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ポート辺境伯は唇を噛み締める
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事故に見せかけて死まではいかずとも再起不能になればよい。
毒を仕込んで病に見せかけて………。
穏健派の宰相の娘が側妃に納まり、正妃とも仲良くやっているところに、派閥を公平に扱うべきだと進言させて、そういう空気をつくり、二番目の側妃としてサリーを送った。
凡庸な色合いの娘ではあったが、よく見れば美しかったし、陛下がどうしても手放さなかった宰相の娘を見るに、陛下の好みは華やかさよりも知性や貞淑さ、品の良さだろうと思われた。
父親から見てあまりパッとしない娘だったが、陛下の好みだろうと考えて宛がったら、男子を孕んで出産した。
あんな不出来な娘でも役に立った。
娘が産んだ第三王子のハロルドも優秀ではあったが、三番目であり、上の二人と比べれば見劣りしてしまう。
ゆえに、まだ学園にも通わぬ10そこそこの子を無理に外交の矢面に立たせた。
失敗すれば母親が折檻されると思ったハロルドは、国の利になる外交を多数取り付け、評判をあげていった。
帝国の王女が産んだジニアルは、精神的な脆弱さが露見し、引きこもりになって自滅した。
後はオーレムのみだと思っていたのに………。
ジニアルは大復活を遂げた。
しかも、伴侶になった騎士団長が常に目を配っていて、ますます隙がない。
そのうえ、陛下や他の有力貴族が集まる会議の場で…。
『ポート辺境伯。戦争は資金も人も失い、疲弊させ、国を貧しくする。勝っても負けても痛みはある。やらないならそれにこしたことはない。辺境伯が回りに目を配っていただいているので助かっていますよ。でも、私のことは気になさらず。辺境伯の優秀な人材を私の回りに寄越しては、申し訳ない。』
全員に、暗に伝えた。
あれは私に対する宣戦布告。
城に送った手の者は、逆に抱き込まれたり、排除されていった。
「くそっ、くそっ、くそっ!!!私が間違っているのか?この国は資源が豊富で、あっちこっちから狙われて。大国の保護等いらぬ。自ら守れるように。そもそもその大国が、我が国を狙っているのではないか!怖気図いて尻尾を振るなど!グレイシャス王国民の誇りはないのか!!」
薄々、分かっている。
甘いかもしれないが、ジニアルが言うことも一理ある。
貴族たちの心は自分から離れていき、穏健派に鞍替えする者たちが増えている。
だが。
「今更、退けるか!」
辺境伯は唇を噛み締めた。
ジニアルが帝国と皇国に旅立ったことを、彼は知らない。
毒を仕込んで病に見せかけて………。
穏健派の宰相の娘が側妃に納まり、正妃とも仲良くやっているところに、派閥を公平に扱うべきだと進言させて、そういう空気をつくり、二番目の側妃としてサリーを送った。
凡庸な色合いの娘ではあったが、よく見れば美しかったし、陛下がどうしても手放さなかった宰相の娘を見るに、陛下の好みは華やかさよりも知性や貞淑さ、品の良さだろうと思われた。
父親から見てあまりパッとしない娘だったが、陛下の好みだろうと考えて宛がったら、男子を孕んで出産した。
あんな不出来な娘でも役に立った。
娘が産んだ第三王子のハロルドも優秀ではあったが、三番目であり、上の二人と比べれば見劣りしてしまう。
ゆえに、まだ学園にも通わぬ10そこそこの子を無理に外交の矢面に立たせた。
失敗すれば母親が折檻されると思ったハロルドは、国の利になる外交を多数取り付け、評判をあげていった。
帝国の王女が産んだジニアルは、精神的な脆弱さが露見し、引きこもりになって自滅した。
後はオーレムのみだと思っていたのに………。
ジニアルは大復活を遂げた。
しかも、伴侶になった騎士団長が常に目を配っていて、ますます隙がない。
そのうえ、陛下や他の有力貴族が集まる会議の場で…。
『ポート辺境伯。戦争は資金も人も失い、疲弊させ、国を貧しくする。勝っても負けても痛みはある。やらないならそれにこしたことはない。辺境伯が回りに目を配っていただいているので助かっていますよ。でも、私のことは気になさらず。辺境伯の優秀な人材を私の回りに寄越しては、申し訳ない。』
全員に、暗に伝えた。
あれは私に対する宣戦布告。
城に送った手の者は、逆に抱き込まれたり、排除されていった。
「くそっ、くそっ、くそっ!!!私が間違っているのか?この国は資源が豊富で、あっちこっちから狙われて。大国の保護等いらぬ。自ら守れるように。そもそもその大国が、我が国を狙っているのではないか!怖気図いて尻尾を振るなど!グレイシャス王国民の誇りはないのか!!」
薄々、分かっている。
甘いかもしれないが、ジニアルが言うことも一理ある。
貴族たちの心は自分から離れていき、穏健派に鞍替えする者たちが増えている。
だが。
「今更、退けるか!」
辺境伯は唇を噛み締めた。
ジニアルが帝国と皇国に旅立ったことを、彼は知らない。
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