上 下
66 / 96

うちに来ませんか

しおりを挟む
今日もハロルドは兄の執務室からカイザーたちの練習を見守る。

その様子は落ち着いているようで、沈んでいるようにも見える。



「今日もサンドイッチを持っていこう。この間は作り置きのローストビーフだったからな。」


今日の業務は昨日までで粗方片付いているので、余裕がある。

執務室の片隅のキッチンで、ジニアルはエプロンを身に着けた。



「チキンのハニーマスタードを具材にしようと思うんだ。」

ハロルドにもエプロンを渡す。


「なんだか難しそうです…。」


「大丈夫だよ。レシピが分かれば。朝練に行く前に仕込んだんだ。モモ肉に塩コショウを振ったものね。これに小麦粉を篩う。まとわせたらフライパンで火を通す。焼けたらこのドレッシングをかけて絡めるように炒めて、冷ましておこう。その間にハロルドは卵をゆでてくれる?」


「分かりました。」




「ハロルドもフォートも、お嫁さんだからこれからたまにはお茶会や家の行事を仕切ったりもあるんだろうね。男だけど、夫人としての仕事はしていくことになるんだと思う。ハロルドはこれまで外交で頑張って来たんだから、きっと大丈夫さ。」


「………はい。」


「カイザーを信じてついていけば、何も怖いことはないよ。僕も引きこもりだからね、相当信じられる男じゃなきゃそばに置けない。」




2人で休憩が始まったフォートとカイザーに昼食を運ぶ。

ランチボックスはハロルドが、紅茶は僕が持って。




「うわぁあ、今日は鶏肉っすか。おいしそうです。いつもありがとうございます。」

「僕はまだ、料理を始めたばかりで何もできなくて……。」


「でも、挟んでくれたんでしょう?きれいですよ!」


「このゆで卵はハロルドがゆでて冷まして、殻をむいてカットしたんだ。」

「つるつるですごいですよ!崩れていないし。」



「あっ、ありがとうございます……。」


ハロルドは照れくさそうにもじもじしている。


「あ。俺、今度の休みとれたんですよ。うちに来ませんか。新しい邸はまだできていないし、田舎だけど、両親もハロルド殿下に会えるの、楽しみにしてるんで。」


「え……。あっ、……うぅ。」

「大丈夫です。誰が何と言おうと、俺はハロルドがいいんですからね!」



「分かりました。行きますっ!」



嫁として認めてもらえるのだろうか。

カイザーのご両親は、夜会で何度か顔を見たことはあるけど、あまり話をしたことはない。

自分は受け入れてもらえるのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。 

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...