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そして建国祭の日が来た

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「あなた、おいたわしい。でも、これで肩の荷もおりますわ。グレイシャスの戴冠の儀が終わったら、各国の立会人の方々のお相手は早速グレイシャス夫妻に任せて、すぐに療養いたしましょう。空気のおいしいところでのんびりすれば、きっとよくなりますわ。」

ベラ王妃はうっすらと涙を浮かべながら、枯れ木のような夫の手を握る。


「おお陛下おいたわしや。これからは私と殿下たちにお任せくだされ。」

宰相は近衛騎士に合図をして、厚いマントと衣を着せた陛下を、玉座に座らせた。

これから各国の貴人や国内の貴族たちが集まってくる。

戴冠の儀さえ終わってしまえばこちらのもの。
すぐに下がらせて、とどめを刺してしまおう。


「父上、私はまだ至らぬところばかりですが、精いっぱい努めます。あとのことはお任せください。」

グレイシャスはモノも言わない父親に、膝をついて語り掛けた。



仕方なく側妃にした。
仕方なく子どもを作った。

私と、私のスペアとして次を作ったら双子で、あわせて3人の母との子ども。

だが、いつも父は私たちを大事にしてくれているようで、そうではなかった。

レジデューが産まれて、ようやくつかみかけた国王の座を保留にされた。

レジデューにだけは負けたくなかった。

長かった…。


「旦那様、いよいよですわね。」

私の隣に立つ妃はもう30を過ぎ、私には既に学園へ通う年齢の王子がいる。
王子教育は終わっているが、早く王太子教育を施してやりたい。

私は国をよくするために、経済に重きをおく。
新しい産業を興すため、新しい工場をたくさん建てなくては。

そのためには木々も山も切り開いて…。

婿入りしたっきり返事もよこさないレジデュー。

あいつも祭によんでいるから、この機会にきっちり指導しなくては。




「それじゃあ、あとはグレイシャスにお任せするわ。」
息子と息子の妃。そして可愛い孫息子にキスをして、ベラは笑みを浮かべたまま、廊下を急いだ。


アレをついに見つけることができなかった。
きっとどこかでのたれ死んだに違いない。

サバークの陛下にはお詫びをしなければならない…。


急死してしまったのだと詫びをいれようと、招待客を探すためにベラは近衛騎士に指示を出し、パーティの始まりを待った。









「…!?急に空が暗く??」

「なっ!アレは…!!空に巨大なモノが浮かんでいるぞ!あれは大陸……!?ばかな!」

まだ御簾の中に王族が控えているというのに、この厳かな場で招待客が騒ぎ出す。


「一体何ごとなの!?」

騒ぎをかきけすように大音量のファンファーレ。

カーテンが開き、座ったままの無言の陛下をほったらかしにして身を乗り出せば、天窓から見える異常な景色に息を忘れた。
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