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束の間の安寧と第三の男

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ローズ・ガーデンの朝は遅い。



夜のお仕事だからね、仕方ないよね。


一晩過ごした相手を夜明けに見送って、それから睡眠。

俺は、えっちなことしてないけど。



他のお店は体を売ってるんだろうけど、ウチのお店は俺を含めキレイどころばっかりなので、俺は『高嶺の花』の高級店路線を目指してる。


ユニット組んでさ、地下アイドルみたいに売ってもいいと思うんだよね。

体売らなくても、握手で満足できるんだろ?

ちょびっとだけエッチな格好でパンチラくらいしてやれば、大喜びなんじゃないのかな。

ブロマイドとかグッズ販売だけでしこたま稼げるんじゃないか、と思ってたりする。

薄利多売薄利多売。




おかみさんは、やっぱり元貴族の令嬢で、家が没落したときにオメガだったから売られたらしい。

でも、貴族の教育を受けていて、話術にも嗜みにも通じてたから売れっ子になって、娼妓からおかみになったんだそうだ。

兄をどう隠そうか、初めはどぎまぎしてたんだけど、アルファの匂いですぐばれた。



聞けば、娼館だから、オメガのヒートも完全に制御できる質のいい薬を使ってるし、換気もばっちりで、まちがっても匂いでほかの人の客に暴走したりしないようにしているので、オメガが多い娼館だけど、特に問題はないそうだ。



それで、今、兄は俺の隣の部屋でグリーンとよろしく過ごしています。


何でも、貴族の学校で同級生だったらしい。
アルファ同士だけど、いいんじゃない?




……それはそうと、確かに、言われてみたら、ここにきてそれ程発情していない。



本気で発情なんかしたら、商売にならないもんな。そんなものか、と思ったり。

城にいるときは、一人で籠って黙々と……。うん、たいへんだった。



おかみさんは、叔父のしたことをきいて、すっごい怒ってくれて。

両親の冤罪も信じてくれた。


おかみさんの家を没落させたのは、叔父の家らしくて…。



そりゃあ、俺のこと大事にしてくれたわけだよな、と思う。





「おかみさん、そういえば、ここの子たちってオメガ以外もいるんだよね?」


娼妓としての格をあげてもらうために、最近算術を教えているが、一人やたら成績のいい子がいるんだが…。



こいつ、アルファじゃね?




「殆どオメガなんだけど、一人いるわ。アルファの子が。」




王の周りを嗅ぎまわってた『情報屋』なんだけど、捕まって囚人として、ここに売られたのよ。


黒髪で、黒い瞳の猫っぽい感じの子。



はなぎはると っていうらしいの。

かわった音の名前よね?




おかみさんがにこっと笑う。


俺は、久しぶりに聞く日本人の名前に、今すぐにでも本人に会いたくなった。
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