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女王陛下に会う
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ノースキャロット皇国につけば、出迎えは静かなもので、拍子抜けするほどすんなりと城へ案内された。
高い建築物が立ち並ぶ帝国とも違う、様々な文化が融合したかのような豪奢で優雅な街並み。
だが、外を出歩く者のざわめきや活力が感じられない。
帝国は、『ありのまま』だった。
城への道なりでも、人々の生活が感じられ、それは、陛下が民を大事にしていることの証。
おそらく、『見せていない』場所へ押し込められている者たちがいるんだろう。
こういう国は、奴隷さえいるのかもしれない。
「ここは城下町ですから、国一番の繁華街になるんでしょうね。」
ジニアルは内心皮肉を込めて聞いてみる。
「ええ。そうです。」
出迎えの侍従は、無表情で応えた。
まるで氷でできているかのように、冷たい印象のする城。
そこに降り立ち、騎士が両脇にずらっと並ぶ廊下を、赤いじゅうたんを踏みながら進む。
あの、春の温かさのような兄嫁が、ここの娘だなんて信じられない。
「よくぞ参られた。婚礼するらしいな。案内など文で寄越せばいいものを。」
壇上から見下ろすような女王は、素晴らしく美しい。
「いえ。陛下は我が国にとって最も重きをおかなければならない方のおひとりですから、文一本では失礼に当たります。」
帝国と、皇国。両方に重きを置いていることを示す。
「お忙しい御身なのは承知しておりますが、ぜひ参列していただきたいと思っております。」
「…………ここからグレイシャス王国は遠くての。」
「サザンクロスのスワン陛下からは、承諾をいただきました。2大国のトップが顔を合わせる良い機会になるのではないでしょうか。会議の席を設ける予定です。帝国は、陛下が留守でも国政や防衛に問題はないようですよ。大国ともなれば、体制は盤石なのだと勉強させていただきました。確かに、サザンクロス帝国よりも1日多く航路にかかるかもしれませんが…。ぜひ、陛下に自ら参列していただきたいのです。フローラ様も、久しぶりに陛下にお会いしたいことでしょう。」
「…………それは、わらわに『腰抜け』と言いたいのかえ?それとも、皇国が帝国より劣っているとでも?」
扇子の裏で女帝が凄む。
周りを囲んだ騎士たち。
緊張が走る。
「まさか。何としても素晴らしい陛下に参列していただきたいだけですよ。」
ジニアルは輝くような笑顔で返した。
高い建築物が立ち並ぶ帝国とも違う、様々な文化が融合したかのような豪奢で優雅な街並み。
だが、外を出歩く者のざわめきや活力が感じられない。
帝国は、『ありのまま』だった。
城への道なりでも、人々の生活が感じられ、それは、陛下が民を大事にしていることの証。
おそらく、『見せていない』場所へ押し込められている者たちがいるんだろう。
こういう国は、奴隷さえいるのかもしれない。
「ここは城下町ですから、国一番の繁華街になるんでしょうね。」
ジニアルは内心皮肉を込めて聞いてみる。
「ええ。そうです。」
出迎えの侍従は、無表情で応えた。
まるで氷でできているかのように、冷たい印象のする城。
そこに降り立ち、騎士が両脇にずらっと並ぶ廊下を、赤いじゅうたんを踏みながら進む。
あの、春の温かさのような兄嫁が、ここの娘だなんて信じられない。
「よくぞ参られた。婚礼するらしいな。案内など文で寄越せばいいものを。」
壇上から見下ろすような女王は、素晴らしく美しい。
「いえ。陛下は我が国にとって最も重きをおかなければならない方のおひとりですから、文一本では失礼に当たります。」
帝国と、皇国。両方に重きを置いていることを示す。
「お忙しい御身なのは承知しておりますが、ぜひ参列していただきたいと思っております。」
「…………ここからグレイシャス王国は遠くての。」
「サザンクロスのスワン陛下からは、承諾をいただきました。2大国のトップが顔を合わせる良い機会になるのではないでしょうか。会議の席を設ける予定です。帝国は、陛下が留守でも国政や防衛に問題はないようですよ。大国ともなれば、体制は盤石なのだと勉強させていただきました。確かに、サザンクロス帝国よりも1日多く航路にかかるかもしれませんが…。ぜひ、陛下に自ら参列していただきたいのです。フローラ様も、久しぶりに陛下にお会いしたいことでしょう。」
「…………それは、わらわに『腰抜け』と言いたいのかえ?それとも、皇国が帝国より劣っているとでも?」
扇子の裏で女帝が凄む。
周りを囲んだ騎士たち。
緊張が走る。
「まさか。何としても素晴らしい陛下に参列していただきたいだけですよ。」
ジニアルは輝くような笑顔で返した。
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