異世界転生したら王子なのに身売りさせられるところでしたが聖女でした。魔王を倒したのでいちゃいちゃしたいです。

竜鳴躍

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貴方は私の番

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ローズ=ガーデンでは、正気を失った兵士の襲撃を受けていた。

中に攻め入ろうとする兵士たちを、バリアが阻む。


しかし、そのバリアもほころびかけていた。



「……くっ。」


「おかみさん!おかみさん!私の魔力を使って!」

「俺の魔力も!ちょっとしかないけど!」



匿っている商会長たちが、おかみさんに魔力を譲渡し、ホワイトは、必死におかみさんを癒している。

だが、そんな甲斐もむなしくーーーーーー。




「……あぁぁっ、そんなっ!」

おかみさんの体がパリンと何かが弾けるように後ろ向きに倒れた。

ひっつめにしていた茶色の髪が、ばらばらと解ける。




「みなごろしだ!反逆者どもめ!!!!」

瞬間、兵士たちが中へ駆けあがってくる。





「そうはさせない!」





聞いたことのある、凛とした声。

ハルトに似ているけど、もう少し太くて、男らしい大人の男性の声。



「グレイさま・・・!どうして!!」


おかみさんの前に闇の玉が現れたかと思うと、すーっと人形になり、おかみさんたちの前に立つ。


「どうしてかって。自分の番を守るのに、コピーを残しておいただけだよ。」


おかみさんにウインクをする。




「つがい? 私が?」


私はもう40歳。

元公爵令嬢とはいえ、娼妓になって手垢もついて、娼館の主をしているような女なのに?

あなたみたいな20代そこそこの若くて立派な人が私を?


「ベネディクトを迎えに来たんだけどね。最初にあなたに会って、ベネディクトに会って。確信したんだよ。あなたが俺の番だ。年齢とか、今までの人生とか関係ない。もっとじっくりあなたを口説きたいけれど、まずはこいつらをなんとかしよう。」



グレイが睨むと、兵士たちは竦みあがった。



「ほう。分かるか。格の違いが。伊達に内乱を生き抜いて城を取り戻したわけではないんだよ。まとめてかかってきたまえ?さっさと済ませたいからね。」













自分に兵士を集めたのは、なるべく手数少なく終わらせたいから。

周りに守るべき人が多すぎて、向こうに気を向けてほしくなかった。

そして、なるべく彼女の大切なお店を傷つけたくなかった。


すっと目に魔力を集中すれば、兵士の頭から伸びる黒い霧。



グレイは、腰の黒い剣に手をやると、剣の形を鞭に変えた。



「たった一人に何ができるっていうんだ!」

「キエエエエエッ!」


向かってくる兵士たちを涼しい顔で眺め、鞭でしゅんッと頭上の『何か』を斬る。



「…ヒッ!」



兵士ががくんと糸が切れた凧のように沈む。

次々と入ってくる兵士にも、同じように頭上の何かを斬り、兵士たちは意識を失った。



「大丈夫。魔の力を斬ったから、きっと起きたら普通に戻ってるよ。」







彼はつかつかとおかみさんの前に進む。

おかみさんの左手の甲にキスをして片膝をつき。



「ロザリア様。私の妃になってくださいませんか?」





「きゃああ!おかみさん!玉の輿!」

「ドリームきたこれ」

店の娼妓たちが色めきだつ。



「でも、わたし。こんな汚れた体ですし。」


「あなたに意地悪を言うような姑も小姑も誰も俺にはいませんよ。」


「年齢もだいぶいってますし。御子も産めるかどうか。」


「なるようになりますよ。私には弟もいますしね。」




「おかみさん!幸せになってくださいよ!」

「そうよ、悪いのはみんなアイツじゃないの!」



「みなさんも応援してくれていますよ?」






「ああ、でもいいのかしら。わたし、幸せになってもいいのかしら。」



初めて見たとき、心の奥が躍ったけれど。

年も年だし、考えないようにしていたのに。


人生って分からないものだわ。




「よろしくおねがいします。」


今頃、本体が暗躍しているころです。

終幕もそろそろですよ。と、旦那様になる方は笑った。


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