37 / 96
サリー妃とハロルド
しおりを挟む
騎士団長とクリスタル=カイザーを同行させ、第二王子ジニアル=カイン=グレイシャスがサザンクロス帝国とノースキャロット皇国へ旅行へ出かける日取りとなった。
まずは、サザンクロス帝国。
出立する息子に、ハニュは笑顔で見送り、耳元で囁いた。
「私はお兄様が大嫌い。全く帝国第一主義の偏った価値観の持ち主よ。多少強引でも魅了の力で周囲を屈服させられるから、帝国の王族は強引なのよ。貴方は異性にだけ極端な力を向けてしまっていたけれど、能力の格なら貴方が上。見せつけておやりなさい。」
「ははは。お母さまはやっぱり一番強いな。誰からも愛される、ふわふわとした美少女は計算でしょう?」
「いやあね。処世術と言ってくれる?私は争いなんて大嫌い。大体、王妃教育も終わった婚約者がいるところに私をねじ込んだ実家に怒ったし、ライトやマドンナに申し訳ないって思ったわ。私たちが割り込んだせいで、後継者争いが複雑になってしまったし…。だからね、あなたが王太子にならなくて、私はほっとしていたのよ。酷い母親かもしれないけれど。今更、覆させないように釘を刺して来て頂戴?」
女として妻として一番でなくても、みなに愛され、妃殿下たちや他勢力を絶妙なバランスで繋ぎとめたのは母だ。
尊敬する。
「フォートさん。頼みましたよ。」
「はい。」
フォートが美しい騎士の礼で応える。
「もし、あれがごねるようなら、こう言ってごらんなさい。」
フォートの耳元で、ハニュは秘密のワードを伝えたようだ。
兄で今や帝国の王に対し、アレ呼ばわり。
「それでは気を付けて。」
ジニアルたちを乗せた船は、港を経ち、西の方へ向かっていった。
他の兄弟や陛下妃殿下たちは、窓辺から見送る。
その中で、最もハロルドが神妙な面持ちで見つめていた。
ハロルドの後ろには、母のサリー。
2人は、オーレムやジニアルの命を狙う辺境伯について考えていた。
そして、自分たちがいるから辺境伯に厳しい処分を踏み出せないことを申し訳なく思っていた。
ジニアルたちが、他国との和平路線を成功させたならば。
辺境伯家が処分されても構わないと、そう思っていた。
まずは、サザンクロス帝国。
出立する息子に、ハニュは笑顔で見送り、耳元で囁いた。
「私はお兄様が大嫌い。全く帝国第一主義の偏った価値観の持ち主よ。多少強引でも魅了の力で周囲を屈服させられるから、帝国の王族は強引なのよ。貴方は異性にだけ極端な力を向けてしまっていたけれど、能力の格なら貴方が上。見せつけておやりなさい。」
「ははは。お母さまはやっぱり一番強いな。誰からも愛される、ふわふわとした美少女は計算でしょう?」
「いやあね。処世術と言ってくれる?私は争いなんて大嫌い。大体、王妃教育も終わった婚約者がいるところに私をねじ込んだ実家に怒ったし、ライトやマドンナに申し訳ないって思ったわ。私たちが割り込んだせいで、後継者争いが複雑になってしまったし…。だからね、あなたが王太子にならなくて、私はほっとしていたのよ。酷い母親かもしれないけれど。今更、覆させないように釘を刺して来て頂戴?」
女として妻として一番でなくても、みなに愛され、妃殿下たちや他勢力を絶妙なバランスで繋ぎとめたのは母だ。
尊敬する。
「フォートさん。頼みましたよ。」
「はい。」
フォートが美しい騎士の礼で応える。
「もし、あれがごねるようなら、こう言ってごらんなさい。」
フォートの耳元で、ハニュは秘密のワードを伝えたようだ。
兄で今や帝国の王に対し、アレ呼ばわり。
「それでは気を付けて。」
ジニアルたちを乗せた船は、港を経ち、西の方へ向かっていった。
他の兄弟や陛下妃殿下たちは、窓辺から見送る。
その中で、最もハロルドが神妙な面持ちで見つめていた。
ハロルドの後ろには、母のサリー。
2人は、オーレムやジニアルの命を狙う辺境伯について考えていた。
そして、自分たちがいるから辺境伯に厳しい処分を踏み出せないことを申し訳なく思っていた。
ジニアルたちが、他国との和平路線を成功させたならば。
辺境伯家が処分されても構わないと、そう思っていた。
12
お気に入りに追加
714
あなたにおすすめの小説
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる