【完結】神アイドルが転生したら魅了持ちのチートで破滅フラグ臭がするので大人しくしていたのに隣国王子が追っかけます

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
1 / 42

プロローグ

しおりを挟む
「キャアアアア!!!」

「水瀬くーん!頑張ってー!!!」


ファンの声援に応えながら俺は手を振って応えた。


俺は水瀬霧。シークレットサービスに守られ、今日、出演作がノミネートされているアメリカの映画賞のイベントに向けて、飛行機の国際線で出発するところだ。
他のスタッフや出演者は先にアメリカ入りしているが、俺だけレコーディングがあったので今日になった。


施設育ちで親が誰か分からない俺だったけど、見てくれが良かったお陰で大手芸能事務所にスカウトされ、自分の働いた金で高校や大学に進学することも出来た。

俺を見つけて、育ててくれた社長さんには感謝してもしきれない。
だけれど数年前、社長さんは癌で若くして亡くなってしまった。

タレントから社長に転身した人で、40代前半だったけど、まだ独身で子どももいなかったのに。

社長が現役時代の出演した映画やドラマを俺は繰り返し見た。

俺は基本的に歌手だけど、芝居の仕事が入ることもあった。

たまにおねだりすると、台本の読み合わせの相手や演技指導もしてくれた優しい人。

瑞々しい演技をする、憑依型の役者で天才だと思った。


彼のようになりたくて。彼に恩返しがしたくて。頑張って来たようなものだ。






ガタガタガタガタ。

飛行機が乱気流?で揺れる。

だが、乱気流とはちょっと違う。外はそれほど雲がない。
揺れ始める前に、機体が震えた気がする。


暫くすると、エンジントラブルで不時着を試みる、落ち着いて、というアナウンスが流れた。


怯えた子ども。

叫び声。


乗客は皆不安でいっぱいだ。



機体が揺れる中、俺は客室乗務員のいる場所へ向かった。



「お客様!!危険ですので、お席へ―――――――

「水瀬霧。日本の歌手です。俺ができることをしたい。お客様が落ち着けるよう、俺に手伝わせてくれませんか?」





もしかしたら、今日、俺はここで死ぬかもしれない。

そんな予感があったのかもしれない。


だから、最後に。



自分が生まれた意味を。

大仕事をやりたかったんだ。



乗務員からマイクをもらい、機内に向けて発信する。


「こんにちは。俺はキリ・ミナセ。日本の歌手で、俳優です。アカデミー賞の授賞式に向かってたんだけど、今ここにいます。今日、この便に乗り合わせたみんなは『家族』です。国籍も、身分も、性別も、年齢も関係ない。大事な人への想い、明日への希望を。落ち着いて。俺の持ち歌でもいいんだけど、みんな知らないだろうから。クラシックで歓喜の歌を歌います。」







そして俺は―――――――。












「気が付いた?」

白い服で真っ白な見事な銀髪の美形が俺の顔を覗き込む。


「ここは?」


あたりを見回すと、そこは何もない空間だった。




指さす先は、空中に映像が投影され、飛行機の墜落事故のニュースが流れている。

誰かが撮影していたのか。

俺が最後に歌っている姿が流れている。




「ここは神の世界だよ。君は死んでこの場所に来た。私は神。アンジュといいます。はじめまして。」

ニコニコと愛層のいい神様だ。

「乗客のうち、死亡したのは君を含めて9名。君以外の人間は、また地球の人類として生まれ変わる。」


「俺、以外は?」


「うん。君は最後に素晴らしいことをしたからね。乗客としてあの場でやっていいことではなかったけど、結果的に君のおかげで乗客はパニックにならず、被害は最小限になったし、君のスピーチや歌は世界中に拡散されて、皆に感動を与えた。君の意思を汲んで戦争していた国は戦争をやめようとしているし、世界平和に貢献したといっても過言ではない。」

「…………つまり?」



「そんな素晴らしい君は、この私が愛し子として加護もりもりで自ら産んであげたいって思ってね?元居た世界もいいけど、丁度、君のいた世界から前に転生した子もいるし、そっちにしようと思って。魔法と剣の世界だよ?嬉しい?」


「……ゲームもラノベも好きだし、楽しそうだとは思うけど。日本より生きていくのは大変なんじゃ。」


「だいじょーぶだいじょーぶ。私の加護があれば無敵だよ!それに、衣食住に問題ないように父親はしかるべき地位の男にするから!なーに、私の魅力があればイチコロだよ!」


この神様軽いな…。






1年後。

神様は適当な王様を捕まえて、俺を産み。

さっさと神様の世界へ『命と引き換えに産んだ』体で還っていったのである。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~

ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。 ――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ! ※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

処理中です...