容と、家宅捜索の結果で企てに無関係、かつ善良な者だと分かった者は釈放され、宰相であるエンドラン公爵家と縁を切り、全く別の家門としてリスタートすることとなり、結果的に、領地の接収あるいは爵位を落とすだけで済んだ。
彼らは、男爵位や子爵位の遠い親戚だった。
多少なりとも関係のある者は、貴族でいられなくなった。
エンドラン公爵家はなくなることになる――――――。
貴族牢から地下牢に移動した後、宰相は死罪となるのであった。
その財産は、不妊に悩む者たちへの治療費に全額あてられることとなる。
一方ベラは―――――――。
父親が親戚に糾弾されていても、全く無視を決め込んだ。
(私の顔が台無しよ…。全くグレイシャス…。ああ、私のかわいい子はエクセレントとスペシャルよ!それなのに…スペシャルがアレの代わりにあの大男の慰み者にされるなんて!なんてことなの!!)
「ねえ、ヘラ。顔が痛いわ。治療師を呼んで頂戴。」
「何を言っているんですか。貴方たちがへまをするからこうなっているんですよ?私だってもうおしまいですよ。私は毒杯をのんでまだ若い身空で生涯を終えるんだわ。むしろお綺麗な顔が台無しになって、少しはせいせいするわ。」
「なっ…!グレイシャスの妃に選んでやった恩も忘れて!」
「こんな結果になったのに、何が恩ですか!」
ヘラは、陛下の食事に毒を盛った実行犯だった。
積極的に加担していたとして毒杯ではなく、もっと痛みを伴うやり方での死罪となった。
最後に残ったベラは、治療も受けさせてもらえず、鼻の形がすっかり変わり、醜い魔女のような姿に変貌していた。
父親が死罪になり、ヘラも死罪になり、前陛下の毒殺や王妃への避妊薬の投与はベラがやっていたこと。
詰めが甘い父親に代わって、殆どベラが自分で考えて実行していたことが明るみになり、ベラは王都を引き回しの上、死罪となることになった。
その引き回しのルートの中で、歓楽街を通りかかった時、一人の身綺麗な女がベラに水をやった。
この人は私に石を投げない―――――――。なんて善良な女だろう。
顔をあげると、それは、産まれたばかりのアレを取り上げた女だった。
「ねえ、私言ったでしょう?あなたは私より酷いことになるわよって…。その通りになったわね。よくも私の可愛い子を粗末に扱ってくれたわね。私は娼婦落ちになるような阿婆擦れだったけど、娼婦としては高級娼婦だったのよ。あの子の父親もそう。あれから、子どもをとられて悲しくて泣いていたらね…。お客様が私と彼を自由にしてくれたのよ。私たちが飼われていたお店を買い取ってね…。番わせて将来有望な娼婦になる娘を産ませようだなんて非人道的なことをする店主をクビにして、私と彼が雇われ店長なの。彼とはいつの間にか本当にそういう仲になって……あの子の弟と妹も産まれて幸せだけど、あなたが私たちにしたことは忘れない。」
ベラはいつの間にかこの女より自分が下になったことを自覚して、発狂した。
宰相一族は同じ牢に入れられた。
入れられてなお、叫ぶ。
奥の方から、夜会の衣装のままで薄汚れた者たちが近寄ってくる。
「私たちは充分権力を持っていたじゃないか!それに飽き足らず、我々に話を持ち掛けて…!話など聞かなければよかった!」
「天使なんていない、伝承なんて嘘、だなんて、そっちの方が大ウソじゃないか!」
「どうしてくれるんだ!お前たちのせいで、私たちはおしまいだ!」
「大体、避妊薬!?毒殺!?王子のすり替えに印象操作だと!?やってることが犯罪じゃないか!いくらなんでもそんなことまでして…!信じられない!グレイシャス殿下が殴りたくなるのも分かる!」
「ああ、まさかそこまでとは思っていなかったのだろう。」
「いくらなんでもあんなに優秀な子の未来をつぶそうとしていただなんて…。本物には教師に扮した侍女が適当にけなして、無能だと思わせていたのよね!?人の親とは思えないわ!殴られて当然よ!」
「そうよ、今時平民でも学校に通わせるっていうのに。学校にも通わせないなんて!」
「うるさい、うるさい、煩い!」
騎士が牢に入ってきて、一人ひとり呼び出す。
宰相を罵る内容と、家宅捜索の結果で企てに無関係、かつ善良な者だと分かった者は釈放され、宰相であるエンドラン公爵家と縁を切り、全く別の家門としてリスタートすることとなり、結果的に、領地の接収あるいは爵位を落とすだけで済んだ。
彼らは、男爵位や子爵位の遠い親戚だった。
多少なりとも関係のある者は、貴族でいられなくなった。
エンドラン公爵家はなくなることになる――――――。
貴族牢から地下牢に移動した後、宰相は死罪となるのであった。
その財産は、不妊に悩む者たちへの治療費に全額あてられることとなる。
一方ベラは―――――――。
父親が親戚に糾弾されていても、全く無視を決め込んだ。
(私の顔が台無しよ…。全くグレイシャス…。ああ、私のかわいい子はエクセレントとスペシャルよ!それなのに…スペシャルがアレの代わりにあの大男の慰み者にされるなんて!なんてことなの!!)
「ねえ、ヘラ。顔が痛いわ。治療師を呼んで頂戴。」
「何を言っているんですか。貴方たちがへまをするからこうなっているんですよ?私だってもうおしまいですよ。私は毒杯をのんでまだ若い身空で生涯を終えるんだわ。むしろお綺麗な顔が台無しになって、少しはせいせいするわ。」
「なっ…!グレイシャスの妃に選んでやった恩も忘れて!」
「こんな結果になったのに、何が恩ですか!」
ヘラは、陛下の食事に毒を盛った実行犯だった。
積極的に加担していたとして毒杯ではなく、もっと痛みを伴うやり方での死罪となった。
最後に残ったベラは、治療も受けさせてもらえず、鼻の形がすっかり変わり、醜い魔女のような姿に変貌していた。
父親が死罪になり、ヘラも死罪になり、前陛下の毒殺や王妃への避妊薬の投与はベラがやっていたこと。
詰めが甘い父親に代わって、殆どベラが自分で考えて実行していたことが明るみになり、ベラは王都を引き回しの上、死罪となることになった。
その引き回しのルートの中で、歓楽街を通りかかった時、一人の身綺麗な女がベラに水をやった。
この人は私に石を投げない―――――――。なんて善良な女だろう。
顔をあげると、それは、産まれたばかりのアレを取り上げた女だった。
「ねえ、私言ったでしょう?あなたは私より酷いことになるわよって…。その通りになったわね。よくも私の可愛い子を粗末に扱ってくれたわね。私は娼婦落ちになるような阿婆擦れだったけど、娼婦としては高級娼婦だったのよ。あの子の父親もそう。あれから、子どもをとられて悲しくて泣いていたらね…。お客様が私と彼を自由にしてくれたのよ。私たちが飼われていたお店を買い取ってね…。番わせて将来有望な娼婦になる娘を産ませようだなんて非人道的なことをする店主をクビにして、私と彼が雇われ店長なの。彼とはいつの間にか本当にそういう仲になって……あの子の弟と妹も産まれて幸せだけど、あなたが私たちにしたことは忘れない。」
ベラはいつの間にかこの女より自分が下になったことを自覚して、発狂した。
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