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貴方みたいな人と結婚したい

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初めは遠慮しがちに。

だがだんだんと慣れて、フォートはすっかり私の執務室の住人になった。



「もしかして、君、ソルジャー公爵邸に戻っていないんじゃないかい?」

ぴくりと肩を揺らすフォートは、夜になっても帰る気配はない。



「………だって。実家は落ち着かないんだ。趣味のことはさせてもらえないし、家でも頑張って男らしくいないといけなくて。釣書にも追いかけられるし。そりゃあ嫡男なんだからいつかは結婚して跡取りを産まないといけないのは分かっているが…。本当の自分を受け入れてくれる相手なんてそうそういないし。仕事で職場に寝泊まりしていると言えば、大体許してもらえている。」



しょんぼりしている冷徹茨のはずの騎士団長様の夜着はふわふわもこもこの着ぐるみパジャマだ。

可愛すぎる。

ピンとした猫耳がついたフード。

お尻の部分からは尻尾が靡いて。


「確かにここには風呂もあるしベッドもあるし用を足せる設備も整えてあるから、寝泊まりできるが。食事だけはどうにもならないんじゃないのか。」


自慢げに騎士団のレーションの缶詰を見せてきた。



そんなの食べてるんじゃありません!





「仕方ない。ちょっと待ってて。私も部屋着に着替えて今日はここに泊まるから。夕餉は私が用意する。」

もう!フォートたんはしょうがないにゃあ。

こうなったら執務室の片隅にでも簡単なキッチンを造ってもらおう。

今日は仕方ないから、あり合わせで作ってこよう。





侍従に夕餉は要らないから。と言えば、なぜかオーレムお兄様とハロルドがニヨニヨしながらおめでとうと言ってきた。
陛下や母上たちにも妙な応援をされ、私は湯あみをして身支度を整えると、厨房に足を踏み入れた。


この時間だ。あまり待たせるわけにはいかない。

キッチンからバケットとワイン、サラダとローストビーフ、チーズ、葡萄を分けてもらい、大きな籠を抱えて部屋に戻った。




フォートは目をキラキラさせて、凄い凄い、とはしゃいでいる。


「なんだか子どもの頃のピクニックを思い出すな。あの時は僕の趣味に付き合わせて悪かった。」

「いえ、私もハッキリ言わなかったのが悪いのです…。」



なんだろう。学生時代は苦手だったのに。

胸がキュンキュンする。

一緒にいるのが当たり前、のような感覚。



僕はもしかしたらフォートのことが好きなのかもしれない。




バケットにチーズを塗って、サラダとローストビーフを挟む。

更に盛り付けをして、はいどうぞ。とフォートに差し出した。



「うわぁ。すごい。殿下は家庭的なんですね。」


「確かに少しは作れるけど、今日は時間もないし厨房からもらってきたのを挟んだだけだよ。」


「サンドイッチ、可愛いです…。」




私、結婚するなら殿下みたいな方と結婚したいなぁ。




フォートのつぶやきが聞こえた。





幻聴じゃないよな!??


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