冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である

竜鳴躍

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番外編

カイザー家編⑤ 深まる愛、始まる愛 前編

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「そんな睨まないで、可愛い奥さんと会話したらいかがですか?かわいそうに抱いてくれないのは魅力がないからだと、手管を習いに来られたんですよ?」

応接室で紅茶を飲みながら、エアはすぐに話した。
何を誤解してるか知らないが、こんなに嫉妬して睨まれるのは困る。



「お兄さんっ!」
ハロルドは真っ赤になって、クリスをみた。

「ごめん、ハロルド!」

みるみる顔を青くして、頭を絨毯につけて妻に平謝りする様に、ハロルドは焦り、エアとメイガンの目は丸くなる。


「逆なんだ!ハロルドは魅力がたっぷりで………その、初夜で抱き潰してしまったから……。こんなんじゃだめだって。だから、大事にしたくて。エッチよりデートしようって。」

俺が悪いだけだからぁと泣き出した。

「じゃあ、僕の具合がよくなかったわけじゃ「むしろ最高でした!やめられなくてすみません!」」



「よかったですね。辺境伯夫人。ですが、辺境伯。抱き潰したから抱くのを自重するなど、逆効果ですよ。自慰をされているとか、私のような者を買っているならともかく。」

「自慰なんてはしたないこと出来るか。」
「僕以外とエッチしたら泣きます!」

「溜め込んで爆発したら大爆発になるでしょう。小出しにするのが良いんですよ。辺境伯は絶倫のようですし、夫人の負担が減るような助言をさせていただければ、挿入前に何度か抜くことです。自慰が嫌というなら、夫人が手や太腿でしてさしあげればいいですよ。それでだいぶ楽です。あと腰の下にクッションを入れて…………。」



「エア=プレーン元男爵子息。」


ふと、辺境伯の目が真剣になる。


「プレーン……?」

ハロルドも首を傾げてハッとなった。



「ハロルド、この人はハロルドの遠縁の人だよ。ハロルドと同じように被害者だったから、処罰されなかったんだ。」

「えっ。………もしかして処罰されなかったけど、それで街角に。」



「違うよ!平民になったけど、俺は元々愛妾の子で離れで軟禁されてたし、むしろ自由になれた上、生活できるお金は貰えているから、今の方が幸せなんだ。街角のあれは……好みの人がいたら誘いたいなあと。」

「じゃあなんで金を取るんだ!普通にナンパしてくれよ!」
メイガンが叫び出す。


「その方が割りきれるし、お金はいくらあってもこまらないじゃないか。根を下ろす場所を探していて、ちょっと新しい辺境伯領を見てみようと思ったんだ。ここで暮らすかはまだ決めてなかったしね。すぐサヨナラならドライな関係の方がいい。」




「あー分かった。エア。よかったら、うちで働かない?」

クリスはメイガンとエアを見て、提案する。

ハロルドがすぐに慕った、ハロルドの親族。
人物は悪くない。
メイガンの調査によれば、学園の成績はすこぶる良い。
礼儀作法もでき、容姿も良い。
なのに、家に囚われて社交デビューできず、就職も出来ず、親兄弟から娼婦のように扱われ、取引相手に体を売らされていた青年。

実際、学園で在籍が被っていた筈なのに記憶がないのだ。

言われてみれば、席次表で名前を見た気がするくらいで。

自由になっても心が空っぽなのかもしれない。

彼に惚れたらしいメイガンの愛情があれば、いつかはきっと。

「え?嘘でしょ。それに俺は働く必要は………。」

「エア!エアが来てくれたらうれしい!」
「お金はいくらあってもこまらないんだろ?使用人を束ねる者がいなくて困ってたんだよ。」



人に慕われて、頼りにされるなんて、初めてだ。

エアは嬉しそうに右手を出した。

「それじゃあ、よろしく。」
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