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聖女2 ~ダーク国王襲来~
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「たいへんよぉ!! 隣国の王様が一人でっ、ベネちゃんを身請けしたいってぇええ!」
おかみさんが駆けてきた。
「隣国?」
「そうよ、ダーク国の国王様が、ベネちゃんをもらいたいって!」
「ダーク国と言えば、兄上が留学していた国じゃないか。大翔、兄上も呼んでくれる?3人で会おう。」
「わかった。」
「じゃあ、おかみさん。その方をこちらにお通ししてください。おかみさんも同席お願いします。」
「わかったわ。お連れするわね。」
しばらくすると、その人はやってきた。
「初めまして。グレイ=フォン=ダーク。ダーク国の国王だ。ベネディクト王子。君が幼い頃、互いの王家の間で君と我が国の王子との間の婚約の話が交わされたのだよ。ただ、我が国も内乱状態だったから、落ち着いたついでに君が成人するまではと保留になっていた。君は私の婚約者だ。ぜひ、私に身請けさせてほしい。」
黒い髪、黒い瞳。猫のような目の形。どことなく大翔に似ていて、もしかしたら俺はこの人を愛せるのかもしれないけど。
「申し訳ありませんが…。俺の国は今、こんな状況です。それに俺は今の王である叔父に目をつけられている。娼館は国にあって別世界です。王様でもここのルールに従わなければならない。ここの外なら、どこにいてもあいつは追ってくる。すべてが片付くまでは、ここから出たくはないのです。」
「グレイ、ベネディクトもこう言っている。うちの弟は頑固だから出直すとーーーー」
「しかし…それでは…! 君をほかの男にこれ以上触らせたくはない…!」
グレイ王に無視をされて、兄上は寂しそうだ。
手が空をにぎにぎしている。
「ご安心ください。俺は処女です。娼館にあっても、うまくやれば貞操は守れるのです。」
「お分かりになっていただけましたか?それではお帰りください。大体、平定したばかりで国王が一人で隣国の娼館に足を運ぶなど、どうかしていますよ。国民のためにもお戻りなさいませ。」
スッと、部屋の隅に控えていた大翔がグレイの前へ出た。
「………ん!!? おまえ、ブルーか???」
「…お会いしたこと、ありましたっけ…?」
「兄上の顔を忘れたのか!!? 亡命した後、俺は国を取り戻さないといけなかったから、幼いお前をこの国のマリーナ子爵に預けたのだ!!……ああ、こんなことなら王位を継いで落ち着いてからと思わずに、すぐにでも迎えに来るのだった!」
「えっ、ちょっと待ってください。ブルーはダーク国の王子だったのですか?」
「俺と同腹の弟で第四王子だ。妾腹の第二、第三王子は死んだから、実質第二だな。」
あああ。
でも、これで、ダーク国を味方につけられる。
俺は、グレイに事細かにブルーのことを報告した。
それはもう、烈火のように怒り狂ったとも!
そりゃあそうだろうよ。大事な友は軟禁されてレイプ、大事な大事な弟は娼館に売り飛ばされてたんだからな!
「あの子爵~~~~~~~~~~~~!!! 国王の豚めぇえええええええええっ!!!! ひき肉にして魔物の餌にしてやる……っ!!!!魔物に腸を引きずり出されて、死ぬまで犯されるといい…!!!!」
大翔は、幼い頃の記憶がなかったようで、突然出自を聞かされて、戸惑っているようだ。
「ベネディクト、グレイス。ダーク王国は君たちを支援するぞ。ダークのように、国を取り戻そうじゃないか。なにせ、本物の聖女がこの国に久しぶりに降臨したようだからな。魔の者が今、この国を覆っているようだが…、俺たちが力を合わせれば、必ず打ち払えるだろう。」
グレイが俺にウインクをする。
「俺の能力はこれだ。」
グレイが床に手のひらを向けると、ぐぐぐっと闇だまりが出来、グレイの姿に変わる。
「ダーク王国の闇属性魔法の一種だ。闇、というが夜の精霊の力であって、魔の力ではないからご安心いただきたい。こうして俺は、全く俺と同じ分身を5体まで生み出すことが出来る。思考の共有もしているから、本体がここへいても、向こうの治世には問題ないというわけだ。」
コピーの頭を撫でると、インクを吸い取るように消して、融合した。
「もう一つ。闇と魔は違うが、親和性がある。ゆえに、俺は魔の気配を察することが出来る。この国に入る前、魔…魔王の気配を感じた。女神と対の悪しき存在。その究極たる王がこの国に顕現している可能性が高い。既に国民は、魔に魅入られ、操られているぞ。王家を憎み、廃統に追い込んだのも、そのせいだと思っている。」
「なんだって。それじゃあ、証拠を集めても、冤罪をはらせないじゃないか。」
兄上が拳を握りしめた。
せっかく、ベネディクトたちが頑張ってくれているのに…。
「兄上、大丈夫ですよ。やることが増えただけです。」
「でも、騎士団長やグリーンさんは普通でしたよね。あ…。確か、あの商会長。この娼館に入ったら頭が晴れたって。」
「聖女ベネディクトの神気がこの建物周辺には満ち満ちている。ベネディクトと一度接触した者は、よほど魔に魅入られたりしない限りは、大丈夫だろう。」
そうか、それならよかった。
でも、今日、二人は遅いな。
おかみさんが駆けてきた。
「隣国?」
「そうよ、ダーク国の国王様が、ベネちゃんをもらいたいって!」
「ダーク国と言えば、兄上が留学していた国じゃないか。大翔、兄上も呼んでくれる?3人で会おう。」
「わかった。」
「じゃあ、おかみさん。その方をこちらにお通ししてください。おかみさんも同席お願いします。」
「わかったわ。お連れするわね。」
しばらくすると、その人はやってきた。
「初めまして。グレイ=フォン=ダーク。ダーク国の国王だ。ベネディクト王子。君が幼い頃、互いの王家の間で君と我が国の王子との間の婚約の話が交わされたのだよ。ただ、我が国も内乱状態だったから、落ち着いたついでに君が成人するまではと保留になっていた。君は私の婚約者だ。ぜひ、私に身請けさせてほしい。」
黒い髪、黒い瞳。猫のような目の形。どことなく大翔に似ていて、もしかしたら俺はこの人を愛せるのかもしれないけど。
「申し訳ありませんが…。俺の国は今、こんな状況です。それに俺は今の王である叔父に目をつけられている。娼館は国にあって別世界です。王様でもここのルールに従わなければならない。ここの外なら、どこにいてもあいつは追ってくる。すべてが片付くまでは、ここから出たくはないのです。」
「グレイ、ベネディクトもこう言っている。うちの弟は頑固だから出直すとーーーー」
「しかし…それでは…! 君をほかの男にこれ以上触らせたくはない…!」
グレイ王に無視をされて、兄上は寂しそうだ。
手が空をにぎにぎしている。
「ご安心ください。俺は処女です。娼館にあっても、うまくやれば貞操は守れるのです。」
「お分かりになっていただけましたか?それではお帰りください。大体、平定したばかりで国王が一人で隣国の娼館に足を運ぶなど、どうかしていますよ。国民のためにもお戻りなさいませ。」
スッと、部屋の隅に控えていた大翔がグレイの前へ出た。
「………ん!!? おまえ、ブルーか???」
「…お会いしたこと、ありましたっけ…?」
「兄上の顔を忘れたのか!!? 亡命した後、俺は国を取り戻さないといけなかったから、幼いお前をこの国のマリーナ子爵に預けたのだ!!……ああ、こんなことなら王位を継いで落ち着いてからと思わずに、すぐにでも迎えに来るのだった!」
「えっ、ちょっと待ってください。ブルーはダーク国の王子だったのですか?」
「俺と同腹の弟で第四王子だ。妾腹の第二、第三王子は死んだから、実質第二だな。」
あああ。
でも、これで、ダーク国を味方につけられる。
俺は、グレイに事細かにブルーのことを報告した。
それはもう、烈火のように怒り狂ったとも!
そりゃあそうだろうよ。大事な友は軟禁されてレイプ、大事な大事な弟は娼館に売り飛ばされてたんだからな!
「あの子爵~~~~~~~~~~~~!!! 国王の豚めぇえええええええええっ!!!! ひき肉にして魔物の餌にしてやる……っ!!!!魔物に腸を引きずり出されて、死ぬまで犯されるといい…!!!!」
大翔は、幼い頃の記憶がなかったようで、突然出自を聞かされて、戸惑っているようだ。
「ベネディクト、グレイス。ダーク王国は君たちを支援するぞ。ダークのように、国を取り戻そうじゃないか。なにせ、本物の聖女がこの国に久しぶりに降臨したようだからな。魔の者が今、この国を覆っているようだが…、俺たちが力を合わせれば、必ず打ち払えるだろう。」
グレイが俺にウインクをする。
「俺の能力はこれだ。」
グレイが床に手のひらを向けると、ぐぐぐっと闇だまりが出来、グレイの姿に変わる。
「ダーク王国の闇属性魔法の一種だ。闇、というが夜の精霊の力であって、魔の力ではないからご安心いただきたい。こうして俺は、全く俺と同じ分身を5体まで生み出すことが出来る。思考の共有もしているから、本体がここへいても、向こうの治世には問題ないというわけだ。」
コピーの頭を撫でると、インクを吸い取るように消して、融合した。
「もう一つ。闇と魔は違うが、親和性がある。ゆえに、俺は魔の気配を察することが出来る。この国に入る前、魔…魔王の気配を感じた。女神と対の悪しき存在。その究極たる王がこの国に顕現している可能性が高い。既に国民は、魔に魅入られ、操られているぞ。王家を憎み、廃統に追い込んだのも、そのせいだと思っている。」
「なんだって。それじゃあ、証拠を集めても、冤罪をはらせないじゃないか。」
兄上が拳を握りしめた。
せっかく、ベネディクトたちが頑張ってくれているのに…。
「兄上、大丈夫ですよ。やることが増えただけです。」
「でも、騎士団長やグリーンさんは普通でしたよね。あ…。確か、あの商会長。この娼館に入ったら頭が晴れたって。」
「聖女ベネディクトの神気がこの建物周辺には満ち満ちている。ベネディクトと一度接触した者は、よほど魔に魅入られたりしない限りは、大丈夫だろう。」
そうか、それならよかった。
でも、今日、二人は遅いな。
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