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魔王討伐後

あの子は魔王

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ベネディクトが目覚めて数年たち。

世界はまだ平和だ。



ベネディクトとブルーの間には、翌年、かわいい男の子が産まれた。


黒髪で黒い瞳。

誰に似たのか浅黒い肌。

だが、確かに顔の全体的な雰囲気はベネディクトに、目鼻立ちはブルーによく似ている。



この子は魔王だった。



元の世界の穢を一身に集めた負の存在。


自分に自信がなく、卑屈で、悪い方へ物事を考える。
世の中は悪いものばかりで、人間の本質を悪という。

みんなが楽しい気分の時でも、気が削がれるようなことばかりいう子どもは、気味悪がられていた。


少し先に産まれた司教のところの末っ子の、輝くようなカリスマと比べると、まるで闇溜まりのような子。


だが、まだ。
だからといって、嗜虐性や破滅主義は見られない。





「………はああああぁっ!」

「おぎゃあ。あぎゃあ。」

「産まれましたよ!」

月も星も出ない漆黒の闇の夜。
ベネディクトは初めての子どもを産んだ。

そばでは、ブルーが付き添ってくれた。


「ブルー。この子。」

「うん、魔王だね。」

ブルーは、魔の力を感じられるようになっていた。



二人は決めていた。


魔王でも、愛する我が子。

愛情深く育てよう。

魔王にはしない。

そう思い、皆を説得した。




「もうすぐ、弟か妹が産まれる。きっと、俺なんか捨てられるよ。」

浅黒い肌の少年は、背を丸め、いつも俯いている。


「そんなことないよ。ライト。」
少し年上の美しい少年は、いつも慰めている。

浅黒い肌だって、なめらかで健康的で、大人になれば色気があるだろう。

猫のようなクリクリした目も、スッとした鼻筋も。

美形の父親にそっくりだし、それが美しい母親の容貌と混ざって柔らかく華やかになり、魅力がある。


なんで、それほど悲観的で否定的なのか。

「お前みたいなのに褒められても、響かない。」


「またそういう。今度、教会でパーティーをするんだ。気晴らしにおいでよ。ご両親と一緒に。」


「わかった………。」




わからない。

分からないんだよ。

なんでこんなに、誰も信じられないんだろう。

悲しくて辛くて、全てをめちゃくちゃに壊したい気持ちになんでなるんだろう。


お母様のお腹を見ていると、剣でさしたらどうなるのかな?って考えるんだ。


この階段から落としたら、って。


なんて俺は悪い子なんだろう。
俺はなんておかしいんだろう。

俺なんて、産まれなきゃよかったんだ。
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