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うちに来ませんか
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今日もハロルドは兄の執務室からカイザーたちの練習を見守る。
その様子は落ち着いているようで、沈んでいるようにも見える。
「今日もサンドイッチを持っていこう。この間は作り置きのローストビーフだったからな。」
今日の業務は昨日までで粗方片付いているので、余裕がある。
執務室の片隅のキッチンで、ジニアルはエプロンを身に着けた。
「チキンのハニーマスタードを具材にしようと思うんだ。」
ハロルドにもエプロンを渡す。
「なんだか難しそうです…。」
「大丈夫だよ。レシピが分かれば。朝練に行く前に仕込んだんだ。モモ肉に塩コショウを振ったものね。これに小麦粉を篩う。まとわせたらフライパンで火を通す。焼けたらこのドレッシングをかけて絡めるように炒めて、冷ましておこう。その間にハロルドは卵をゆでてくれる?」
「分かりました。」
「ハロルドもフォートも、お嫁さんだからこれからたまにはお茶会や家の行事を仕切ったりもあるんだろうね。男だけど、夫人としての仕事はしていくことになるんだと思う。ハロルドはこれまで外交で頑張って来たんだから、きっと大丈夫さ。」
「………はい。」
「カイザーを信じてついていけば、何も怖いことはないよ。僕も引きこもりだからね、相当信じられる男じゃなきゃそばに置けない。」
2人で休憩が始まったフォートとカイザーに昼食を運ぶ。
ランチボックスはハロルドが、紅茶は僕が持って。
「うわぁあ、今日は鶏肉っすか。おいしそうです。いつもありがとうございます。」
「僕はまだ、料理を始めたばかりで何もできなくて……。」
「でも、挟んでくれたんでしょう?きれいですよ!」
「このゆで卵はハロルドがゆでて冷まして、殻をむいてカットしたんだ。」
「つるつるですごいですよ!崩れていないし。」
「あっ、ありがとうございます……。」
ハロルドは照れくさそうにもじもじしている。
「あ。俺、今度の休みとれたんですよ。うちに来ませんか。新しい邸はまだできていないし、田舎だけど、両親もハロルド殿下に会えるの、楽しみにしてるんで。」
「え……。あっ、……うぅ。」
「大丈夫です。誰が何と言おうと、俺はハロルドがいいんですからね!」
「分かりました。行きますっ!」
嫁として認めてもらえるのだろうか。
カイザーのご両親は、夜会で何度か顔を見たことはあるけど、あまり話をしたことはない。
自分は受け入れてもらえるのだろうか。
その様子は落ち着いているようで、沈んでいるようにも見える。
「今日もサンドイッチを持っていこう。この間は作り置きのローストビーフだったからな。」
今日の業務は昨日までで粗方片付いているので、余裕がある。
執務室の片隅のキッチンで、ジニアルはエプロンを身に着けた。
「チキンのハニーマスタードを具材にしようと思うんだ。」
ハロルドにもエプロンを渡す。
「なんだか難しそうです…。」
「大丈夫だよ。レシピが分かれば。朝練に行く前に仕込んだんだ。モモ肉に塩コショウを振ったものね。これに小麦粉を篩う。まとわせたらフライパンで火を通す。焼けたらこのドレッシングをかけて絡めるように炒めて、冷ましておこう。その間にハロルドは卵をゆでてくれる?」
「分かりました。」
「ハロルドもフォートも、お嫁さんだからこれからたまにはお茶会や家の行事を仕切ったりもあるんだろうね。男だけど、夫人としての仕事はしていくことになるんだと思う。ハロルドはこれまで外交で頑張って来たんだから、きっと大丈夫さ。」
「………はい。」
「カイザーを信じてついていけば、何も怖いことはないよ。僕も引きこもりだからね、相当信じられる男じゃなきゃそばに置けない。」
2人で休憩が始まったフォートとカイザーに昼食を運ぶ。
ランチボックスはハロルドが、紅茶は僕が持って。
「うわぁあ、今日は鶏肉っすか。おいしそうです。いつもありがとうございます。」
「僕はまだ、料理を始めたばかりで何もできなくて……。」
「でも、挟んでくれたんでしょう?きれいですよ!」
「このゆで卵はハロルドがゆでて冷まして、殻をむいてカットしたんだ。」
「つるつるですごいですよ!崩れていないし。」
「あっ、ありがとうございます……。」
ハロルドは照れくさそうにもじもじしている。
「あ。俺、今度の休みとれたんですよ。うちに来ませんか。新しい邸はまだできていないし、田舎だけど、両親もハロルド殿下に会えるの、楽しみにしてるんで。」
「え……。あっ、……うぅ。」
「大丈夫です。誰が何と言おうと、俺はハロルドがいいんですからね!」
「分かりました。行きますっ!」
嫁として認めてもらえるのだろうか。
カイザーのご両親は、夜会で何度か顔を見たことはあるけど、あまり話をしたことはない。
自分は受け入れてもらえるのだろうか。
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