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何があったんだってばよ
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「いったいこれは何があったんだ。」
野菜を売りつけに行った町の方は静かだったんだけど。
城へ戻ると、離宮からも分かるくらいに騒々しい。
「ねえねえ、何があったの?」
そのへんを右往左往している侍従を捕まえて聞く。
うん、俺が王子だって分からないみたい。まだ魔法で姿を変えて見せているからね。
「エトランジェ王国が滅亡したんですぅぅ!無血開城ですぅ!」
「どういうこと?」
「えっと、今までこの国は帝国の庇護の下、存続を許されてたんですよ!ところが帝国の王太子のご機嫌を損ねて…。なんでも、陛下が王太子がご所望の王子を妃として差し出さなかったからとか…!」
はああああ?
「なんでそんな。国交なんだから差し出せばいいのに。50人もいるんだから、誰か一人くらい。」
「50?……もいましたっけ??でも大体そんなかんじですよね。そうですよね。それで、今から王子を集めて合同お見合いですよっ!もおお、準備にてんやわんやで。」
おみあい?
王子全員集めて???
んーなんか嫌な予感がするぞ。
よし、逃げるか!
玉座に座るは、マーズ帝国の王太子であるアポロ王子だ。
ふんぞり返り、肘を足につけて、愚王とその王子達を見下ろす。
「あ、アポロさまっ!ぜひ、私を伴侶にっ!」
「いえいえ、私をっ!」
「50過ぎのお兄様たちは引っ込んでいてください!アポロ殿下はまだ17歳なんですよっ!?いくらなんでも年上すぎると思わないんですか?」
「アポロ殿下!アポロ殿下の守備範囲は何歳まででしょうかっ!」
「アポロ殿下……。私の息子たちを全て集めてまいりました。既に結婚し、妻子がいる者もおりますが、王太子のお眼鏡にかなうなら離縁も厭わない覚悟でございます!私の息子たちは、優秀で、武芸にも秀で………。」
もみ手で媚びる元陛下。
全く嘆かわしい。大体コイツの言う優秀とか信憑性もない。
そして、私の妃になれば渡りに船だとばかりにアピールをする者たちも煩わしい。
神が、私の霧をこちらへ転生させると。
こいつの子として生まれてくるというから、下ばかり上手で満足に国政もできないこの無能の国を支援してきたというのに。
まあ、再会できたとしても、神との約束で…自分が癌で他界した黒崎社長だとは彼には言えないんだが。
あの時は年齢も違いすぎて、頼ってくる彼によからぬ感情を抱いている自分を恥じ、影ながら守ってきたが。
この世界なら………。
ああ。目を閉じれば思い出す。
あのピンク色のプルンとした唇。純粋に私を慕ってきらきらと輝いていた瞳。
早く彼を愛でたい…のに………っ!!!!!!
「オーディションをする。私が司会進行、そして審査員だ。年齢は35~12歳。必ず全員、参加すること。」
35歳より上の王子たちが、がっくりと肩を落として去っていく。
お前らにはこれからキッチリ王族として働いてもらうのだから、ちゃんと妻子を大事にしろ。
大体なんで私に選ばれると思ってるのか解せん。抱かれる側だぞ……。まあ世の中にはオッサン受けというジャンルもあるにはあるが。あれはそういうタイプでもないだろう。
「それから、お前には50人の王子がいたはずだが?1人足りないのではないか?必ず参加させよ。」
「1人……。1人???? あっ!!………確かにあの子は12歳ですが、つけた家庭教師も早々に去るほどの頭の出来。見た目も凡庸で…取り立ててぱっとしないというか。あの子は『ナイ』と思いますが…。」
陛下の言葉に我慢が出来なかった様子で、侍従の一人が声を張り上げる。
「ぶしつけで恐縮ですが陛下、アクア王子はおそらく王子方の中でも最も優秀な方と存じます。家庭教師が早々に去ったのは、アクア王子の出来の悪さに呆れたからではありませぬ!優秀すぎて教えることがなかったのでございます!……おそらくアクア様ご本人もそのように誤解されているのでしょうが、誤った情報が伝えられていたようなので、この場で訂正させていただきます!」
「なんと!まだ12歳だぞ……!!!!?あの子の下から家庭教師が去ったのは5年ほど前だったではないか!」
「本来、王太子教育で学ばれる範囲も、御年7歳にて全て終了しております。アクア様はお立場が弱いお方。ゆえに、能ある鷹は爪を隠すと言いましょうか、ひたすらにご自身の才覚をひた隠しにされてきたのでございます。」
「アクア様は私たち侍従の立場もおもんばかって、一人で生活できるから大丈夫だと……。我々はお側を離れとうございませんでしたが、アクア様がお気になさるのならと側付を離れました。ですが、あの心優しい方のことを忘れたことは一日たりともございませぬ!」
「大体陛下、最近はアクア様に生活費をお渡ししておりませんよね??アクア様はご自身で収入を得て生活しております。そんな健気なアクア様を、なにとぞ、この場へ!!!!」
アポロ王子に気に入られれば、幸せになれる。
他の王子の母親たちが、熱心に息子を売り込むように、本当はずっと気にかけていた侍従たちも、熱心に売りこんだ。
(なるほど。そのアクア王子が霧の可能性があるな。)
「よし、そこのお前。アクア王子を連れてくるのだ。」
「はい!お任せください!!」
指名された侍従が恭しく礼をし、離宮へ向かった。
野菜を売りつけに行った町の方は静かだったんだけど。
城へ戻ると、離宮からも分かるくらいに騒々しい。
「ねえねえ、何があったの?」
そのへんを右往左往している侍従を捕まえて聞く。
うん、俺が王子だって分からないみたい。まだ魔法で姿を変えて見せているからね。
「エトランジェ王国が滅亡したんですぅぅ!無血開城ですぅ!」
「どういうこと?」
「えっと、今までこの国は帝国の庇護の下、存続を許されてたんですよ!ところが帝国の王太子のご機嫌を損ねて…。なんでも、陛下が王太子がご所望の王子を妃として差し出さなかったからとか…!」
はああああ?
「なんでそんな。国交なんだから差し出せばいいのに。50人もいるんだから、誰か一人くらい。」
「50?……もいましたっけ??でも大体そんなかんじですよね。そうですよね。それで、今から王子を集めて合同お見合いですよっ!もおお、準備にてんやわんやで。」
おみあい?
王子全員集めて???
んーなんか嫌な予感がするぞ。
よし、逃げるか!
玉座に座るは、マーズ帝国の王太子であるアポロ王子だ。
ふんぞり返り、肘を足につけて、愚王とその王子達を見下ろす。
「あ、アポロさまっ!ぜひ、私を伴侶にっ!」
「いえいえ、私をっ!」
「50過ぎのお兄様たちは引っ込んでいてください!アポロ殿下はまだ17歳なんですよっ!?いくらなんでも年上すぎると思わないんですか?」
「アポロ殿下!アポロ殿下の守備範囲は何歳まででしょうかっ!」
「アポロ殿下……。私の息子たちを全て集めてまいりました。既に結婚し、妻子がいる者もおりますが、王太子のお眼鏡にかなうなら離縁も厭わない覚悟でございます!私の息子たちは、優秀で、武芸にも秀で………。」
もみ手で媚びる元陛下。
全く嘆かわしい。大体コイツの言う優秀とか信憑性もない。
そして、私の妃になれば渡りに船だとばかりにアピールをする者たちも煩わしい。
神が、私の霧をこちらへ転生させると。
こいつの子として生まれてくるというから、下ばかり上手で満足に国政もできないこの無能の国を支援してきたというのに。
まあ、再会できたとしても、神との約束で…自分が癌で他界した黒崎社長だとは彼には言えないんだが。
あの時は年齢も違いすぎて、頼ってくる彼によからぬ感情を抱いている自分を恥じ、影ながら守ってきたが。
この世界なら………。
ああ。目を閉じれば思い出す。
あのピンク色のプルンとした唇。純粋に私を慕ってきらきらと輝いていた瞳。
早く彼を愛でたい…のに………っ!!!!!!
「オーディションをする。私が司会進行、そして審査員だ。年齢は35~12歳。必ず全員、参加すること。」
35歳より上の王子たちが、がっくりと肩を落として去っていく。
お前らにはこれからキッチリ王族として働いてもらうのだから、ちゃんと妻子を大事にしろ。
大体なんで私に選ばれると思ってるのか解せん。抱かれる側だぞ……。まあ世の中にはオッサン受けというジャンルもあるにはあるが。あれはそういうタイプでもないだろう。
「それから、お前には50人の王子がいたはずだが?1人足りないのではないか?必ず参加させよ。」
「1人……。1人???? あっ!!………確かにあの子は12歳ですが、つけた家庭教師も早々に去るほどの頭の出来。見た目も凡庸で…取り立ててぱっとしないというか。あの子は『ナイ』と思いますが…。」
陛下の言葉に我慢が出来なかった様子で、侍従の一人が声を張り上げる。
「ぶしつけで恐縮ですが陛下、アクア王子はおそらく王子方の中でも最も優秀な方と存じます。家庭教師が早々に去ったのは、アクア王子の出来の悪さに呆れたからではありませぬ!優秀すぎて教えることがなかったのでございます!……おそらくアクア様ご本人もそのように誤解されているのでしょうが、誤った情報が伝えられていたようなので、この場で訂正させていただきます!」
「なんと!まだ12歳だぞ……!!!!?あの子の下から家庭教師が去ったのは5年ほど前だったではないか!」
「本来、王太子教育で学ばれる範囲も、御年7歳にて全て終了しております。アクア様はお立場が弱いお方。ゆえに、能ある鷹は爪を隠すと言いましょうか、ひたすらにご自身の才覚をひた隠しにされてきたのでございます。」
「アクア様は私たち侍従の立場もおもんばかって、一人で生活できるから大丈夫だと……。我々はお側を離れとうございませんでしたが、アクア様がお気になさるのならと側付を離れました。ですが、あの心優しい方のことを忘れたことは一日たりともございませぬ!」
「大体陛下、最近はアクア様に生活費をお渡ししておりませんよね??アクア様はご自身で収入を得て生活しております。そんな健気なアクア様を、なにとぞ、この場へ!!!!」
アポロ王子に気に入られれば、幸せになれる。
他の王子の母親たちが、熱心に息子を売り込むように、本当はずっと気にかけていた侍従たちも、熱心に売りこんだ。
(なるほど。そのアクア王子が霧の可能性があるな。)
「よし、そこのお前。アクア王子を連れてくるのだ。」
「はい!お任せください!!」
指名された侍従が恭しく礼をし、離宮へ向かった。
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