冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である

竜鳴躍

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サリー妃とハロルド

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騎士団長とクリスタル=カイザーを同行させ、第二王子ジニアル=カイン=グレイシャスがサザンクロス帝国とノースキャロット皇国へ旅行へ出かける日取りとなった。


まずは、サザンクロス帝国。


出立する息子に、ハニュは笑顔で見送り、耳元で囁いた。



「私はお兄様が大嫌い。全く帝国第一主義の偏った価値観の持ち主よ。多少強引でも魅了の力で周囲を屈服させられるから、帝国の王族は強引なのよ。貴方は異性にだけ極端な力を向けてしまっていたけれど、能力の格なら貴方が上。見せつけておやりなさい。」




「ははは。お母さまはやっぱり一番強いな。誰からも愛される、ふわふわとした美少女は計算でしょう?」


「いやあね。処世術と言ってくれる?私は争いなんて大嫌い。大体、王妃教育も終わった婚約者がいるところに私をねじ込んだ実家に怒ったし、ライトやマドンナに申し訳ないって思ったわ。私たちが割り込んだせいで、後継者争いが複雑になってしまったし…。だからね、あなたが王太子にならなくて、私はほっとしていたのよ。酷い母親かもしれないけれど。今更、覆させないように釘を刺して来て頂戴?」


女として妻として一番でなくても、みなに愛され、妃殿下たちや他勢力を絶妙なバランスで繋ぎとめたのは母だ。
尊敬する。


「フォートさん。頼みましたよ。」


「はい。」

フォートが美しい騎士の礼で応える。



「もし、あれがごねるようなら、こう言ってごらんなさい。」

フォートの耳元で、ハニュは秘密のワードを伝えたようだ。

兄で今や帝国の王に対し、アレ呼ばわり。



「それでは気を付けて。」



ジニアルたちを乗せた船は、港を経ち、西の方へ向かっていった。







他の兄弟や陛下妃殿下たちは、窓辺から見送る。

その中で、最もハロルドが神妙な面持ちで見つめていた。


ハロルドの後ろには、母のサリー。

2人は、オーレムやジニアルの命を狙う辺境伯について考えていた。


そして、自分たちがいるから辺境伯に厳しい処分を踏み出せないことを申し訳なく思っていた。



ジニアルたちが、他国との和平路線を成功させたならば。


辺境伯家が処分されても構わないと、そう思っていた。

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