42 / 96
陛下を丸めこむ
しおりを挟む
「陛下。陛下はグレイシャス王国の資源がほしいのでしょう?」
ゆっくりと落ち着いた声で、ジニアルは囁いた。
「ズバリ言うな?」
「皆知ってることですよ。でも考えてみて下さい。そのために、僕が王太子である必要があります?」
「と言うと?」
「資源や食糧を優先的に輸出すればいいのでしょう。陛下に上げる文書を作ったり、予算配分をきめているのは、実質的には僕です。今の立場なればこそ、各所と調整したような顔をして、結論を誘導出来ます。トップは公平公正、私は一切出せません。むしろ国王になれば自由にはできませんよ?」
お茶を飲みながら、まっすぐ見つめる瞳が魅力的だ。
陛下は息をのんだ。
なるほど確かに、魅了の力は私より上だ。
「全てが欲しいかもしれんぞ。属国化を望んでいるかも。」
「そう望まれるなら、とっくに力ずくでやっていますよね。陛下は優しい方です。これ程の技術力があれば、一晩で他国を荒野にできましょう。」
「参ったな。そうだ。環境は破壊してからでは、元に戻すのは難しい。戦争は民も傷つけるが、環境も資源も傷つける。だが、私はノースキャロットを牽制しなければならぬ。あの、戦い好きの女狐め。あいつの娘婿がグレイシャス王国でいろいろと開発しているのだろう?その利権をあいつに渡すわけにはいかんのだよ。」
「………陛下。同盟を結びましょう。そのための話し合いの場を持ちませんか?僕らの結婚式に、親族として向こうの王族も来ます。」
「いやだ!国王自らそちらへ行くなど。大体、向こうも国王が来るのでなければ意味はない。祝電と使いで十分じゃないか。」
陛下は騎士団長をチラリとみて、ぷいっと横を向いた。
その様子をフォートは見ていて、王妃から言われたことを思い出していた。
「騎士団長といらっしゃったらいかがですか。ハニュ王妃がおっしゃっていましたよ?」
「ハニュが…!?」
表情を取り繕っても、一瞬動揺の色がよぎる。
「お二人はただならぬ関係とか…。陛下だけでお越しください。騎士団長は護衛として。お部屋は同室に致しましょう。傍仕えの者が待機できるタイプのお部屋をご準備させていただきますよ?」
実際にどんなふうに過ごされていようが、誰も分かりません。
そういうと、陛下はうーんと少し悩んだ後、OKをした。
「まずはサザンクロス帝国。婚礼の日に陛下をつり出せた。道筋も見えたな。」
しかし、お母様がフォートに何か言っていると思ったけれど、実兄の下半身事情だったとは…。
立場上、女性と結婚したけれど、騎士団長とそういう関係だったのね。
国内じゃ思い切ってデートやいちゃいちゃが出来ないから、そういう機会を配慮すれば…ってことか。
「しかし、あの陛下があの騎士団長とですか…。分からないものですねぇ。」
カイザーは遠い目をする。
どっちがどっちだとしても、想像したくない…。
ゆっくりと落ち着いた声で、ジニアルは囁いた。
「ズバリ言うな?」
「皆知ってることですよ。でも考えてみて下さい。そのために、僕が王太子である必要があります?」
「と言うと?」
「資源や食糧を優先的に輸出すればいいのでしょう。陛下に上げる文書を作ったり、予算配分をきめているのは、実質的には僕です。今の立場なればこそ、各所と調整したような顔をして、結論を誘導出来ます。トップは公平公正、私は一切出せません。むしろ国王になれば自由にはできませんよ?」
お茶を飲みながら、まっすぐ見つめる瞳が魅力的だ。
陛下は息をのんだ。
なるほど確かに、魅了の力は私より上だ。
「全てが欲しいかもしれんぞ。属国化を望んでいるかも。」
「そう望まれるなら、とっくに力ずくでやっていますよね。陛下は優しい方です。これ程の技術力があれば、一晩で他国を荒野にできましょう。」
「参ったな。そうだ。環境は破壊してからでは、元に戻すのは難しい。戦争は民も傷つけるが、環境も資源も傷つける。だが、私はノースキャロットを牽制しなければならぬ。あの、戦い好きの女狐め。あいつの娘婿がグレイシャス王国でいろいろと開発しているのだろう?その利権をあいつに渡すわけにはいかんのだよ。」
「………陛下。同盟を結びましょう。そのための話し合いの場を持ちませんか?僕らの結婚式に、親族として向こうの王族も来ます。」
「いやだ!国王自らそちらへ行くなど。大体、向こうも国王が来るのでなければ意味はない。祝電と使いで十分じゃないか。」
陛下は騎士団長をチラリとみて、ぷいっと横を向いた。
その様子をフォートは見ていて、王妃から言われたことを思い出していた。
「騎士団長といらっしゃったらいかがですか。ハニュ王妃がおっしゃっていましたよ?」
「ハニュが…!?」
表情を取り繕っても、一瞬動揺の色がよぎる。
「お二人はただならぬ関係とか…。陛下だけでお越しください。騎士団長は護衛として。お部屋は同室に致しましょう。傍仕えの者が待機できるタイプのお部屋をご準備させていただきますよ?」
実際にどんなふうに過ごされていようが、誰も分かりません。
そういうと、陛下はうーんと少し悩んだ後、OKをした。
「まずはサザンクロス帝国。婚礼の日に陛下をつり出せた。道筋も見えたな。」
しかし、お母様がフォートに何か言っていると思ったけれど、実兄の下半身事情だったとは…。
立場上、女性と結婚したけれど、騎士団長とそういう関係だったのね。
国内じゃ思い切ってデートやいちゃいちゃが出来ないから、そういう機会を配慮すれば…ってことか。
「しかし、あの陛下があの騎士団長とですか…。分からないものですねぇ。」
カイザーは遠い目をする。
どっちがどっちだとしても、想像したくない…。
12
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。

王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる