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秘められた才能
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「と、いうことだからよろしくな、レジデュー。」
にかっと笑う彼が可愛らしい。
ぱんぱんと背中を叩かれた。
近い距離間と気安さがうれしい。
私の周りには誰もいなかったから………。
本当に……こんな私が………彼の。
あどけない顔。くるくる変わる表情。輝いている、天使。
会ったばかりなのに魅かれてしまった。
私は見た目だけで………何も持っていないのに。
政略だけど、こちらには何の政略的価値はない。
私には……こんなに愛しい彼の役に立てるところなんてどこにもないのに。
「本当によいのでしょうか。私は本当に出来損ないで、子どもの頃からの習い事も全て最初の最初に教師に見限られ、あまりのレベルの低さに学校も通えなかったのです……。マナーも勉強も、魔法も剣も、全部きちんと習ったことは………。」
「それなら、ここで一から学べばいいんだよ。どのみちこっちの方が文明は高度だ。地上の手習いなんて役に立たないよ。」
「えっ……。学ばせてもらえるんですか⁉」
「ふふふ。俺の婿になるからには俺好みのスーパーダーリンになってもらうからね!」
ああ、なんていうことだろう。
おしかけ婿みたいなものなのに、私はとても大事にされている。
こんなに幸せでいいんだろうか。
ありがとう。ミハイル様。
「ミハイル様。」
「やあ。どうだい?」
レジデューにつけた教育担当の者たちが、俺に血相を変えて報告してくる。
みんな鼻息が荒い。
「どうもこうもありませんよ!彼は何なんですか!」
今回飛び込んできたのは、ここ天空都市エンジェリンの首都·天上の楽園『エデン』において、子どもたちが学ぶ学園の学園長であり、国一番の優秀な頭脳を持つ学者のサマエ=ルフィン。
もうすぐ50歳になる人だけど、エンジェリンではアンチエイジングも進んでいるから、地上の人にとっては青年にしか見えないかもね。
「天才でしょ?」
「まだ3日!3日ですよ!?地上の者ですよね?」
「流石パラダイス家の末裔だよね。何百年経ってもやっぱり勤勉で真面目な気質は変わらないよね。しかも無自覚に天才なんだもの。そりゃあこちらでいまだに語り継がれるよねぇ…。」
「万有引力の法則や宇宙相対性理論の原理原則を3日で理解できますか?!」
「地上の歴史も含めて、我が国の歴史も完璧に履修しましたよ!貴族年鑑も完璧です!すべての国の言語も習得しました!……どうやらある程度は独学で学んでいたらしいのですが、いやはや、それにしても…。」
「びっくりでしょ~、すごいでしょ~、ねえ、俺の見る目は確かだったでしょ~?魔法技官長も武術師範長もおんなじ感じだったよ。剣を握らせたら一騎当千、魔力も無尽蔵で全属性魔法を使いこなすらしいよ。ちょーっと教えただけなのにって。」
「彼の権利を奪って虐げた奴はさ、彼が天才だってわかってたんだよ。だから、彼を『無能』にするために、わざと教師をつけなかったんだ。そして優秀さを知られないために学校へ行く機会も奪い、社交の場も奪ったんだ。」
「………許せませんね!あれだけの人材が埋もれるなんて人類の損失ですよ!ミハイル様、英断でしたね!…ですが、なんで地上の言語や学問まで教えさせたのですか?それは、共通する部分もありますけど…。」
「ふふふ。それは後のお楽しみ!俺に考えがあるからさ!」
俺たちの先祖は、500年前、このまま科学を発展させていけば、空気が汚れ、海水が汚染されることをシュミレーターで知った。
元々、津波や地震等の災害に悩まされてきた彼らは、環境の保全と天災から逃れるための一挙両得な策として、天上に光を見出し、空への移住を進めることにした。
空に浮かぶ人工の大陸を造り、作物が育つよう大地を作ることも忘れない。
唯一不安な台風などの際には自由に安全地帯へ移動すればよい。
そして、今のように天上のこの国はただの上空で、気圧や酸素を調整する仕組みも足りていなかったから、そこで生きられるように体を改造して、王族と先遣隊は空に上がった。
しかし、準備が整い、移住を進める頃、国民の多くが空へ行くことを恐れた。
そこでその時の宰相だったパラダイス家の者が、地上に残って彼らを守ることとしたのだ…。
時の王は地上を治める権利をパラダイス家の者に託し、その証として彼と相思相愛にあった末の姫を彼の妻にした。
末の姫の髪はオーロラ色に輝く白銀のようなプラチナブロンドで、瞳の色はピンクペリドット。
パラダイス家も何代も王族が降嫁してプラチナブロンドにサファイアブルーの瞳。
白銀の髪とサファイアブルーの瞳がこれからのこの地の管理者の色になっていく。
この国では誰もが知る昔話さ。
地上では天使が王位を与えたことになってるらしいね。
まあ、そう見えてもおかしくはない。
その時には俺たちの先祖は今のように背中に白い羽を生やしていたから。
わずかな国民と王族だけで上に上がり、そこから増えていったこの国の民は、王族と高位貴族の集まりだ。
なので貴族制もなにもあったもんじゃない。
身分での優劣はとっくに廃れて、今は実力主義で国のトップは選挙で決める。
たまたま旧王族の直系の俺の父が今は大統領をやっているけどね。
親父はゆくゆくは俺にも政治家になって、将来は大統領になってほしいらしいようだけど、俺はダーリンと楽しく暮らせたらそれでいいかなぁ。
にかっと笑う彼が可愛らしい。
ぱんぱんと背中を叩かれた。
近い距離間と気安さがうれしい。
私の周りには誰もいなかったから………。
本当に……こんな私が………彼の。
あどけない顔。くるくる変わる表情。輝いている、天使。
会ったばかりなのに魅かれてしまった。
私は見た目だけで………何も持っていないのに。
政略だけど、こちらには何の政略的価値はない。
私には……こんなに愛しい彼の役に立てるところなんてどこにもないのに。
「本当によいのでしょうか。私は本当に出来損ないで、子どもの頃からの習い事も全て最初の最初に教師に見限られ、あまりのレベルの低さに学校も通えなかったのです……。マナーも勉強も、魔法も剣も、全部きちんと習ったことは………。」
「それなら、ここで一から学べばいいんだよ。どのみちこっちの方が文明は高度だ。地上の手習いなんて役に立たないよ。」
「えっ……。学ばせてもらえるんですか⁉」
「ふふふ。俺の婿になるからには俺好みのスーパーダーリンになってもらうからね!」
ああ、なんていうことだろう。
おしかけ婿みたいなものなのに、私はとても大事にされている。
こんなに幸せでいいんだろうか。
ありがとう。ミハイル様。
「ミハイル様。」
「やあ。どうだい?」
レジデューにつけた教育担当の者たちが、俺に血相を変えて報告してくる。
みんな鼻息が荒い。
「どうもこうもありませんよ!彼は何なんですか!」
今回飛び込んできたのは、ここ天空都市エンジェリンの首都·天上の楽園『エデン』において、子どもたちが学ぶ学園の学園長であり、国一番の優秀な頭脳を持つ学者のサマエ=ルフィン。
もうすぐ50歳になる人だけど、エンジェリンではアンチエイジングも進んでいるから、地上の人にとっては青年にしか見えないかもね。
「天才でしょ?」
「まだ3日!3日ですよ!?地上の者ですよね?」
「流石パラダイス家の末裔だよね。何百年経ってもやっぱり勤勉で真面目な気質は変わらないよね。しかも無自覚に天才なんだもの。そりゃあこちらでいまだに語り継がれるよねぇ…。」
「万有引力の法則や宇宙相対性理論の原理原則を3日で理解できますか?!」
「地上の歴史も含めて、我が国の歴史も完璧に履修しましたよ!貴族年鑑も完璧です!すべての国の言語も習得しました!……どうやらある程度は独学で学んでいたらしいのですが、いやはや、それにしても…。」
「びっくりでしょ~、すごいでしょ~、ねえ、俺の見る目は確かだったでしょ~?魔法技官長も武術師範長もおんなじ感じだったよ。剣を握らせたら一騎当千、魔力も無尽蔵で全属性魔法を使いこなすらしいよ。ちょーっと教えただけなのにって。」
「彼の権利を奪って虐げた奴はさ、彼が天才だってわかってたんだよ。だから、彼を『無能』にするために、わざと教師をつけなかったんだ。そして優秀さを知られないために学校へ行く機会も奪い、社交の場も奪ったんだ。」
「………許せませんね!あれだけの人材が埋もれるなんて人類の損失ですよ!ミハイル様、英断でしたね!…ですが、なんで地上の言語や学問まで教えさせたのですか?それは、共通する部分もありますけど…。」
「ふふふ。それは後のお楽しみ!俺に考えがあるからさ!」
俺たちの先祖は、500年前、このまま科学を発展させていけば、空気が汚れ、海水が汚染されることをシュミレーターで知った。
元々、津波や地震等の災害に悩まされてきた彼らは、環境の保全と天災から逃れるための一挙両得な策として、天上に光を見出し、空への移住を進めることにした。
空に浮かぶ人工の大陸を造り、作物が育つよう大地を作ることも忘れない。
唯一不安な台風などの際には自由に安全地帯へ移動すればよい。
そして、今のように天上のこの国はただの上空で、気圧や酸素を調整する仕組みも足りていなかったから、そこで生きられるように体を改造して、王族と先遣隊は空に上がった。
しかし、準備が整い、移住を進める頃、国民の多くが空へ行くことを恐れた。
そこでその時の宰相だったパラダイス家の者が、地上に残って彼らを守ることとしたのだ…。
時の王は地上を治める権利をパラダイス家の者に託し、その証として彼と相思相愛にあった末の姫を彼の妻にした。
末の姫の髪はオーロラ色に輝く白銀のようなプラチナブロンドで、瞳の色はピンクペリドット。
パラダイス家も何代も王族が降嫁してプラチナブロンドにサファイアブルーの瞳。
白銀の髪とサファイアブルーの瞳がこれからのこの地の管理者の色になっていく。
この国では誰もが知る昔話さ。
地上では天使が王位を与えたことになってるらしいね。
まあ、そう見えてもおかしくはない。
その時には俺たちの先祖は今のように背中に白い羽を生やしていたから。
わずかな国民と王族だけで上に上がり、そこから増えていったこの国の民は、王族と高位貴族の集まりだ。
なので貴族制もなにもあったもんじゃない。
身分での優劣はとっくに廃れて、今は実力主義で国のトップは選挙で決める。
たまたま旧王族の直系の俺の父が今は大統領をやっているけどね。
親父はゆくゆくは俺にも政治家になって、将来は大統領になってほしいらしいようだけど、俺はダーリンと楽しく暮らせたらそれでいいかなぁ。
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