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水揚げの相手は騎士団長でお願いします
しおりを挟む「ローズ・ガーデンに行った元王子が、水揚げ前のお披露目するってよ。相手探しらしいぜ。」
「まじで、うける!」
「厚化粧でも塗りたくってるんじゃないか。」
物見遊山で店の周りには、多くの人間が集まっている。
「なんかわくわくするわね!」
おかみさんは楽しそうだ。
イベント中にヒートになったら困るので、コントロールするための薬を飲んで、番防止のネックレスを首に嵌める。
薄化粧に、アイラインと紅だけ引いて、いざ出陣なり!
「…えっ。嘘だろ…!??」
「あれが?? 前王妃に瓜二つじゃないか!」
「みなさま。お集まりいただき、ありがとうございます。王子としての私は死にました。今日から、このローズ・ガーデンでお世話になります。」
ふわりと笑えば、誰もがぽーっとなる。
ふふふ、これが俺の本気よ!
「お前、本当にベネディクトか!?」
騎士団長のレイ・アミュレットが、人混みを掻き分け、前へ出てきた。
赤みがかった茶色の髪の、逞しい青年だ。
「そうですよ。娼館に連れてこられ、儚んだ私は自死を図りました。しかし、女神の夢を見て、蘇ったのです。女神の洗礼をあの世とこの世の境で受け、力に目覚めることができました。今までの姿は、(今の)王を欺くため、母に魔法をかけられていた姿だったのです。私は、生まれ変わりました。」
無詠唱で、魔力を行使する。
氷で龍を作り、炎の鳥で溶かし、風を纏い、宙に浮き、光を纏う。
「人がいっぱいいますから、かなりセーブしています。ショーとしては、いい感じでしょう?それに、魔法だけじゃないですよ。」
しなを作って、団長の胸にもたれかかる。
あごを触り、上目づかいで。
ぼそっと。呟いた。
「…あなたは、醜い姿をしていた私も、可愛がってくれました。水揚げされるのなら、あなたがいい…。おねがいです。」
「ベネディクト…王子…。」
「もう、王子じゃありません。ベネと、呼んでください。」
団長の肩を濡らし、そっと離れる。
堕ちた。
「おかみ、俺が水揚げしよう。ほかの者ではあまりにも忍びない。」
団長は、おかみさんに小切手を切った。
娼館の中の、奥。
綺麗に整えられたベッドルームだが、その手前には、上質の応接セットや、酒をつくるための器、チェス、楽器など、性交渉以外でも楽しめるものがたくさん置かれている。
「王子、驚きました。それが、魔法のかかっていない、本当のあなたなのですね。見た目だけではない、知的で、堂々としていて……。だからこそ惜しい。もっと、もっと早く王子が目覚めていてくださっていたら…!」
「だったら、どうなってたというの?」
俺は、一ノ瀬時代に政治家にそうやっていたように、彼のために酒をつくってやる。
「……王は、冤罪です。」
「知ってる。お父様もお母さまも、ここ数年はご病気だったもの。兄上は、隣国に留学されていたし。政治は宰相だった叔父様がされていたでしょう。でも、レイ様。それを分かっていたのに、あなたは叔父様についたのでしょう?」
貴方も同罪ですよね、と言わんばかりに含みをもたせれば、グッと言葉を詰まらせる。
「王の捺印。真実は別にあっても、全ての決定が王の責任でなされていたから、あなた一人ではどうともできなかったのですよね。」
レイがバッと顔をあげる。
「私……………。俺は心配です。民が。暫くは大人しいかもしれませんが、どうせ前王が使い込んでたからとか福祉とか言って、叔父様は国民を苦しめるでしょう。」
「王子、あなたは……。」
「ベネ、と。あなたには申し訳ありませんが、俺はここにいても誰にも抱かれるつもりはありませんよ。好きになったら別ですけど。」
俺はね、ここから国民を守ります。
影の国王といったところです。
「だから、レイ。あなたはここへ客を連れてきて下さい。国政に口を出せる実力者を。」
まずは、農業の改革。国務大臣補佐のグリーンを連れてきて欲しい。
「はっ。」
レイはすっかり俺に心酔した様子で片膝をつく。
「じゃ、レイ。お風呂にいこうか。」
「えっ。」
お金いっぱい払わせて何もしないんじゃ、流石に悪いからな。
キスとおさわり。
背中を洗ってやるくらいのサービスは許す!
「何だと!? ベネディクトのあの姿が魔法!!?」
城では、王が慌てている。
「ハイッ! それはもう母親に瓜二つの美貌で、美しい魔法を使い、内面も美しく……。」
物見遊山で見に行った兵が報告をあげる。
「何ということだ!! 今からでも迎えに行くぞ! わしの嫁に……」
「いえそれは、もう無理です。」
そばから、補佐官のグリーンが現れた。
緑色の長い髪、細身でスラッとした体躯。
ローブにモノクル姿が知的な麗しい青年が並び立つと、王の醜悪さが際立つ。
「何だと!?」
「まず、王子を売ったお金ですが、取り返すなら莫大なお金が必要です。あれだけの美貌なら、そうでしょう。お金があっても主と本人が承諾しなければ、身請けはできません。」
「何を。わしは王だぞ。」
「花街は独立しています。王の権力も及びません。それに、もう水揚げしています。妃にはできません。」
「くう!!」
王は地団駄を踏んだ。
「通えばいいじゃないですか? 会ってもらえるかはわかりませんが。」
「そうか、そうだな!」
げへへ、と笑う王を見て、あぁイヤダイヤダとグリーンは引いた思いで眺めた。
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