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過去の夢 アポロ(社長)side
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ソコソコの役者をしていた。
実家は大手芸能プロダクションで、それなりにバックがあったのに、それでもブレイクしなかったんだから、俺はきっとその程度。
俺よりうまい役者はたくさんいるし、
俺よりカッコイイタレントだってたくさんいる。
社長をしていた父が亡くなり、売れない役者を続けるよりもやらないといけないことが出来てしまって、社長業を継いだ。
一代でプロダクションを大きくした社長が死んで、こんな売れない役者上りが新社長に就任すれば、みんな泥船だって思うだろう。
抱えていたタレントが離れていき、会社は危機に陥っていた。
季節はクリスマス。
なんとなく、教会に行きたい気分になっていた。
聞こえてくる讃美歌。
一人の少年の声が、その集団の声の中で澄んで心に響いた。
同じ服を着せられて、義務のようにただ『上手に』歌っている子どもたちの中で、曲を愛でる様に歌っている。
綺麗な子だな、と思った。
どこかのサークル活動かと思ったら、里親を探している施設のイベントだという。
集まっていたひとたちは、身寄りのない彼らの中から気に入った子どもをもらい受けるために来ていた人たちだった。
綺麗な子は、隅っこの方でぽつんと座っていた。
幼い子が多い中で、一人だけ大きなその子。
「隣に座っていい?」
声をかけると、想定していなかったのか、気の抜けた返事が返って来た。
「は、はい!」
「君の名前は?」
「山田……霧。霧が出ていた日に捨てられていたから、霧です。親が不明なので名字はよくある名字適当で。」
「……きみ、僕と一緒に来ない?僕は未婚だし、僕が君を引き取ることはできないけど、きっといい人を僕が見つけてあげる。」
「………え。でも、ぼく、引き取られるには年がいってるし、こんな太ってるし、ぶつぶつだらけで汚いし…。」
ぽっちゃりした手が膝の上でぎゅっと結ばれている。
「明らかに純粋な日本人じゃないし………っ。」
泣きそうなその子を、ぎゅっと抱きしめていた。
「君は綺麗だよ。君の目はぱっちりしてキラキラしているし、鼻筋だって綺麗だ。自信をもって?俺はね、君の歌に惹かれたんだよ。」
その子は、俺の友人でヘアメイクのゲイカップルの水瀬の養子になった。
水瀬の内縁の妻―――――というかパートナーは声楽家で作曲家だった。
男同士では子どもを持ちたくても持てない。
水瀬夫夫は、霧を本当に大切に育てた。
ああ。霧が飛行機事故で死んでしまって、二人は泣いただろうな…。
実家は大手芸能プロダクションで、それなりにバックがあったのに、それでもブレイクしなかったんだから、俺はきっとその程度。
俺よりうまい役者はたくさんいるし、
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一代でプロダクションを大きくした社長が死んで、こんな売れない役者上りが新社長に就任すれば、みんな泥船だって思うだろう。
抱えていたタレントが離れていき、会社は危機に陥っていた。
季節はクリスマス。
なんとなく、教会に行きたい気分になっていた。
聞こえてくる讃美歌。
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同じ服を着せられて、義務のようにただ『上手に』歌っている子どもたちの中で、曲を愛でる様に歌っている。
綺麗な子だな、と思った。
どこかのサークル活動かと思ったら、里親を探している施設のイベントだという。
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綺麗な子は、隅っこの方でぽつんと座っていた。
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声をかけると、想定していなかったのか、気の抜けた返事が返って来た。
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「君の名前は?」
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ぽっちゃりした手が膝の上でぎゅっと結ばれている。
「明らかに純粋な日本人じゃないし………っ。」
泣きそうなその子を、ぎゅっと抱きしめていた。
「君は綺麗だよ。君の目はぱっちりしてキラキラしているし、鼻筋だって綺麗だ。自信をもって?俺はね、君の歌に惹かれたんだよ。」
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