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闇を払ったその先に、あなたはいない

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『フハハハハハ!!!』


魔王の体が膨れあがる。 

巨大な尾が大地をはたき、翼が風を起こし、六本の腕が皆を凪ぐ。


「怯むな! 王子達とともに! 戦える者は戦え!!」 

レイが全員の肉体を強化する。

「ハッ、ハイ!!」

「スピードアップ!」

グリーンの風が移動速度を上げる。

あわせて、「ウインド!!」魔王の風を押し上げる。

「私が風は抑えます!そのうちにッ!」

「俺が右側を!レイは左、皆は手分けしてついて来い!」

グレイスの合図で、大翔と手を取り、突き進む。


「浄化っ!!」


光が魔王を包む。


「かああああっ!」

魔王の咆哮で身体が吹き飛ばされ、光が霧散した。


「ベネディクトさまっ!」

『消えろ! 聖女!』

俺を握りつぶそうと腕が伸びる。

倒れ込む俺の前に、大翔が割って入った。


「ブルー! 影をそいつに纏わせろ!」

魔王の頭の上。グレイ王子。

その声で影を伸ばすと、腕を止めることができた。

「よくやった。影はそういうふうにも使うんだ。覚えておけ!ダーク王国軍1万。ともに戦うぞ!」


大翔が止めた腕を兄が焼き斬る。

グレイは4体に分かれ、撹乱する。


口へは、グリーンが空気砲をうちこんでいる。


「シャドウハンド!」

大翔が動きを止める。

彼を背中に感じながら―――――


「浄化あっ!!!!」


力いっぱい。今までで一番の光を。



「がアアアッ!」



魔王は光に消え去った。



消え去る瞬間。


次元が歪み、白転する。



大翔は大人に。

優しく知的な風貌の花木大翔に戻っている。

俺は、大学生の一ノ瀬和真。


歪みの穴から見えるのは、俺が落ちて死んだ駅。


「時空が歪んでる?」

大翔は、じいっとそこを見つめ―――



「あっ。」



俺をその穴に突き飛ばした。






君は生き返る。


幸せに。



大翔の声が聞こえた。






気がつくと、俺は大学生。

赤城タクマは存在しない。

俺は政治家秘書なんてしていない。



そして、花木大翔も存在しない。




涙が落ちた。
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