5 / 42
逃がしませんよ?
しおりを挟む
やばいやばい。
こんなラスボスみたいなヤバいスキル持ちは、目立たずひっそり生きるが吉なのに。
どこへいっても俺なら生きていけるだろうから、さっさと荷物をもって国を出よう。
えっと~、お気に入りのお洋服と、ヘアブラシと、髪につけるオイルと、化粧水と、せっけんと………。
芸能界歴長かったし、美容用品は譲れない…。
ぜいたく品なのは分かってるんだけどさ!
市井に下りたら手に入らないかもしれないから、しっかり持っていかなきゃ…。
「アクア様っ!!」
「ひ、ひゃい!!!」
聞き覚えのあるハスキートーンにびくっとなって振り返ると、昔、離宮で働いていた侍従が凄い形相で立っている。
確か名前はキーストン=ハサウェイ。
子爵家の息子だったはずだ。
「アクア様!!アポロ殿下の命です!50人いる王子のうち、12歳から35歳までの者を全員、見合いに参加させよと!」
「えっ……俺、参加したくない…。」
「ダメです!じゃあ、こう考えてください。アクア様が行かなかったら、陛下も兄君たちも全員処刑されるでしょう。選ばれなくていいですので、どうか一緒に来てください!」
えぇえ。………じゃあしょうがないかあ。
仕方なくキーストンを連れて転移すれば、玉座にえらそうな青年(まだ子ども?)が鎮座し、その前でひたすらに自分の父親である陛下?がペコペコしている。
「第50王子、アクア=トゥ=エトランゼ。ただいままいりました。」
「うむ。なるほど、地味だな。」
「そうでしょう???だから言ったでしょう???」王が声高に訴える。
「アクア王子、その幻覚を解きなさい。隣国の王太子たる私に失礼だと思わないのかね?」
ぎくり。こいつ、できる。
―――しかたない。
私は夢を見ているのだろうか。
確かアクアの母親はそれはもう美しい男だった。
アクアも生まれた頃は母親似で美しいと思ったが、物心つく時分になるとなぜか凡庸な感じになった。
そう、思っていたのに。
目の前の息子は、少し前髪が長すぎることを除けば、死んだ母親によく似ている。
まさか、今まで見ていた姿が幻覚だったとは。
ざわ…ざわ……。
「アクアのやつがあんなに可愛かったなんて!」
「きぃ、悔しい!負けない!」
「アポロ様の御心をつかむのはこの僕だっ!」
先に集まっていた王子達が騒ぎ出す。
「ふふふ。」
玉座からアポロ王子が立ち上がり、急ごしらえで用意させたらしい特設ステージの前に来た。
王者らしい風格、威圧的なオーラを一転させ、声を張る。
「どうぞ。」
なんか前世で見覚えのある………番号が書かれたバッジが侍従から配られたぞ?
「どんどんぱふぱふ!王子の妃は誰だ!さぁ~~~~~~!!それでは、候補者のみなさんには一人ずつ壇上にあがっていただき、自己紹介と、ちょっとしたステージをやってもらいましょう!魔法を使った出し物でもいいし、歌でもいいし!物まねでもいいですよ!それでは、エントリーNo1!!!カイ王子っ、どうぞ!!!!」
「はっ!はいっ!! エントリーNo.1 第7王子 カイ=トゥ=エトランゼ! 特技は剣!剣の演武をしますっ!」
カイ兄上が立派な演技をする。
はあはあと息を切らせて、アポロ王子にニコニコしている。
アポロ王子は、司会席から今度は審査員席へ移動した。
「うーーーーーん、すごいけど、私の心にビビッとこなかった。次!」
うん、怖くなったり、ふざけてみたり。雰囲気がまるでコロコロ変わって、面白い人だなあ。
こんなラスボスみたいなヤバいスキル持ちは、目立たずひっそり生きるが吉なのに。
どこへいっても俺なら生きていけるだろうから、さっさと荷物をもって国を出よう。
えっと~、お気に入りのお洋服と、ヘアブラシと、髪につけるオイルと、化粧水と、せっけんと………。
芸能界歴長かったし、美容用品は譲れない…。
ぜいたく品なのは分かってるんだけどさ!
市井に下りたら手に入らないかもしれないから、しっかり持っていかなきゃ…。
「アクア様っ!!」
「ひ、ひゃい!!!」
聞き覚えのあるハスキートーンにびくっとなって振り返ると、昔、離宮で働いていた侍従が凄い形相で立っている。
確か名前はキーストン=ハサウェイ。
子爵家の息子だったはずだ。
「アクア様!!アポロ殿下の命です!50人いる王子のうち、12歳から35歳までの者を全員、見合いに参加させよと!」
「えっ……俺、参加したくない…。」
「ダメです!じゃあ、こう考えてください。アクア様が行かなかったら、陛下も兄君たちも全員処刑されるでしょう。選ばれなくていいですので、どうか一緒に来てください!」
えぇえ。………じゃあしょうがないかあ。
仕方なくキーストンを連れて転移すれば、玉座にえらそうな青年(まだ子ども?)が鎮座し、その前でひたすらに自分の父親である陛下?がペコペコしている。
「第50王子、アクア=トゥ=エトランゼ。ただいままいりました。」
「うむ。なるほど、地味だな。」
「そうでしょう???だから言ったでしょう???」王が声高に訴える。
「アクア王子、その幻覚を解きなさい。隣国の王太子たる私に失礼だと思わないのかね?」
ぎくり。こいつ、できる。
―――しかたない。
私は夢を見ているのだろうか。
確かアクアの母親はそれはもう美しい男だった。
アクアも生まれた頃は母親似で美しいと思ったが、物心つく時分になるとなぜか凡庸な感じになった。
そう、思っていたのに。
目の前の息子は、少し前髪が長すぎることを除けば、死んだ母親によく似ている。
まさか、今まで見ていた姿が幻覚だったとは。
ざわ…ざわ……。
「アクアのやつがあんなに可愛かったなんて!」
「きぃ、悔しい!負けない!」
「アポロ様の御心をつかむのはこの僕だっ!」
先に集まっていた王子達が騒ぎ出す。
「ふふふ。」
玉座からアポロ王子が立ち上がり、急ごしらえで用意させたらしい特設ステージの前に来た。
王者らしい風格、威圧的なオーラを一転させ、声を張る。
「どうぞ。」
なんか前世で見覚えのある………番号が書かれたバッジが侍従から配られたぞ?
「どんどんぱふぱふ!王子の妃は誰だ!さぁ~~~~~~!!それでは、候補者のみなさんには一人ずつ壇上にあがっていただき、自己紹介と、ちょっとしたステージをやってもらいましょう!魔法を使った出し物でもいいし、歌でもいいし!物まねでもいいですよ!それでは、エントリーNo1!!!カイ王子っ、どうぞ!!!!」
「はっ!はいっ!! エントリーNo.1 第7王子 カイ=トゥ=エトランゼ! 特技は剣!剣の演武をしますっ!」
カイ兄上が立派な演技をする。
はあはあと息を切らせて、アポロ王子にニコニコしている。
アポロ王子は、司会席から今度は審査員席へ移動した。
「うーーーーーん、すごいけど、私の心にビビッとこなかった。次!」
うん、怖くなったり、ふざけてみたり。雰囲気がまるでコロコロ変わって、面白い人だなあ。
14
お気に入りに追加
557
あなたにおすすめの小説


番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる