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大統領

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「親父入るぜ!」

「まったくお前というやつは。いつまでたってもお転婆で困る。」


周りに側近らしい男たちを侍らせた大統領と思われる男は、ため息をついて机から立ち上がる。

小柄なミハイルの父親とは思えない、がっしりした体躯で身長は私より頭二つ高い…。
2メートルくらいあるのではないだろうか。
目元はミハイルと似ている気がするが、全体的に男らしい。トップに立つにふさわしい威厳。
だが、髪は短めに整えられ、髭も清潔に剃られており、同時に若々しく見える。

しかし………。


不敬にならない程度に全体を視る。

町の中もこの部屋の中もみな髪の色はプラチナブロンドで真珠のような肌だ。
この国の人種の特徴なのだろうな。

「それで?ミハイル、お前には出入国管理を任せていたはずだ。来客を追い返せないでどうする。」

ミハイルと同じピンクペリドットの瞳がぎろりと向けられ、威圧を向けられた。


「親父見ろよ、この髪。目の色!」

「………なるほどな。パラダイス王国を任せた男の色か。だが、王族とはいえこちらに連れ込む必要はあったのか?」

(パラダイス王国の王族の色?………王族は父上たちのような金髪碧眼では…?)

「向こうの王様が命じたんだとさ。俺たちの長の子どものところへ婿入りするようにと。それで気になってちょいちょいと調べてみたらさぁ、こっちが放置しているのをいいことに、正当な後継者じゃない者が国を統べていたんだぜ?それでこの人は国を追い出されたってわけ。帰るところもない状態の正当なを門前払いできないだろう?」

(正当な後継者じゃない…??正当な国の管理者??……何を言っておられるのだろう。)


愕然と思い当たる。

ミハイルは先ほど翼を生やして私を抱え、天上のこの国へ連れてきた。

そういわれれば森で見たあの姿も見ようによっては、その貴き存在の御姿だとも思えないだろうか。

そう、伝承の『天使』…。

天使は布をひっかけた露出度の高い姿だ。そして時には弓や槍など武器を持つ。


「……はぁ。婿入り。一方的で不躾な話だな。取るに足らぬ存在のそしりなどと『蛮族』扱いも見過ごしてきたが…。」

「いいでしょう。俺、この人気に入っちゃった。俺の婿にするよ!」

えっ。


「…あの、ミハイル様、大統領閣下。おっしゃるように不躾な話なのです。ここまで来てしまった以上、私は地上に帰るわけにいきますまいが、皆様の雑用など、奴隷のように扱っていただいても私は構いません!押しかけてきて婿になど…!」
男同士で子はできないのだ。
御嫡男に子ができない…跡取りがもうけられないなどあってはならない!


「レジデューは本当にいい子だね。普通、君みたいに虐げられてきた人だったら相手を憎むなり、悲劇のヒロインの立ち位置に酔って強者にすがるなりするだろうに。ねえ、いいでしょ?俺には伴侶も婚約者も恋人すらいないんだから。」

「……善良な若者だとは思うが!いいのか!彼には……竿のだぞ!?つまり、本当にお前のほうが嫁の立場に…。」

「ルシフル、いいではないですか。よほど彼が気に入ったのでしょう。」
側近らしいそば使いの男のうちの一人が対話に加わった。
ミハイルのように小柄だが、穏やかそうだ。
長いストレートの髪を一くくりにしている。


「ガブル、しかしなあ…。」

「いいじゃないですか。私だって『産む方』に自分がなるとは思っていませんでしたよ!かわいいお嫁さんをもらうのが夢だったのに、そんな私を妻にしてミハイルを産ませたのはあなたでしょうが!」


えっ…。



「レジデュー、俺たちはみんな両性なんだよ。ここには男しかいないし、子どもを産むのは男性ってこと!」

「よろしくね、私はガブル。ミハイルは私が生みました。や〇い穴から。」


「ふふ、嘘から出た真ってね。よろしくね!」

「うちのミハイルをもてあそんだら許さないからな?」

えぇ……。





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