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長男と孫はまともだった

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「あっ、う、うそ……私のグレイシャスが……。私を殴った…。」
グレイシャスの拳はベラの顔にめり込み、ベラは鼻を折ってしまった。
激痛が走り、多量の血が出るのを、ベラは手で押さえる。


「貴方方はっ!いくら何でも!酷すぎるでしょう!!」

「わたくしは……あなたを王にするために……。あなたのために……。」

「そんなふうにして王座につけても、嬉しくない……。なんでわからないんだ。そんなふうにして王になったところで、余計に虚しく、惨めなだけだ…。正々堂々とレジデューと競いあいたかった。」


「貴方、何をやっているの!どうしてお母さまを!ああ、貴方のお父様は気が触れてしまわれたのだわ。ミラクル、次の王にはあなたが…。」

グレイシャスの妃が自分の王子に声をかける。
ミラクル王子は、全く宰相やベラに似ていない。父親であるグレイシャスや祖父にそっくりの王子だった。

「………お父様がなんで怒ってらっしゃるのか分からない、のですか…?」

「ヘラ、君もか。そうか、君も母の一族だったな…。」




『グレイシャスよ、お前は私に似ている。お前とお前の子はまともでよかった…。』

会場に馬のついていない鉄の馬車が横付けされる。

会場がどよめき、そこから降りた陛下は、偽レジデューに少しだけ支えられて、城に入った。
騎士団と魔法師団が礼をして、陛下の側にマイアとマジーが控える。


ベラはへたりこんだまま涙目で陛下を見上げ、グレイシャスとミラクルは礼をとった。

「陛下、妃とは離縁します。」

「そうか。私も離縁する。だがグレイシャス、暴力はいかんよ?どれだけ腸が煮えくり返っていようとも、適切な手続きを経て、処置をしなければならない。お前は、今でこそ落ち着いて見えるが、子どもの頃は感情的な子だった。精進が足りん。」

「申し訳ございません。」

グレイシャスはミラクルを連れて、人だかりができているレジデューの前へ向かう。


自分と、レジデューと。


この差が、格の差なのだ。

自分は『王の器ではない』。

どんなに必死にやっても、国を豊かにしようと躍起になっても、全くうまくいかなかった。
生産率向上を目指して開発すれば、土地がやせたり、魔物が沸いたり、その後洪水などに悩まされるようになった。

何が悪いのか分からない。


知識が足りない?

知ろうともしなかった。

国民のことをちっとも考えずに、独りよがりで。

手っ取り早い成果を求めた結果。

レジデューならば、どうやっていただろう。


頭脳も、魔法も、剣も、全てにおいて一流の、天使様の婿として認められた彼ならば。



思えば、本物の彼とは会話をしたことがない。

兄弟なのに。


普通に兄弟として育っていたならば、どうなっていただろう。



「レジデュー……。謝っても謝っても…………足りないが、申し訳なかった!」


涙を流して頭を下げる兄に、レジデューの心が震えた。


「私も………兄上ともっと…」




(レジデュー………。)

ミハイルが見守る中、レジデューは兄を抱きしめた。
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